バンパーやリップスポイラーなどから、GTウイングまでクルマのイメージを変えるエアロパーツ。それらは見た目だけのパーツなのか、走りまで変わってしまうのだろうか。
◆意外と効いているのがエアロパーツチューニング
チューニングで見た目を変えるものといえばエアロパーツだ。前後のバンパー、サイドステップ、リアウイングなどがその筆頭で、見た目に低く見えてそのスタイリングを変える効果は大きい。路面近くまで伸ばされたフロントバンパーはフロア下に流れ込む空気を減らし、サイドステップはフロア下の空気が横方向に流れるのを防いで整流する。ウイングは走行風の整流とダウンフォースを生み出して車体を安定させる。そういった役割を担っているが、では実際に空力的な検証がされているエアロパーツがどれだけあるかというとかなり少ない。
一部パーツメーカーで風洞実験をしているものがあるくらい。あとは自動車メーカー系のパーツブランドで、自動車メーカーの設備にて効果の検証を行っているものがある。実際にテストを行っているのはそれくらい。ほとんどのエアロパーツは空力的な裏付けはされていないというのが実際のところだ。しかし、効果がないわけではない。これまでの検証やレーシングカーの形状からのフィードバックなどで、ある程度は実験をせずとも効果が狙える。とくにウイングに関しては路面と空気との関係には相関しないので、比較的効果が検証しやすい。
◆効きすぎ注意!?過度なエアロは逆効果を生む
むしろ問題となるのは、いずれもある程度効くわけで、効き過ぎることへの注意。例えば、フロントバンパーに追加するリップスポイラー。見た目にも低く見えるし、価格も手頃で買いやすい。フロントリップスポイラーだけを取り付けることもあるだろう。しかし、このパーツ意外と効く。リップスポイラーがダウンフォースを発生して、ボディを地面に押し下げる効果もあるが、フロア下に巻き込んでボディを持ち上げていた影響をなくしているようで、ちょこっと付けるだけでも意外と効く。
フロントの荷重が増えることで高速道路やサーキットではフロントタイヤの手応えがアップするのだが、相対的に今度はリアの荷重が不足気味なる。「そんなに変わる!?」と思ってしまうところだが、以前富士スピードウェイでテストしたところ、86にフロントリップのみ取り付けたところプロドライバーいわく「かなりオーバーステアが出る。一般の方がこの状態で乗るのは危険」というほどだった。一般道では大丈夫だろうが、高速道路でややステアリングが緊急回避的に切り込んだ場合などに、オーバーステアが発生。そこからスピンモードに入ることも考えられる。そういった場合のために電子制御も入っているわけだが、それだけ影響があるだけに前後バランスを考えてのエアロチューンが必要になってくるのである。
ちなみに先述に富士スピードウェイのテストでは、同メーカーのリアトランクに取り付けるタイプのトランクスポイラー(GTウイングではなく、トランク形状を変えるタイプ)を取り付けたところ、さすが同じメーカーだけあってオーバーステアは収まり、落ち着いたハンドリングが戻ってきた。ということは、リアに巨大なGTウイングを取り付ければリアの接地だけが高まり、フロントタイヤの手応えが薄くなる可能性が高い。合法範囲の幅のウイングでも取り付ける高さが高くなるほど、ルーフからの影響が少なくなって走行風がダイレクトに当たるので効果は大きくなる。
またカナードも要注意。バンパーに隅っこに取り付ける小さな羽だが、これ自体が大きなダウンフォースを発生させると言うよりも、フロントフェンダー内の空気を抜いて、フロントの浮き上がりを防止する効果がある。フロントタイヤのグリップが高まる。同時に、リアに流れる空気を整えていて、トランク付近に巻き込む風を減らす効果もある。それによってリアウイングのダウンフォースがやや減るのだという。フロントはダウンフォースが増え、リアのダウンフォースは減る傾向にあり、その前後の効果で小さなパーツながら結構バランスが変わることがあるのだという。
このようにエアロチューンは小さなパーツでも思ったよりも効くものなので、前後バランスを考えながら装着していきたい。スタイル重視でどちらかだけに偏るとハンドリングに影響が出るほど変わることがある。