フライホイールの軽量化で鋭い吹け上がりを手に入れると何が良いのか。クルマは速くなるのか。フライホイールチューンの効果と特徴を解説。
エンジンの回転力をなめらかにするために付けられているフライホイール。クランクシャフトの先に取り付けられたフライホイールはエンジンとともに回転することで慣性を発生させ、ある程度の重さがあることでエンジンはスムーズに回っている。
しかし、重すぎるフライホイールはエンジン回転ももっさりするし、なんと言ってもシフトチェンジがダルくなる。発進しようとアクセルを踏んだときにもなかなかエンジン回転が上がらずに、発進しにくいということにもなる。
フライホイールはエンジンと共に回っているので、クラッチを切ったときにもフライホイールが重いほど回転は落ちにくい。フライホイールが軽いとエンジン回転は素早く落ちる。
シフトアップしたときにはエンジン回転数は下がることになるが、フライホイールが重いとサーキット走行などで素早くシフトアップしたいときに、なかなかエンジン回転が落ちてくれないことになる。そうなると結局エンジン回転数と回転が合わない。素早いシフトアップができなくなってしまうのだ。
速く走るにはシフトダウンは減速中なのでゆっくりでいいが、シフトアップは少しでも素早く行って加速したい。そのときにフライホイールの重さがシフト操作の邪魔になってしまうのだ。そこで軽量フライホイールに変えるというカスタムがあるのだ。
◆フライホイール交換で素早いシフトチェンジ
フライホイール自体をクロモリなどで製作して軽量化。慣性を少なくすることでシフトチェンジ時にクラッチを切ったときに素早くエンジン回転を落ちるようにしている。それによってシフトアップして次のギアに合わせたエンジン回転に素早く合ってくれるという狙いだ。
なので、空ぶかしが軽くなってカッコいいとか、シフトダウン時にヒールトーしたとき、すぐに回転が上がってエンジン回転数を合わせやすいなどのメリットもあるが、それらのメリットはどちらかというとサブで、メインはシフトアップ時のメリットなのだ。
発進時にもアクセルにエンジンがビンビン反応してくれるようになるが、その反面慣性が弱まったことでエンストしやすくなることもある。やりすぎは街乗りで乗りにくくなる。
一般的にいくつかのフライホイールがあって街乗りで使うなら「超軽量」よりも「軽量」くらいほうが弊害が少ない傾向にある。
特に小排気量なエンジンの場合、フライホイールの慣性もトルク感として感じていることがある。そのためフライホイールを軽量にしたら登り坂での加速が鈍ったということもあるので、よく使用用途などを考えてパーツを選ぶようにしてもらいたい。
◆クラッチの重さも素早いシフト操作に貢献
ちなみに同じようにクラッチの重さも関係してくる。こちらもフライホイールと同じように慣性が生まれ、クラッチを切っている間はミッション側に接続されるのでそちらの慣性に関わる。
メタル製のクラッチが手裏剣のような形になっているのも少しでも慣性を減らすために不要な部分をカットした結果。そこまでして慣性を減らしたほうが素早いシフト操作を可能にできるのでこだわった設計をしているのだ。
摩材にカーボンが使われるのも同じ理由。カーボンは熱に強くサーキットでの連続走行などにも強い特性があるが、軽さも大きなメリットでプレートの外周付近を軽くできるのでこちらも素早いシフト操作に貢献してくれるのだ。
レーシングカーでは素早いシフトアップがダイレクトにタイムに効いてくるからこそこだわっている。しかし、ストリートカーの場合、そこまで素早いシフト操作が要求されない。となるといかに扱いやすく、気持ちよく操作できるかでフライホイールやクラッチを選ぶ方が良い。
そうするとやはり軽量にしすぎるとむしろ素早いシフトアップしかスムーズに走れなくなってしまうので、ある程度の重さはあったほうが普段乗りでゆったりと走るときにはマッチしてくる。そのあたりのマッチングも含めてパーツ選びが重要となる。