近年は車内で用いる電気機器も増えている。そこで純正のシガーソケット空の電源供給だけではまかないきれないケースも出てくるので、電源増設について紹介して行くこととしよう。
ドライブレコーダーやレーダー探知機、ETCや空気清浄機さらにはスマホの充電などに利用するUSBポートなど、車内では電気を利用する機器の使用はどんどん拡大している。これは一昔前では考えられなかった量なのでクルマメーカーも対応が遅れている。シガーソケットに加えてUSBポートを備えているクルマも増えているが、まだまだ足りないというユーザーも多いだろう。
そんな時は電源の増設を実施したくなる。オーディオやカーナビの取り付けを実施したことのあるユーザーならば比較的容易だが、電気に詳しくないユーザーにはハードルが高いだろう。しかしクルマの電源追加は整理してみるとそれほど選択肢はない。比較的手軽に実施できる手法から経験者向けのものまでいくつかに分かれるので自分にフィットする増設方法を選択して実践すると良いだろう。
もっとも作業難度が高いのがこちら。大電流を必要とする場合にはバッテリーからの直電源(いわゆるバッ直)を取って車内に電源ケーブルを引き込んで(既存の配線に這わせる形でバルクヘッドなどにあるグロメットを通過させる)車内の機器に接続する方法がある。ACC(アクセサリー)連動させる場合にはリレーを介してACCをスイッチング電源にしてオンオフするのが一般的だろう。これならケーブルの太さ次第でかなり大きな電力を消費する電気機器もつなぐことができる。
一方、USB電源程度でそんなに大きな電力は必要無いというケースはもっと手軽な方法で電源追加が可能だ。もっともハードルが低い方法はシガーソケットに差し込む拡張ソケットだろう。シガーソケットを分岐したりUSBポートを装備したパーツが売られているのでこれを買って来てクルマのシガーソケットに差し込むだけだ。
しかし、これだとシガーソケットまわりに配線が乱雑になってしまうのがみっともない、常に使う電気機器の場合なので専用の配線を施して起きたいというユーザーもいるだろう。そんな場合にはちょっとハードルの高い方法にチャレンジしてみよう。そのひとつがクルマのヒューズ利用だ。カー用品店などに行くとヒューズ電源と呼ばれるパーツが売られている。これはクルマのヒューズボックスから電源を分岐させるためのお手軽アイテムだ。
ヒューズ電源を使った電源拡張の作業は、まずはクルマのヒューズボックスを見つけることからはじめる。ヒューズボックスはクルマごとに設置場所が異なるのでマニュアルなどを参考にありかを見つけ出そう。次に適当なサイズの電流(A:アンペア)を使っているヒューズを見つける。A数が大きいほど大電流を利用するヒューズであることを示している。またACC(アクセサリー)と常時電源があるので選ぼう。常時電源はその名の通り常に電気が流れている電源、対してACC電源はアクセサリーオンにならないと電気が流れない電源だ。一般的に車内で用いるアフター機器はアクセサリーオンの状態で利用するのでACC電源のヒューズを選ぶと良いだろう。
ただし利用するのはクルマの運行に大きく影響の無いヒューズにしておこう。エンジン系や安全装置などに関連するヒューズだと万が一の場合には重大なトラブルになりかねないのでNG。シガーソケットやオーディオなど、万が一トラブルが起こってもクルマの運転には影響の無い機器につながっているヒューズを使おう。
その上で、既存のヒューズをヒューズ電源と呼ばれる電源取りだし用のヒューズと取り替えるだけ。ここに電源供給用の配線(ヒューズも付属している)が出ているので、これを使って電源が必要な機器に配線すると良いだろう。ダッシュの裏側などを回せば配線も隠すことができるし、シガーソケットの空きスロットが無くなって電源が取れなくなることもないので使い勝手が良いだろう。
しかし注意したいのは大きな電力を取り出すことはできない点。ヒューズ電源はクルマの既存回路の余剰分の電力を使う(さらに配線も細い)ので、利用する機器の消費電流を考慮して余裕を持った範囲内で使うと良いだろう。
もうひとつの電源確保の方法はACC電源が流れている配線に当たりを付けて分岐させる方法だ。代表的なものがオーディオの裏側から取る方法。カーナビなどを取り外して裏側の電源配線からACC電源を見つけ出してエレクトロタップなどを使って分岐する。これも配線がスマートになるメリットがある。常に設置している機器の電源はこちらの方法で設置すると良いだろう。ただしカーナビユニットの脱着などが伴うため作業的には少し面倒。
車内で利用できる電源の増設はさまざまなスタイルがあることがわかった。作業の難しさや利用できる電流量などによってセレクトの方法が変わってくる。自分の利用方法や作業スキルを鑑みて選んで実践すると良いだろう。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。