クルマを塗り替えるオールペイントは大掛かりな作業になるが、見た目が一新できる大掛かりなチューン。さらにエアロパーツを装着すればまったくデザインから変えることができるが、相応の手間とコストは掛かるのだ。
クルマのビジュアルを一変させるカスタムの最大の手段がオールペイントだ。クルマごと色を塗り替えることでガラッとイメージを変えることができる。しかし、ただボディを塗るだけのようだがコストが掛かるのも特徴。一般的にはリーズナブルなオールペイントで30万円くらいから。手の込んだオールペイントとなると100万円オーバーも珍しくないのだ。
◆値段の違いで完成後のクオリティが変わる
ではなにがそこまで違うのだろうか。まず、リーズナブルな塗装の場合、ボディ表面のみを塗装していく。ドアの内側やトランクの内側などは塗らない。なので、ドアを開けると元の色が見えてしまう。
とはいえ、もとの色と同じ塗り直しのオールペイントではまったく問題ないし、ブラックから紺色に塗り直すような近い色のオールペイントの場合もそれほど気にならないこともある。
逆に白いクルマを黒く塗るなら、ドア内側なども色を塗らないと結構残念な仕上がりになってしまうこともある。
ある程度予算があればフロントガラスなどを外して塗る。その方がモールの隙間から元の色が見えることもないので、完成後のクオリティが高くなる。
◆オールペイント時にオススメなのがボディ補強
そんなオールペイント時にオススメなのがボディ補強だ。とくにスポット増しだ。ボディはそもそもプレスした鉄板を重ね合わせて、内側と外側から金属棒で抑えてそこに雷のように高圧電流を流すことで金属を溶かしてくっつけてある。これがスポット溶接と呼ばれるもの。
ドア周りのゴムモールを剥いていくと鉄板に4~5cm間隔でスポット溶接がしてあるのがわかる。このスポット溶接の間隔の間に、さらにスポット溶接を追加していくのが「スポット増し」と呼ばれるチューニングだ。鉄板同士の結びつきを強化することでボディ剛性を高めることができる。
それでいてパイプを追加したりするわけではないので、重量増にならない点も見逃せないポイントだ。
このスポット増しは電気を流すために一旦その部分の塗装は剥がさなければならず、塗装後は錆びないようにサビ止め処理をした上で再度塗装をしなければならない。ならば、オールペイント時に一緒にやってしまえば手間と工賃が節約できるのだ。
◆どうせやるならエアロパーツ装着も
どうせやるなら的な視点でいけばエアロパーツ装着も同じ。エアロパーツのとくにフルバンパーなどを装着する場合、結構な手間が掛かる。
まず、仮付けをしてサイズを調整。ここで切ったり貼ったりしなければ装着できないエアロパーツも少なくない。取り付け穴の修正や、ときにはエアロ自体の大きさや造形を修正しつつ、全体にパテを入れて「面出し」をして、綺麗な表面に整える。
それから一旦外して塗装して装着となるが、エアロパーツとボディ側の色を合わせるのも大変な作業となる。
それがオールペイント時のエアロ装着であれば、全部塗ってしまうので色を合わせやすい。そもそもボディ色は自動車メーカーで指定された調合で再現できるが、クルマごとに微妙に色が異なる。
さらに走っているうちに塗装は焼けていっているので、元の色とは変わってしまっている。それを塗装職人が1台ずつ色を調合して同じ色味になるように調整している。
とんでもない手間と技術と経験が必要な作業なのだ。それでも色が合わないことはある。だが、オールペイント時はエアロパーツもボディも同じ塗料で塗ることができるので確実に同じ色に合わせることができるのだ。そういう意味でも一緒に施工するメリットは大きいのだ。
ちなみに全塗装時はある程度下処理をして塗装するが、旧車のレストアでない限り鉄板むき出しの状態までの剥離はしない。ある程度ベースの塗装が残っている状態で下地のサフェーサーを塗り、その上に色を乗せていくので若干塗装が厚くなる。一説にはオールペイントによって約10kgくらい車重が増えるという意見もある。
なのでレーシングカーなど究極の軽さを追求する場合には、塗装ではなくフルラッピングで見た目のイメージを変えることもある。
一般ユーザーにもラッピングによるイメチェンも増えている。剥がせば元の色に戻せるメリットも大きい。しかし、コスト的には実はオールペイントと大差ない場合も多い。とくに細かいところまでラッピングを施工して、ラッピング自体にキャラクターや柄などをプリントしていると相応のコストがかかり、100万円近くなることもあるのだ。