旭化成は12月3日、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、ミドリムシ由来の新しい接着剤が開発したと発表した。この新接着剤は、自動車構造材用として高い接着強度を実現し、同時に加熱による容易な解体が可能という特徴を持つ。
産総研バイオメディカル研究部門の芝上基成キャリアリサーチャーらの研究チームは、ミドリムシの細胞から抽出される多糖(パラミロン)をベースとする組成物を開発。この「ミドリムシ接着剤」は、自動車構造材用接着剤として求められる接着強度を上回る力でアルミニウム板を接着することができる。
この接着剤の性能は、石油由来の代表的な自動車構造材用接着剤であるエポキシ系接着剤に匹敵する。さらに、これまでに報告されているバイオベース接着剤の接着強度も上回るという。
従来の自動車構造材用接着剤は高い接着力を持つ反面、解体が困難だった。そのため、使用済み自動車の解体や部品の再利用に課題があった。一方、ミドリムシ接着剤で接着したアルミニウム板は加熱により容易に解体でき、解体後も再加熱により同程度の接着力で再接着が可能だ。
この特性は、使用済み自動車のリサイクルを促進し、自動車産業における環境問題の解決に大きく貢献すると期待されている。EUでは2000年に使用済み自動車の解体と部品の再利用・再生利用を目的としたELV指令が発出されており、高い接着強度と易解体性を併せ持つ接着剤の開発が求められていた。
ミドリムシ接着剤は、この両方の特性を兼ね備えていることから、自動車産業における環境負荷低減に大きな役割を果たす可能性がある。
なお、この技術の詳細は、2024年12月5-6日にポルト市(ポルトガル)で開催される「1st International Conference on Bio-joining」で発表される予定だ。