デビューから10年ぶりに大改良を行った『エスティマ』。そもそも国産の実用車で10年にわたり作り続けられていること自体が驚異的だが、そのロングセラーの理由はもちろん、初代から続くエクステリアのエッグシェルデザインに象徴される、先進感に満ちたどんなミニバンにも似ていないデザイン力にほかならない。10年たっても古臭さなど皆無。まさに美魔女的ミニバンなのである。今回のビッグチェンジと呼べる改良の目玉は内外装デザインの変更だけにとどまらない。ここで注目したいのは走りの進化。走りの質を、デビューが新しいライバル車の『オデッセイ』などに追従させるため、ヤマハ製パフォーマンスダンパーをフロントに装備、設定。その効果はフロント回りのねじり剛性アップ、それがもたらすステアリングを切った時のリニアな応答性&ボディ振動の減衰向上などに現れる。また、サスペンションやパワーステアリングにまで改良が施され、乗り心地やステアリングの操舵フィールまで改善されているのだから、まさしくビッグチェンジである。ところで今回の改良でV6モデルは消滅。2.4リットルガソリンと、2.4リットルのハイブリッドのみのラインアップとなり、ボディは人気のエアロ系「アエラス」に統一。自動ブレーキを含む先進安全装備「トヨタ・セーフティセンスC」をエスティマとして初装備しているのもニュースである。新しいエスティマハイブリッドを走らせてまず感動したのが、以前のモデルで気になっていた、段差などを乗り越えたときに足回りのブルブル感が残る振動減衰性能が格段によくなっていたこと。つまり段差を乗り越えても、新バルブを採用し摩擦抵抗を低減したダンパー、サスペンションがビシッと一発でしなやかにいなし、路面を問わずより快適でドシリとした質の高い骨太な乗り心地を味わせてくれるようになったのだ。また、中高速域でのステアリングの応答性、リニア感、スムーズさも高まり、電気 式4WDシステム=E-FOUR採用によるオールロードの安定感の高さもあって、“曲がり”も実に気持ち良くなり、以前のモデルにあった主に山道や高速レーンチェンジで感じられた腰高感も見事に解消されているではないか。2.4リットルエンジンは決して新しくはなく、加速感は終始穏やかなものだが、 2リットルクラスとは一線を画すゆとりある大らかなエンジンフィールと、高回転まで回した時のノイズの遮断が好ましく、なおかつ常に低めの回転数を維持しようとするため、EV走行時でなくても車内は実に静か。ちなみにライバルのオデッセイハイブリッドと比較し、ハイブリッド感覚がより強いのはエスティマハイブリッドのほう。前後に強力なモーターを備え、なおかつブレーキング時にヒューヒューと 鳴くハイブリッド音!? も目立つからだ。エスティマハイブリッドの魅力は、今回のビッグチェンジで改善された走りの良さだけではない。ハイブリッドモデルならではの100V/1500Wコンセントはアウトドア、災害時に威力を発揮するし、7人乗りの2列目キャプテンシートを中寄せしロングスライドさせたスーパーリラックスモードではひざ回り空間に1列目席がはるか遠くに位置する80cm前後ものゆとりが出現 。その際のフラットフロアの面積は奥行き約98cm、幅約136cmに達し、大型犬2頭がくつろげるほど広々としているのだからすごい。内外装の見事な刷新もあって、より新しいライバルと直接乗り比べてもまったく見劣りしないのが、このエスティマハイブリッド。もちろん、ドッグフレンドリー度も高く、愛犬を乗せるにも適している(乗降はスライドドアからのみだが)。デビューから10年たった今こそ買い。そんなクルマ、ミニバン、これまでにあっただろうか!!■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★★ペットフレンドリー度:★★★★青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
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