今年は東日本大震災から13年、年頭には能登半島地震が発生した。3月には千葉県でも地震が頻発。改めて日本は災害、地震大国であることを痛感する。
そんな地震を始めとした災害に遭遇した時、愛犬と暮らしている人、家族はより深刻だ。避難所の多くは同行避難ができても、同伴避難(同じ居室に避難が可能)ができない避難所がほとんどだからだ。実際、わが家の指定避難所(小学校)は、先日行われた避難訓練の際、「ペットは校庭の一角のテントの収容施設にケージまたは専用ケースに入れて避難させる」とのこと。聞けば、千葉県柏市はほとんどの避難施設が「ペット同伴避難」が可能だというが、わが家ではそうはならない。今、愛犬2頭と暮らすわが家の家族会議では、避難所への避難は最後の手段として諦め、避難は自身でなんとかする…という結論に至っている。
そんな状況に置かれた愛犬家、愛犬家家族、愛犬にとって、家に住めない状況下でのひとつの解決策が、クルマの車内避難だと考える。実際、過去、新潟地震、熊本地震、直近では能登半島地震において、愛犬と離れることができず、やむを得ず車内避難を余儀なくされている人たちもいる。
そこで、東日本大震災から13年、正月に地震が能登を襲った2024年の3月のわんダフルカーライフは、モータージャーナリスト&ドッグライフプロデューサーの立場から「災害時に愛犬との車内避難所になりうるドッグフレンドリーカーとは2024年版」をお届けしたいと思う。
◆どんなクルマでも、快適に車内避難ができるわけではない
車内はラジオ、TVを視聴できる環境があり、災害時にも欠かせないスマートフォンの充電ができ、エアコンが備わり、車種によってはシートのフラットアレンジによって、車内のお座敷化、大人2人+αのベッドルーム化が可能だ。もちろん、誰に気を使うことなく愛犬と過ごすことができる“マイ避難所”としても使えて、ある程度のプライバシーが守れる(全周カーテンは不可欠)プライベート空間になりうるのである。
ただし、どんなクルマでも、快適に車内避難ができるというわけではない。基本は天井が高く、広々とした車内空間を備え、シートアレンジによって車内をお座敷化、ベッドルーム化できるクルマである。つまり、小さいクルマからでは、ホンダ『N-BOX』やスズキ『スペーシア』のようなスーパーハイト系軽自動車、スズキ『ソリオ』、トヨタ『ルーミー』に代表されるハイト系のプチバン、ステーションワゴン、そしてもっとも適しているのが日産『セレナ』、ホンダ『ステップワゴン』、トヨタ『ノア/ヴォクシー』などのボックス型ミニバンだ。
過去の地震などの災害時、車内避難を余儀なくされた人の中で、いわゆるエコノミークラス症候群(血栓症)を発症したというデータもあるが、それはシートに座ったままの姿勢で長時間過ごし、仮眠を続けたことが原因の一つと言われている。もし、シートのフラットアレンジで車内をベッドルーム化できれば、快適に過ごせ、横になれるだけでなく、エコノミークラス症候群(血栓症)を回避できるとも考えられる。
◆AC100V/1500Wコンセント付きの電動車なら最強
さらに言えば、停電時に有効なのが、車載バッテリーから電気を車内外に供給できるAC100V/1500Wコンセント付きの電動車なら最強である。
※ここでは飽くまでも自宅などの駐車場でクルマが無事であることが前提で、クルマで走って避難することは想定していない
AC100V/1500Wコンセント付きのクルマでなにができるかを改めて説明すると、例えば1500Wまでの家電品、簡易電子レンジ、湯沸かしポット、ホットプレート、照明、電気毛布などが使えることになり、ノートPC、寒い時期であれば、充電式湯たんぽなどを充電することが可能になる。
◆どんなクルマが愛犬との車内避難に相応しい?
