台湾のスタートアップ企業gogoro(ゴゴロ)社は住友商事と共同でgogoroのバッテリー交換式電動スクーターおよび「GoStation」と名付けた交換式電池用充電ステーションを使ったシェアリング事業を2017年度中に沖縄・石垣島でスタートさせる。gogoroのホレイス・ルークCEOは都内でレスポンスなどとのインタビューに応じ、石垣島でのシェアリングは日本進出の一歩に過ぎず、GoStationを多くの日本の完成車メーカーなどにオープンプラットフォームとして活用してもらうことで、電動車両の普及や関連ビジネスの展開に役立てて欲しいと語った。---:日本市場へはシェアリング事業で初進出を果たすことになるが、gogoroにとって日本市場の位置づけはルークCEO(以下:敬称略):石垣島をまず足がかりとしてスタートする。まさに石垣島は我々にとっての第一歩となるが、我々のビジネスモデルを実証する上で、日本は非常に重要な市場と思っている。住友商事と協力しながら、その可能性を実証していきたいと思っている。日本には革新的な自動車メーカーがたくさんある。もちろん二輪車メーカーも同じことがいえるが、石垣島での実証実験を糸口にして日本市場に参入することによって、まずは消費者のニーズを見出すことができる。それと同時に自動車メーカーに対しても新たな対話や興味、関心をスパークさせていくことができると思っている。車両本体に充電するのではなくバッテリー交換で電力を供給するという我々の取り組みは、新しい電動車両ビジネスのあり方や、その可能性を変えていくことができると思う。---:日本の二輪車市場はすでに成熟化しているが、そこにgogoroのシステムを導入することでパイが広がるとみているか。ルーク:住友商事とパートナーシップを組むことによって、日本に限らず日本を超えていきたいと思っている。というのも住友商事は様々な自動車メーカーとすでに良好な関係を築いており、それをベースにして日本のみならず他の地域においても様々なソリューションを提供していきたいというのが我々の構想。そういう意味で石垣島に導入するシェアリングモデルは、そのうちのひとつのメニューにすぎない。また国や地域だけではなく、車両という分野も超えて他の業種にまで展開していきたいと考えている。---:GoStationのオープンプラットフォーム化を進める上で、完成車メーカーの参画が不可欠になるのではルーク:名前は公表できないが、すでにいくつかのメーカーと交渉を始めている。我々のバッテリーだけを使っているメーカーもあるし、モーターやテレマティクスのメーカーとも協力している。テレマティクスとシステムの分野では、すでに複数のメーカーといろいろと話し合いを進めており、彼らが持つソリューションを事業化するための手伝いを我々が行っている。彼らの抱える課題を飛び越えるために、我々のプラットフォームを使ってもらうというものだ。我々の考え方というのはモバイルの世界からヒントを得ている。iPhoneに車輪をつけたようなもの。ガソリン車を電気自動車に造り換えるのではなく、スマートフォンに車輪を履かせるというのが、我々の考え方だ。---:完成車メーカーの中には、すでに自らサービスを立ち上げて事業化を進めようとしているところもあるが。ルーク:我々がスタートした時のビジョンはユーザビリティのプラットフォームを造るということ。いろんな人が簡単にエネルギーにアクセスできるようにしていこうという考えだ。しかし我々が始めた時は誰も信じてくれなかった。そこでまずバッテリー交換式の電動スクーターを我々で造った。テスラは自分たちのクルマを売るためにインフラを造っているが、我々はテスラとは真逆で、インフラを使ってもらうために車両を造った。---:そうするとgogoroは電動スクターの販売やシェアリングではなく、GoStationを完成車メーカーやシェアリングなどモビリティ関連サービス、さらには異業種にも売り込むことで成長を目指しているということか。ルーク:その通り。我々が目指しているのはスクーターメーカーでもバッテリーメーカーでもない。さらにいえばエネルギー会社でもない。あくまでもOSのプラットフォームを提供する会社であると自負している。---:交換式バッテリーと充電ステーションを核にしたビジネスモデルは比較的簡単に真似されてしまうように思えるが、その懸念はないかルーク:単にバッテリーをステーションで交換するという行為自体は簡単にコピーすることができるだろう。しかし我々のシステムの背後にはAIや機械学習、ビッグデータなどがあり、それらをすべて包括してつなぐことによってネットワーク化していることが我々の強みと思っている。AIを駆使して事業を展開するのは、それほど簡単にはコピーできないと思っている。バッテリーがどこで、どれくらいの距離を走行して交換されたのか、いつ、何曜日に換えられたのかといったデータをすべてクラウドに上がって、自動調整できるようになっている。そのために我々は様々な技術を開発してきた。多くの日本の老舗のメーカーに是非とも我々のプラットフォームを活用して、車両の電動化に向けたテコ入れとして使って頂くことで、最先端の次世代電動車両へと飛躍してもらう土台になりたいというのが我々の望みだ。