ブレーキはパッドとローターが摩擦している。パッド交換だけでなく、ローター交換も重要なチューニング。ローターを変えるとブレーキタッチも効きも耐熱性もアップでき、それでいてリーズナブルなチューニングなのだ。
◆交換するならローターの材質にも注目したい!
ブレーキはパッドが回転しているローターを挟み込むことで摩擦させ、熱を発生させて止めている。パッドと同じようにとても重要な要素。
同じように見えるがパッドと同じようにローターにもさまざまな素材と配合がある。欧州車が高速域からジワッとしたタッチで踏み込むほどに効くのはパッドはもちろん、ローターの材質にも秘密があるという。その分、欧州車ではローターもよく減るので「車検でパッドとローター交換で出費がかさんでしまった」なんて話があるのも、ローターの材質による部分もあるのだ。
対して国産車はローター交換をするとメンテナンス費用がかさむことから敬遠されがち。そこでそういった市場からの要望があり、自動車メーカー側では減りにくいローターを採用しているという。減りにくいのは良いことだが、その分硬い材質なのでブレーキの効きとしては落ちたり、ペダルタッチもイマイチな方向になりがちなのだ。
ならばアフターパーツのローターに交換する手がある。アフターパーツメーカーでは各社オリジナル材質でローターを製作している。多いのは若干柔らかめの材質にすることでブレーキのタッチを改善。より踏み込むほどに制動力が上がりやすくしているのだという。
また、ローターの構造にも注目。現在は多くのクルマでフロントのローターにはベンチレーテッド構造のローターが使われている。内側と外側のディスクの間にはフィンが入っていて、この部分でローターを冷却することができる。このフィンの数や角度などもノウハウが現れる部分。多めのフィンでディスク面からの熱を吸収して放出する構造を採用しているメーカーもある。
さらにこのベンチレーテッド部の厚さを変えることもある。ディスクを薄くして、ベンチレーテッド部を厚くすることでより多くの空気が入るようにして冷却性能を高めたローターもあるのだ。同じように見えるローターだが、材質でペダルタッチと効きが変わり、ベンチレーテッド部の設計で耐熱性も変わる。純正サイズのローターでも飛躍的に性能を向上させることができるのだ。
◆スリットはガスの排出とパッドを削る意味がある
スリットやドリルホールが配置されているローターもある。どちらもまずガスの排出という狙いがある。ブレーキパッドはさまざまな繊維や金属などと樹脂を混ぜて、熱を掛けながら焼き固めてある。この樹脂が高温になると焼けてガスになって排出される。このガスがパッドとローターの間に挟まって、瞬時にブレーキがまったく効かなくなってしまうのがもっとも怖い「フェード現象」というもの。
焼結パッドというほぼすべてが金属成分のパッドでは樹脂が含まれていないのでガスが発生しないが、そういったパッドは耐久レースでないと使えないほど高温でしか使えない。ナンバー付き車両である限り、フェードとは切っても切れない関係にあるのだ。そこでその発生するガスを排出するために考えられたのがスリットやドリルホールなのだ。この溝や穴からガスを排出することでフェード現象を防ぐことができる。
また、この溝や穴がパッドの表面を削り取る効果もある。高温になって表面が炭化してきたパッドの表面をスリットやホールが削り取ることで、フレッシュなパッドの表面が出てきてくれる。ドライブしていてもスリット入りだとブレーキが若干効くようになる。ブレーキをもうちょっと効かせたいけど、パッドの特性は変えたくないというときに、スリット入りローターにするという選択肢もあるのだ。
このスリット入りローターやドリルホールだが弱点もある。まずドリルホールはそのホールからクラックが発生しやすいこと。貫通しているのでその穴からヒビが発生してしまうことがある。
スリットに関してはパッドの減りが早くなる。その本数にもよるが本数が増えるほどパッドは減るようになり、スリット無しのローターの2倍以上の早さでパッドが減ることも珍しくないのだ。また、その向きでも変わる。一般的に逆回転と言われるスリットの外周側が先に来て、内周側が後からパッドにあたる方向の方が減ると言われるが、効きもこちらが上になるという。逆に順回転にすればやや減りを抑えられるともいう。そういった特性があるのを把握した上でスリットローターを使うようにしてもらいたい。