では、具体的にどんなクルマが、愛犬との車内避難に相応しいかと言えば、ベストなのはミニバンのハイブリッド車、それもAC100V/1500Wコンセント付きのクルマということになる。ただ、どんなボックス型ミニバンでもいいわけではなく、2-3列目席フラットアレンジが可能で、なおかつそれなりのベッド幅が“隙間なく”得られる2列目席を持つミニバンということになる。つまり、2列目席がキャプテンシートで中寄スライドができないと、有効なベッドになりにくいということになり、2列目席がベンチシート、またはキャプテンシートでも中寄せアレンジができ、ベンチシート化できるミニバンが理想的だ。
それらの要件を満たす1台が、日産セレナ。全車8人乗りで、2列目席はキャプテン、ベンチシートのアレンジが自在。さらに最新のセレナのe-POWERモデルはセレナとして初めてAC100V/1500Wコンセントを用意し、なおかつ2-3列目席フラットアレンジ時のフラット度はベスト(その際、シート下が収納スペースになる)。マットレスなどを敷かずとも快適に横になれる(ベッド長2150mm/実際に体験済み)ぐらいである。テールゲートのリヤウィンドウ部分だけが開けられるデュアルバックドアは、雨をしのぎつつ換気ができ便利このうえなしだ。
トヨタのノア/ヴォクシーも、ハイブリッド車にAC100V/1500Wコンセントを用意。もっとも、先代でできた2列目キャプテンシートの中寄せスライド(ベンチシート化)はできなくなったから、ハイブリッドの2列目ベンチシートの8人乗りを選択するか、キャプテンシートの中央の隙間部分を埋めるアレンジを自身で考えることになる。
なお、同クラスのホンダ ステップワゴンはAC100V/1500Wコンセントの用意こそないものの、ノア/ヴォクシーとは逆に、現行型は2列目キャプテンシートが中寄せアレンジできるようになり、純正アクセサリーに車内全周を覆うプライバシーシェードやHonda Dogシリーズのペット用アクセサリーが用意されているのが強み。
国産ミニバンの王者、ハイブリッドモデル、AC100V/1500Wコンセントの用意もあるトヨタ『アルファード』はどうかと言えば、現時点では2列目席キャプテンシートのみの設定。キャプテンシート(リクライニング角度はグレード、シートによって70~89度)で寝れないことはないが、フルフラットアレンジのようにはいかない。今後、2列目席に大型犬も乗せやすくなるベンチシート仕様が登場すれば幅広いベッドスペースのアレンジが可能になるだろう。
◆ミニバン以外の選択肢、流行のSUVはどうか
流行のSUVでは、AC100V/1500Wコンセントが用意されている前提で、トヨタ『RAV4』のHVとPHEV、三菱『アウトランダー』(PHEVのみ)、日産『エクストレイル e-POWER』などがお薦めだ。フラットアレンジでの快適性、車内をお座敷化したときの天井高はミニバンに及ばないが、それでも大人が真っすぐ横になることができ、車内外で家電品を使うことが可能だ。
車両価格が比較的廉価でサイズ的に扱いやすく、しかし大人がまっすぐに寝られれば文句なし…というなら、ホンダ『フリード+』、トヨタ『シエンタ』の2列シート(ハイブリッドならAC100V/1500Wコンセントが4万4000円のOPで用意されている)といった、アウトドアにも適し、車中泊用のアクセサリーも充実した5ナンバーサイズのコンパクトミニバン、あるいはスズキ『スペーシア ベース』などの車中泊にも適したスーパーハイト系軽自動車を選ぶ手もある。たとえAC100V/1500Wコンセントがない車種でも、車内でラジオ、TVの視聴ができ、スマートフォンの充電が可能で、もちろん、シートのフラットアレンジによって大人が真っすぐに寝ることができる。
◆愛犬とのマイ避難所を成立させるための準備を
そうした、災害時に愛犬とのマイ避難所になりうるミニバン、SUV、コンパクトミニバンを紹介したあとで言うのもなんだが、筆者の愛車はこのところずっとステーションワゴンである。AC100V/1500Wコンセントを持たず、後席を倒したフラットアレンジ時のベッド長は1670mmでしかないものの、後席ヘッドレストを逆に付けることで枕代わりの延長スペースになり、身長172cmの筆者が真っすぐ横になれる大人2人分のベッドスペースが出現。
常時、厚さ1cmほどの銀マットをラゲッジスペース~倒した後席部分に敷き詰めてあり(後席使用時には後席背後に立てるようにあてがっている)、床下にはマイ避難所用の備蓄品を納めている(毛布、エアー枕、LEDランタン、マグネット式全周カーテン、マグネット式防虫カーテン、洗面用具、防寒用マント、着替え、緊急トイレセット、ミネラルウォーター、愛犬用避難グッズなど)。
上記の愛犬との車内避難に適したクルマはいずれも全高、室内高に余裕があり、それゆえに全高制限のある駐車場に停められない。自宅の駐車事情でステーションワゴンなどに乗っているケースでも、今一度、後席シートアレンジで車内での足を伸ばした就寝が可能かどうかを確認し(段差があれば解決する手立てを含む)、災害時に備えた愛犬とのマイ避難所を成立させるための準備をしてみてほしい。