ホンダは2月2日、水素事業に関する説明会を開催。2020年半ばに年間2000基レベルで燃料電池システムの社外への販売を開始し、2030年に年間6万基、30年代後半には年間数十万基レベルの販売を目指すと発表した。
「ホンダは今後、コア技術である燃料電池システムの搭載・適用先を、自社のFCEVだけでなく、社内外のさまざまなアプリケーションに拡大していくことで、水素を“使う”領域で、社会のカーボンニュートラルかを促進し、水素需要の喚起に貢献していく」と青山真二取締役執行役専務は会見の挨拶で強調した。
◆30年以上にわたる研究・開発の実績
ホンダは次世代の技術として水素の可能性に着目し、30年以上にわたり水素技術やFCEVの研究・開発に取り組んできた。1990年代後半から他社に先駆けて乗用車への適用に取り組み、2002年には世界初となる日米同時発売を実現。2008年にはセダンタイプの『FCXクラリティ』を発売。そして、16年には燃料電池のさらなる小型化を実現し、世界で初めて5人乗りを実現した『クラリティ・フューエルセル』を発売した。
また、13年からはゼネラルモーターズ(GM)と次世代燃料電池システムの共同開発に取り組んでいる。24年には、GMとの共同開発による次世代燃料電池システムを搭載した、『CR-V』をベースにしたFCEVの販売を予定している。なんでもこのFCEVの燃料電池システムはクラリティ・フューエルセル(2019年モデル)に搭載したものに比べて、コストを3分の1にし、耐久性を2倍に向上させ、さらに耐低温性も大幅に向上させるものだという。
青山取締役執行役専務によると、GMとの共同開発に加えて、燃料電池の本格普及が見込まれる2030年頃に向けて、さらにコストの半減と2倍の耐久性を目標値として設定し、従来のディーゼルエンジンと同等の使い勝手やトータルコストの実現を目指して研究開発を進めているそうだ。
◆燃料電池でBtoBの事業開発
燃料電池システムは、エネルギーを高密度で貯蔵・運搬することができ、短時間で充填可能という水素の特長から、バッテリーでは対応が困難とされるトラックなどの大型モビリティや大型インフラの電源として高い有用性が見込まれている。そこで、ホンダは自社のFCEVだけでなく、商用車、データベースなどの定置電源、建設機械を加えた4つを主な適用領域として設定し、BtoBの事業開発を進めていく。
商用車に関しては、いすゞ自動車と共同で、燃料電池大型トラックのモニター車を使った行動での実証実験を2023年度中に開始する。また、中国でも、東風汽車と次世代燃料システムを搭載した商用トラックの走行実証実験を23年1月から湖北省で開始している。
「燃料電池システムの普及拡大には、水素供給を含めた水素エコシステムの形成が重要だ。今後は、新たな領域として、定置電源を中心に水素の需要があるところを起点とした水素エコシステムの形成や、政府や地方自治体が主催する港湾などでの大量輸入水素を活用したプロジェクトなどにも積極的に参画し、関連する企業各社とのパートナーシップの構築を図っていく」と事業開発統括部の一瀬新部長は今後の展開について説明する。
これまでホンダは自社のFCEVを中心に水素事業を展開していたが、なかなかFCEVが普及せずに水素事業は停滞気味だった。しかし、大幅にコストを抑えた次世代燃料電池システムの開発に目処をつけたことで、戦略を転換し、その外販で水素事業を大きく加速させようというわけだ。