ブレーキが意のままに使えると信号で止まるときも、前走車に速度を合わせるときも実に気持ち良いもの。クルマのフィーリングが合わないのなら合わせてしまえばいい。コストを抑えつつフィーリングを変える方法とは!?
人馬一体をマツダの『ロードスター』は謳ってるが、クルマと人間がひとつになれたほうが当然運転はしやすい。ステアリングを切ればスッと素直に向きが変わるのは気持ち良いもの。そこで実は重要なファクターを占めるのがブレーキだ。
◆理想のブレーキングフィールとは
信号で止まる時に踏み始めはあまり効かず、奥で急に効くと「カックンブレーキ」と呼ばれるフィーリングになる。逆に踏んだ瞬間からガツンと効けば、それはそれで腫れ物に触るようなシビアなブレーキになってしまう。
止まるときもショックなくスムーズに止まりたいのに、最後にキュッと止まってしまいやすいブレーキシステムもある。
乗り続けていることでいつの間にかドライバーをそのブレーキに合わせているが、それは気を遣って合わせているだけで本来の扱いやすいブレーキには程遠い。
そこでチューニングの出番。チューニングとはそういった調律という意味で、パワーアップするだけがチューニングではないのだ。
◆ブレーキに求められるチューン
扱いやすいブレーキとはペダルストローク量とはイコールにはならない。むしろペダルストロークは短い方が操作しやすく、その短いストロークの中で硬質なかっちりとしたタッチで踏み込むほどに効きが強くなるのが理想的。
実際レーシングカーのブレーキはどのクルマでも同じように剛性感ある硬質なタッチで、ストローク量は短いければ意のままに止めることができる。
ではどうすればそういったブレーキになるのか。もっとも効果的なのはキャリパー交換。高剛性なブレーキキャリパーにすることで硬質なタッチになり、思ったとおりに止めやすい。しかし、アルミモノブロックキャリパーを前後に装着したら軽く100万円。2ピースキャリパーでも60万~70万円という金額になってしまう。
◆もっとお手軽なブレーキチューニングとは
そこでオススメがブレーキフルード交換。ブレーキオイルとも呼ばれるもので、ブレーキはペダルを踏むとこの液体をマスターシリンダーが押し、油圧が伝わってキャリパー内のピストンを押す仕組み。オイルやフルードだが、潤滑作用ではなく油圧を伝えるのが目的の液体だ。
ブレーキフルードは高温にさらされる。キャリパー内では数百度になってしまう。そこで沸騰すると気泡が発生。空気は圧縮しやすいのでブレーキを踏んだ油圧を空気が潰れて吸収してしまいブレーキが効かなくなってしまう。それが「ベーパーロック」という現象だ。そこまで行かなくてもサーキット走行中にペダルタッチが曖昧になってきたときには気泡が発生していることが多い。
その気泡を排出するために行うのが「エア抜き」。フルードをある程度交換して、キャリパー内の劣化したフルードと気泡を出してやろうという狙いだ。
◆サーキット走行用のブレーキフルードはどんなもの?
そんなフルードをスポーツフルードにすると大きな変化がある。まず沸点が上がり沸騰しにくくなる。サーキット走行でも気泡が発生しにくくなるのでペダルタッチが変わりにくくなる。
そして、ペダルタッチが良くなるように開発されているので、ペダルがカチッとする。ペダルストロークが短くなり、踏み込むとしっかりしたタッチで効きが高まるようになるのだ。キャリパー交換ほどの効果はないものの、フルード交換だけでもある程度の改善は見込める。
さらにその種類もある。これまでスポーツフルードといえばひとつだったが、最新のABSや姿勢制御システムの作動に合わせて、その作動レスポンスが良くなるように配慮されたフルードが各社から発売されている。
このフルードはペダルタッチこそこれまでのスポーツフルードにやや劣るものの、最新の電子制御が付いたクルマでは、電子制御介入時のクルマのコントロールがしやすくなるように開発されている。クラス6適合などと呼ばれているモデルがそれにあたる。
◆フルード交換の次のステップは?
さらにチューニングするのであればブレーキホースのメッシュホース化がオススメ。純正ではゴムホースだが、その周囲を金属メッシュで覆うことで膨張を防ぐ。ブレーキを踏み込んだ時にホースの膨張を防ぐのでペダルタッチが硬質になる。
フルード交換に近い効果がある。どうせホースを変えるならフルードも入れ替えることになるので、そのときにスポーツフルードをチョイスすればベスト。
そのふたつだけの効果でも相当なペダルタッチの改善になる。わずか数万円の予算でブレーキを圧倒的に扱いやすくすることも可能なのだ。