物流の新たな手段となるか。旅客専用線の地下鉄に貨物専用列車を走らせ、都心の輸送効率化と環境を考える実証実験が9日から、東京メトロ有楽町線と相互乗り入れする東武鉄道東上線で始まった。「交通渋滞緩和、CO2削減、ドライバー不足の解消など社会的課題について、公共交通として具体的な解決策を提供できないかと考えた」(東京メトロ)この日の実証実験は、新木場車両基地(江東区新木場4)で、旅客専用車両(10000系)に宅配の荷物積み込み作業が実施された。物流事業者として参加するヤマト運輸がトラックで運び入れた物資を、フォークリフトで列車内に積み込み、同日11時55分に東京メトロ初の貨物試走車が出発。試走車は有楽町線新木場駅から和光市駅を経由して和光車両基地(埼玉県和光市本町)を往復した。今後は、東武の森林公園検修区(埼玉県比企郡滑川町)まで運び、トラックで物流拠点へ運ぶ実験や、新木場車両基地から有楽町線新富駅、銀座一丁目駅、有楽町駅の駅間を輸送し、駅構内から地上へ台車を使って荷物を搬送する実験を予定している。都心部の新たな物流を模索する実験に東武鉄道が参加しているのは「物流拠点が検修区近くにあるため」(東武鉄道)だ。物流事業者側からは、ほかにも佐川急便、日本郵便も参画する。「トラック輸送だけに頼るのは、宅配の品質を維持できなくなる可能性がある。将来の労働力不足対策を今から考える」(佐川急便)、「ゆうパックと郵便、どちらも運ぶことができれば効率的。いかにして組み込めるか、データをとって将来につなげていく」(日本郵便)と、物流事業各社も新たな輸送手段の開拓に意欲的だ。ただ、旅客輸送のために考えられた駅施設を物流で使うことの利便性や安全性の点や、平日朝には時間当たり最大片道22本、昼間で12本というダイヤに、新たに貨物輸送を加えることが可能なのか、検証しなければならない課題は多い。「今回の実験は小規模なものなので、将来継続的に事業として続けていくことになれば、時と人手をかけず自動化して積み下ろしするなどの工夫は必要」(東京メトロ)と話し、まずは、鉄道と物流が共同で可能性を探っていくことになる。