ネットミームでは、三菱鉛筆は三菱グループではないことをいじられる存在だが、素材技術では得意の炭素を使った意欲的な製品を持っている。二次電池展2022(8月31日~9月2日、幕張メッセ)のブースではいくつかの素材展示が行われていたが、ここでは目についた2つをとりあげる。
まず、導電性カーボンを塗布した電磁波吸収素材だ。5Gなど次世代高速通信では、高周波ノイズの対策が非常に重要だ。これらの機器は、ノイズを外に漏らしてもならないが、外からのノイズも遮断しなければならない。ノイズシールドには金属箔が使われることが多いが、導電性のある炭素素材インク(カーボン分散液)を塗布したフィルムシートも同様な効果がある。
もうひとつはFC(水素燃料電池セル)のセパレータ素材だ。自動車用のFCスタックでは、セパレータは金属素材を用いることが多い。薄さや加工技術などの面から炭素系素材(以前の主流)より金属系が好まれる。FCスタック内は、水と水素が分離して流れる道が必要だ。金属は水分によって酸化するという問題がある。
三菱鉛筆では、独自のフィラー技術、分散技術によって導電性カーボン材料の高密度化を行った。その結果、低抵抗、高強度(100MPa)、高水素透過率のセパレータを実現した。カーボンシートのメリットは金属素材に比べて軽いことだ。コストも下げられる可能性がある。
電磁波吸収体とカーボンセパレータは、製品として販売されていないが、製造技術はほぼ完成に近いとして、具体的な引き合いがくればすぐにサンプルの提供ができるという。