『日本のタクシー自動車史』佐々木 烈著発行:三樹書房定価:4104円(消費税込み)2017年12月24日刊行ISBN987-4-89522-685-1普段何気なく乗っているいるタクシー。日本での歴史は明治時代にまで遡り、およそ100年にもわたるという。本書では日本初のタクシー会社設立の経緯や、運転手の養成や実態、料金制度に至るまで、多面的にタクシー業界の歴史を分析している。明治44年、1911年に日本初のタクシー会社“タクシー自働車株式会社”が設立された。それ以前に貸切自動車(いわゆるハイヤー)業者はあったが、タクシー会社としての設立はこの時が初めてで、“自動料金計算機付き自動車で乗客輸送を行う事業(本書より)”であったという。そして使用されたのはフォード『T型』で、まずは50台ほどが導入された。当初は欧州車も検討されたというが、耐久性や価格面からアメリカ車が選ばれ、特に、T型は大量生産システムが軌道に乗り、販売価格の値下げに踏み切られ、3500円(欧州車は7から8000円ほど)で購入となった。このように、導入当初の状況から日本全国にタクシー会社がどのように広がっていったのか、また、運転手に対しての育成や教育、法整備等を含め多面的に分析、解説しているので、本書を読むことで日本のタクシー業界に関する歴史を把握することが出来る。巻末には新聞記事にみるタクシー業界の出来事として大正14年(1925年)から平成15年(2003年)までを収録し、その変遷が時系列で理解出来る。なお著者である佐々木烈氏はハイヤーの運転手の経験もあり、そのことがきっかけで日本の自動車史研究に携わるようになったことを踏まえると、適任者が書かれた本であるといえるだろう。