【川崎大輔の流通大陸】タイの車両板金塗装業界に新しい概念を…カーコンの展望 | CAR CARE PLUS

【川崎大輔の流通大陸】タイの車両板金塗装業界に新しい概念を…カーコンの展望

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カーコンタイの店舗
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2016年3月にカーコンタイ1号店がグランドオープンした。総責任者である吉田広宣氏にタイにおける整備板金市場の現状及び今後の展望について話を聞いた。


◆カーコンタイの概要

日本で自動車軽板金補修を中心に、自動車向けのアフアーサービスを提供するカーコンビニ倶楽部株式会社がタイの大手商社企業、商社のロクスレー(LOXLEY)と合弁会社を設立。2016年3月18日にタイ進出1号店として「カーコンタイ」をバンコク・ラマ3世通りにオープンした。

4000平米の敷地面積内に、ピット6区画、ブース3区画、洗車2ピット、乾燥仕上げ3ピット、コーティング1ブース、調色室1ブースを持つ旗艦店だ。カーコンタイでは日本で3年間の日本語や板金技術の研修を終えたタイ人の外国人技能実習生5名を採用し合計14名のスタッフがいる。日本と変わらない品質レベルの板金、塗装、コーティング等の自動車整備板金のサービスを提供することができる。

タイの自動車市場が成熟していくにつれ、自動車アフターサービス市場の拡大も見込まれている。迅速でお待たせしない、どこよりも価値が高い、すべてにおいて高品質、という企業理念に基づいたサービスの提供を行っていくという。


◆タイの整備板金市場の現状と課題

車両板金塗装(BP)を行う会社は大小合わせタイ全体で約6500社登録されている。バンコクで見れば約1560社だ。ディーラーに併設されているBPもあるが、ほとんどが道端にある小さなパパママBPか登録だけの稼働していないBPといわれている。

カーコンタイがあるラマ3世通り沿いにも、パパママBPが多い。一方で、実際に保険会社に認められているBPはといえば全体の10%ほどであるという。これまでタイのBPは安かろう悪かろうで顧客が集まってきたが所得の増加とともに市場も変化してきている。ただ安いだけのBPは減り続けていると聞く。

現在のBPの業界側から見た課題としては、3Kの業界であるため若い人手がいない、また技術も未熟であり30年以上前の日本のBPスタイルあら抜け出せていないという。

また、BPを利用する顧客としては、見積書がなくサービス金額が不明確であり、サービスに時間がかかるというような声をよく聞く。そういった意味で、現在求められているレベルのBPはまだ少ないといえる。


◆新規参入カーコンタイの差別化

「タイの車両板金塗装を行う業界内においてクイックという概念はなかった。技術的なものは時間をかけた方が良いという概念を崩し、クイックBPの概念をタイに浸透させたい」と吉田氏はいう。

一般の新車ディーラーでも3日ほどかかるが、カーコンは日本から持ち込んだ独自の板金工法を使い1日で可能だ。パパママBPとなると大体1週間は当たり前で、BP会社から出来上がり電話を待つのが普通という業界だ。カーコンビニ倶楽部はクイックBPで早い日にちで自ら出来上がり日を確約してしまう、という他社との差別化でタイに進出した。

このクイックBPにより、さらなる商品提案を行える。現在、カーコンタイでは洗車サービスに4名のスタッフを配置している。1回の仕事ではなく車全体を見るカウンセリング商談を行い、洗車から整備板金サービスにつなげ、「今日中に直る」という提案による受注を増やしていく。

その提案の際に肝になるのが適正な金額提示である。目に見える形での明朗会計も、タイにおいては大きな差別化となっている。


◆カーコンタイの今後の展望とタイ市場の魅力

2020年までには、FC展開を含めて100店舗体制の構築を目指している。吉田氏は「将来的には整備も行い、整備、修理、板金、塗装、クリーニングなどができる本当のコンビニをやりたい」と語る。

そのためには、タイのフランチャイズ(FC)の1号店を近々にオープンさせ、エポックメーキングな店をタイに増やしていく考えだ。

タイの市場には「まだまだ伸び代がある」と吉田氏は指摘する。徐々にバンコクでは所得が増え、小型車などを購入できる層が増えてきた。しかし少し地方へ行けばまだ所得は低く、昔の日本人が持つ自動車への憧れが残っている。

タイを含むアセアンの国々はまだ日本から習うことがたくさんあると思う。一方で、日本がタイに見習った方が良いと個人的には感じる。特に、スピードと活気だ。昔の日本から失われてしまったパワーがタイにはある。テレビ、クーラー、自動車などすべてを手に入れてしまった日本とは対照的に、もっともっと良い生活をしたいという人々の強い思いが成長の原動力になっていることは間違いない。

カーコンタイで働くタイ人が私に「タイでたくさんの車を直していきたい」と語ってくれた。タイは昔の日本がたどったスピードより速いスピードで自動車産業の成長を遂げていく。そこがタイ市場の大きな魅力となっていくのだろう。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔》

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