いま国内の自動運転技術は、どこを走り、どこへ向かおうとしているか。そんな自動運転トレンドが体感できるイベントが、東京臨海都心、青海R地区で9月29日~10月1日に行われた。内閣府が手動するSIP自動運転(システムとサービスの拡張)プログラムの「SIP 自動運転 実証実験プロジェクト 展示・試乗会」だ。
このSIP 自動運転 展示・試乗会には、ヴァレオジャパン「ヴァレオ DRIVE4U レベル4相当自動運転システム」(ランドローバー『レンジローバーイヴォーク』)をはじめ、トヨタ『ミライ』、レクサス『LS』の高度運転支援、ホンダ『レジェンド』のセンシング・エリート、ホンダ「自動運転車両クルーズ AV」、スズキ「浜松自動運転やらまいかプロジェクト実証実験車両」(『ソリオ』ベース)、スバル『WRX S4 STI Sport R EX』、ダイハツ自動運転実験車(『タント』ベース)、日産『アリア』、『プロパイロットコンセプトゼロ』、BMW『iX2』、『X5』のハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能、マツダ「CO-PILOT CONCEPT 技術試作車」、マツダ『MX-30 MX-30 Self-empowerment Driving Vehicle』、金沢大学自動運転自動車などが展示され、一部のクルマは試乗体験もできた。
こうした自動車メーカーの華やかな自動運転車両たちのなかで今回、注目したのが、ティアフォーのロボット・タクシー(トヨタ『ジャパンタクシー』ベース)と、埼玉工業大学の自動運転AIバス(日野『リエッセII』ベース)。どちらとも、ティアフォーが開発主導するオープンソース自動運転ソフトウェア「Autoware」を搭載し、両者とも独自の設計思想でプログラム更新やチューニングをすすめている点で注目を集めている。
◆公共交通に自動運転システムが入ると
マイカーや社用車などを想定した自動運転車両と違い、タクシーや路線バスといった公共交通に自動運転システムが入ると、どんなニーズや課題がみえてくるか。両者はそれぞれの設計思想と各自治体・各路線バス会社などと伴走しながら自動運転システムを進化させてきた。
たとえばティアフォーのロボット・タクシーは、GPS・GNSSをほとんど使わない。あらかじめ設定された3Dマッピングに従って走る、「決まったルートを自動で走る」というタクシーで、公共交通過疎地などのオンデマンドタクシーなどでの実用化が想像できる。また、運転者なしの遠隔型自動走行と、運転者ありの非遠隔型自動走行の2パターンも展開できる点もポイント。
いっぽうの埼玉工業大学の自動運転AIバスは、既存の路線バス車両に後付け自動運転AIシステムを搭載するというスタイルで、新規のパッケージ化された自動運転バスを購入するのではなく、各路線バス会社が保有する路線バス車両を各地域の交通環境にあわせて自動化できるという点が全国各地から注目を集め、この内閣府 SIP 自動運転 実証実験プロジェクトのほか、各自治体・路線バス会社が共同で実施する実証実験に参画し、その都度、自動運転システムとプログラムを更新してきた。
埼玉工業大学の地元、埼玉県深谷市では、日野レインボーIIに後付け自動運転システムを搭載し、緑ナンバーを取得し路線バス区間をレベル2で営業運転。1万kmを超える自動走行を経て、ついに埼玉工業大学と最寄り駅を結ぶスクールバスに一般営業運転として実用化へ踏み切った。
◆中部国際空港エリアで実証事件へ
このティアフォーと埼玉工業大学には、共通する新しいニュースがある。それは、年内じゅうに愛知県で、さらにさまざまな走行条件が立ちはだかる実証実験に挑む計画。愛知県発表による実証実験の内容は「交通事業者等が実運行で再現可能なビジネスモデルの構築を目指し、3地域で実証実験を行う」というもの。
3地域とは、常滑市・長久手市・名古屋市。そのなかでも常滑市で行われる実証実験は、イオンモール常滑~中部国際空港(公道:中部国際空港連絡道路含む)と、イオンモール常滑~りんくう町内~常滑駅(公道)の区間で、磁気マーカシステム・ビッグデータを活用した安心・安全で利便性の高い運行をめざす。
具体的には、中部国際空港連絡道路に磁気マーカシステムを埋め込み、埼玉工業大学の自動運転AIバス(日野レインボーIIなど)や先進モビリティの自動運転バス(日野ポンチョなど)で決められたルートを自動運転。ビッグデータを活用し移動需要に合わせた最適な配車や、5GやAI映像解析技術などを活用した危険箇所リスクの検出などを確認していく。
この中部国際空港エリアの実証実験走行は、NTTドコモ(事業統括、通信環境構築、5Gなど)、先進モビリティ(小型自動運転バス、日野『ポンチョ』ベース)、アイサンテクノロジー(3Dマップ、走行調律作業など)、埼玉工業大学(自動運転路線バス、日野レインボーIIベース)、ティアフォー(自動運転OS Autoware の運用支援)、岡谷鋼機(社会実装など)、損害保険ジャパン(自動運転リスクアセスメント)、名鉄バス(遠隔管制者、車内保安員、運行支援など)、愛知道路コンセッション(磁気マーカシステムなど)、シーキューブ(磁気マーカ敷設)、愛知製鋼(磁気マーカシステム GMPS)、イオンモール常滑(遠隔管制室の設置場所)、東海理化(遠隔監視など)が参画する。
こうしたSIP 自動運転 展示・試乗会や、各地で行われる自動運転実証実験をみていると、マイカーや社用車よりも、公共交通領域で自動運転が実用化しそうな気配。今後のこうした空港エリアでの実証実験も、注目したい。