梅雨時のメンテナンスで直接安全性に直結する最重要項目のひとつがタイヤだ。雨天時の走行は晴れた日とは比べものにならないほどスリップの危険をはらんでいる。今回はタイヤのチェックについて紹介して行くこととした。
◆雨が多い梅雨シーズンはタイヤチェックが必須!
雨天時のトラブルを危険を未然に回避してくれるひとつの項目がコンディションの良いタイヤだ。そこで雨中の走行が増えるこの時期、今すぐタイヤの状態を点検してみよう。タイヤの点検にはいくつかの項目があるが、今回は梅雨時のタイヤチェックに絞って状態を確認してみることにした。
ポイントは残溝だ。タイヤにはスリップサインと呼ばれる残溝の限界を示す目安がある。トレッドの一部の溝部分が盛り上がっている構造で、スリップサインがトレッド表面に露出したらタイヤの使用限界になる(使い続けると整備不良)。そのためスリップサインが出たら問答無用でタイヤ交換が必須。今週末タイヤチェックをしてスリップサインが出ていたらタイヤショップに直行して交換を実践しよう。
タイヤのトレッド面の状態をチェックしたのは残溝が雨天時の走行(ウエット性能)に大きく影響を及ぼすからに他ならない。メカニズムはこうだ、タイヤのトレッド面に刻まれている溝は雨天時に路面に浮いた水膜をかき分けてタイヤと路面の間に入り込んだ水を除去する効果を発揮するのだ。つまりタイヤをしっかりと路面に接触させることでグリップ力を高めるには残溝は非常に重要な判断ポイントなのだ。しかしタイヤがすり減って残溝が浅くなると排水性能が低下し、タイヤと路面の接触面に水膜が入り込みがちになる。
タイヤメーカーの過去のテストでは新品に近い残溝(7mm程度)ではタイヤ設置面の水膜はきれいに排水されて路面とタイヤが美しく接しているのに対して、少しすり減ったタイヤ(残溝=3.5mm程度)ではトレッドとタイヤの間に水膜が入り込むようになり、さらに残溝1.6mmまですり減ると排水効果が大きく低下してタイヤ設置面が水に浮いた状態になることが確認された。
このようにタイヤと路面との間に水膜が入り込んで除去できなくなるとハイドロプレーニング現象と呼ばれるタイヤが水膜によって路面から浮き上がってしまう現象が起きてしまう。この現象が起きると水膜の上をタイヤが滑っていく状態になり、ハンドルやブレーキが利かなくなるので要注意だ。雨天時の事故でも多い事例なので注意したい。
◆交換時期は状況によってさまざま。セルフチェックをしっかりと。
ところでタイヤの交換時期はどうして判断すれば良いのだろう、スリップサインが出ていればわかりやすいのだが、多くの場合は“新品時からはすり減ってはいるが、まだスリップサインは出ていない”という状態ではないだろうか? しかし新品時から徐々にウエット性能は低下していることは認識しておこう。
またトレッド面の摩耗が進むと加速度的に制動距離が伸びていく(ウエットグリップが低下)ことも過去のテストなどでも明らかになっている。例えば過去のタイヤテストの中には、新品時に対して2分山まで減ったタイヤだと、100km/hからの制動距離が約1・7倍に延びることが報告されている。ギリギリまで使い切るのもエコだが早めのタイヤ交換が安全性を高めることも忘れずに。
このように雨天時のウエット路面は晴れた日に比べるとクルマの動きに制約が生まれる。都市高速の記録では雨天時は晴天時に比べて単位時間あたりの事故件数が約5倍になったという過去のデータも残っている。ウエット路面はコンディションの良いタイヤを使っていても晴天時のドライ路面に比べるとスリップしやすいのだが、タイヤがすり減っているとなおさらだ。もちろん雨天時の事故にはスリップやハイドロプレーニングだけではなく、視界不良などの要因も加わるが、まずは自分でセルフコントロールできるタイヤの状態を良くすることで安全性を高めるのが得策だろう。
◆タイヤの性能表記で見るべきポイントはここ
週末にタイヤチェックをして、残溝が不安だった場合には迷わずタイヤ交換を実践してみよう。その場合に、ウエット性能の高いモデルを選ぶのも手だ。エコタイヤなどで目安にできるのがタイヤラベリング。転がり性能とウエット性能(a~d:aがもっともウエットグリップ性能が高い)をグレーディング表記されているので、これを目安にしてタイヤを選ぶのも良いだろう。
梅雨時の安全対策として欠かせないタイヤの状態チェック。残溝を中心にチェックして、ウエット路面でのトラブルを防ぐメンテナンスを実践しよう。自分でできる雨天時の安全性アップには効果的なので、ぜひとも実施しておこう。
★~Weeklyメンテナンス~は毎週木曜日6:30掲載です