エンジンルームとインテークに効率的に走行風を導くための「GT クーリングプレート」(スイフトスポーツZC33S用)をタナベ(TANABE)が新開発。その冷却効果をリアルに検証するため、埼玉県の本庄サーキットで実戦テストを行った!
今回のテスト車両に合わせ、ホイールはSSR「GTX01」をマッチング。スイフトスポーツのサーキット走行に向け、純正よりも幅広の17inch 8.0J INSET45(5H-114.3)を装着。ダークシルバーが赤いボディに映えるレーシーなスタイルに仕上がっている。
吸気温度=パワーに直結?エンジンルームを冷やせば良いことしかない!
サスペンションやボディチューニングの老舗であるタナベ。ホイールブランドのSSRも展開するスポーツパーツメーカーである。そのタナベが新たな提案として開発したのが「GTクーリングプレート」だ。車種専用で開発されており、スイフトスポーツ用ではバンパー内に複数のプレートを取り付ける仕組みとなっている。
その効果は主に2つ。1つはインタークーラーに効率よく走行風を当てることで吸気温度を下げる (すなわち吸気温度の上昇を防ぐ) こと。現代のクルマは吸気温度に対してかなりシビアとなっていて、吸気温度が上がると空気が膨張してエンジンに吸い込まれる酸素量が減り、結果としてガソリンの噴射量が調整されエンジンパワーが制限されてしまう。
2つ目の効果はエンジンルームに効率的に風を導くこと。最近のターボエンジンでは特にエンジンルーム内は高温になっている。そこに風を導くことで温度を下げれば吸気温度上昇も防げるし、エンジン冷却水の温度やエンジンオイルの温度も抑えられる。長期的に見ればホース類などの劣化を予防したり、バッテリーの劣化防止効果も期待できるのだ。
クーリングプレートの秘密は、純正の導風経路の段差をスムーズにするための構造
今回新しくラインナップされたスズキ『スイフトスポーツ』の場合、純正で前置きインタークーラーレイアウトになっている。そのため基本的には、走行風がダイレクトにインタークーラーに当たるのだが、純正シュラウドには凹凸が多く、それが空気の流れを乱す要因となっていた。そこにクーリングプレートを装着することで走行風がスムーズに流れるようになるのだ。
また、上部のエンブレムがある部分のグリルから入った風はエアコンのコンデンサーを通過し、その奥のラジエーターへと向かうが、この流れも純正シュラウドの凹凸が同様に阻害してしまうため、クーリングプレートを装着して解消。
走行風の流速をできるだけ落とすことなく、エアコンコンデンサーに導けば走行風が抜けやすくなり、風が抜けた先のラジエーターにも流速の速い風が当たりやすくなるので、ラジエーターの効率アップが可能となる。さらに先述のインタークーラーも同様で、速い走行風が当たることで吸気温度低下の効果も期待できるのだ。
各プレートの取り付けにはキット付属の低頭ネジを使用するのだが、少しでも空気抵抗を抑えようとするメーカーの狙いが感じられるポイントでもある。
加えて、バンパー裏にある開口部からエンジンルームに走行風が入る構造になっているが、そこには角度調整機能付きの「ダクトプレート」を追加し、エアクリーナーへの風量を増加させるとともに、風量を任意にコントロールすることで効率の最大化を狙えるよう設計されている。各プレートを装着した状態での公道走行を中心としたタナベの社内テストでは、エンジンルーム内の風速が10%以上高まっていることが確認できており、エンジンルーム内の温度も60km/hの定速走行で4.8℃~5.0℃下がることが確認された。
そこでもしサーキットならば、どれほどの効果を発揮するのかを検証するべく今回テストを行った。車両はスイフトスポーツ。エンジン本体はノーマルだがタービン、キャタライザー、マフラーを交換したライトチューン仕様で、ECUは現車合わせにより196psを発揮、純正比1.4倍のパワーを絞り出している。テストコースとなる本庄サーキットのレイアウトは、短いストレートが連続しミニサーキットながらエンジンの熱的には厳しいコース。ここからはいよいよ実測テストの結果をお届けする!
約−9℃の冷却効果!公道テスト以上の性能をサーキットで確認
今回のテストでは15分の走行枠で水温と油温が上昇しきって安定するまで、毎回全開で走行。水温、油温、吸気温度を純正センサーの数値でモニタリングし、エンジンルーム内の温度をヘッド付近に装着した温度計で計測した。ドライバーは筆者である加茂。4月下旬のテスト日はどんよりと曇った天気のウェットコンディション、気温は終日安定していた。
コースの混み具合や路面状況など、完全なイコールコンディションは難しく、水温と油温が安定するまでの時間にも差はあったが、どちらも水温と油温がそれ以上上がらないところまで連続周回を行い検証。下の①・②で示すとおり、エンジンルーム内は装着前と比べて約9℃の温度低下が確認され、メーカー公表値以上の結果となった。
テスト結果
①:クーリングプレート装着前【外気温13℃、水温96℃、油温117℃時】
エンジンルーム内55.3℃
②:クーリングプレート装着後【外気温13℃、水温95℃、油温116℃時】
エンジンルーム内46.4℃(-8.9℃低下)
高効率でコスパも抜群、エンジンルームの冷却に高い効果を発揮
テスト結果からいえるのは、確実にエンジンルームの温度が下がっているという点。これはインタークーラー、ラジエーターのどちらからも勢いよく走行風が入ってきて、さらにダクトによってエンジンルームに効率よく風が入ってきているということ。また、エンジンルーム内を抜けた風がフロアトンネル方向に排出され、そのときにエンジン全体の熱を効率よく奪っていることが結果に表れている。
一方、吸気温度については加速時(過給時)と減速時で数値が目まぐるしく変わってしまうため、今回のテストでは完全同一条件での比較はできなかったが、これだけ熱を奪っていればインタークーラーの効率アップによる吸気温度の低下も期待でき、パワーアップにも冷却対策にも効果を発揮するといえるだろう。
ちなみにエンジンルームの温度を下げる方法として、ダクト付きボンネットの装着も効果的ではあるのだが、ボンネットを交換した場合、エンジンルームに雨水が入り込むのを防ぐのはかなり難しい。カバー付きでも結局エンジンルーム内に水分が進入し、メンテナンスにはシビアにならざるを得ない。そういったデメリットなくエンジンルームを冷やせる「クーリングプレート」の意味は非常に大きい存在だ。
またフェンダー内部に装着する「フェンダープレート」は、フェンダー部のビス留め部分が丸見えの純正状態をドレスアップしてくれるアクセントアイテム。クーリングプレートとデザイン的な融合性を持たせていているので、トータルでの統一感をもたせたセットアップが可能になっている。
価格はクーリングプレート【プレート+ダクト】が4万2900円(税込)、フェンダープレートが1万4300円(税込)、お得なフルセット【プレート+ダクト+フェンダープレート】は5万5000円(税込)のバリュープライス。また、現在はトヨタ『GRヤリス』用のクーリングプレートもラインナップされており、今後のラインナップ増加についても検討中とのこと。
公道からサーキットまで安定した性能を発揮するタナベ「GT クーリングプレート」。スイフトスポーツのユーザーには、装着マストなチューニングパーツとしてぜひオススメしたいアイテムだ!
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