BMWとトヨタは燃料電池システムなどの次世代環境車の開発で提携を結んでいる。多くの開発投資を必要とする次世代技術の開発は、自動車メーカーが単独で進めるのは難しく、ほかにもGMとホンダ、ダイムラーとルノー・日産など、いろいろな提携が結ばれている。BMWは以前、水素を直接エンジン内で燃やす方式の研究開発を進めていた。『7シリーズ』の水素エンジン車に、当時は筑波にあった日本自動車研究所のテストコースで試乗したことを覚えているが、ガソリン車と変わらない走りを実現するパフォーマンスに優れたクルマだった。マツダの水素ロータリーと双へきを成す研究開発だったといえる。ただ、エンジン内で水素を燃やすのは、水素を使って発電する燃料電池車に比べるとエネルギー効率が低く、航続距離を伸ばすことが難しいことなどから、BMWも今では完全に燃料電池車に絞って開発を進めている。マツダも同様に水素ロータリーの研究は中止したようで、水素の“直(じか)炊き”方式は自動車用としては無理があることが証明された形である。BMWとトヨタによる燃料電池の研究開発では、トヨタの方がかなり進んでいるようで、今回公開されたBMWのプロトタイプ車にはトヨタ製の燃料電池スタックが搭載されていた。トヨタにしても、あるいは同様に燃料電池車の販売を始めたホンダにしても、燃料電池スタックの生産技術の確立については相当に苦労しているようだが、BMWはこの点では更に後れをとっているため、当面はトヨタ製の燃料電池スタックに頼った開発になるようだ。それぞれにクルマ作りを進める中で、成功事例となる良いアイデアが生まれるとか、あるいは逆に課題となる点などが出てきたなら、その情報を積極的に交換し、燃料電池技術を進化させていこうとするのが提携関係の基本にある。BMWとトヨタが提携関係の中で進めるのは、直接的な燃料電池車関係の技術開発だけにとどまらない。水素エネルギーシステムの開発や水素インフラの確立を図り、燃料電池技術において業界のスタンダード構築しようとするのも大きなポイントである。BMWもトヨタも自動車メーカーなのでエネルギー業界に参入しようとは考えていないが、エネルギー業界や政府、国際機関などとも連携し、水素インフラに関する世界標準を構築することは目指している。それを確立できたなら、今後の燃料電池車の推進においてますます有利になる。日欧の有力なプレーヤーが手を結んだ意味はそこにある。