◆現行の「JC08」モードから11年ぶりの改定乗用車の燃費表示が2018年度から国際基準に基づく測定による数値となる。07年に導入された現行の「JC08」モードから11年ぶりの改定になる。政府は新方式による測定で国際調和を図るとともに、カタログ値と実走行値のかい離が大きい現状の燃費表示の改善を図る。国土交通省と経済産業省は合同の審議会で、今年度中に新表示方法を決める方針だ。新しい測定方式は、国連の関係作業部会が14年3月に策定した「WLTP」(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)と呼ぶ国際ルールによるモードで、日本政府もその成立に尽力した。現状では日米欧など、国や地域で異なっている燃費測定方式の世界での統一化が狙いで、日本では乗用車(ごく一部除く)と小型貨物車に適用される。◆ハイブリッド車の測定値は、悪化する傾向JC08と大きく異なるのは、測定方式が最高速度に応じて4つのフェーズに分かれていることだ。具体的には(1)60km/hまでの低速走行(市街地を想定)、(2)80km/hまでの中速走行(郊外などを想定)、(3)100km/hまでの高速走行(高速道路などを想定)、(4)130km/hの超高速走行(同)---と定めている。このうち(4)の超高速走行の導入は、国によって任意の選択ができるようになっており、日本は走行実態を踏まえて除外することとしている。つまり、市街地想定など3つの速度フェーズで燃費を測定、それぞれの燃費や3つのフェーズを総合評価した燃費性能が示される。JC08とWLTP(3フェーズ合計)の測定方法の概要は次のようになる。測定はいずれも室内の試験装置であるシャシーダイナモ上で行う。モード 走行距離 平均速度 最高速度 測定時間JC08 8.17km 24.41km/h 81.6km/h 20分WLTP 15.01km 36.57km/h 97.4km/h 約25分JC08に比べ、平均の走行速度や最高速度は高く、一般的に燃費は良くなる方向に作用する。但し、日本で人気のハイブリッド車(HV)は、モーターのみで走る領域(低速域)が減るため、傾向としては燃費は悪化しやすい。さらに、試験車両にかける荷重はWLTPがより重く、またすべてエンジンが冷えた「冷機」状態からの試験(JC08は全体の25%が冷機試験)とするなど燃費には厳しい要素が少なくないので、総合的にはより実走行に近い燃費データが得られる。◆カタログ燃費のための“小細工”は無意味に…WLTPによる燃費表示は、18年10月以降に発売される新型車から採用の方向となっているが、それ以前のモデルについても、自動車メーカーが測定したWLTP燃費をJC08燃費とともに、参考として併記することも認められる。このため、17年中にはカタログに2つの方式による燃費を併記するケースも出てくる見込みだ。すでに自動車メーカーでは「新モデルについてはWLTPモード主体の開発に切り換えている」(中堅メーカーのエンジニア)という。具体的なWLTP燃費の表示方法は、政府が近く定める。3つの異なる速度での燃費と総合燃費という4つの数値があるので、ユーザーが混乱しないよう表示ルールを決める方針だ。もっとも、ユーザーにとっては「市街地走行が主体」、あるいは「高速道路をよく使う」など、自分のドライブシーンに応じた燃費が示される方が購入の際の参考になるので、すべての速度フェーズでの燃費を提示すべきだろう。いずれにせよ、実用燃費はそっちのけで、JC08モードでの燃費を良くするためにエンジンや変速機の制御などを行うといった小細工は無意味になっていくだろう。WLTPモードは、真っ当な燃費性能競争もサポートすることになる。