重機愛を抱えたまま、悶々と一生を終えるのか? 重機デビューへの道【岩貞るみこの人道車医】 | CAR CARE PLUS

重機愛を抱えたまま、悶々と一生を終えるのか? 重機デビューへの道【岩貞るみこの人道車医】

特集記事 コラム
「重機デビュー」という人生の夢を果たした、筆者の笑顔(すっぴんゆえ閲覧注意)をご覧いただこう
  • 「重機デビュー」という人生の夢を果たした、筆者の笑顔(すっぴんゆえ閲覧注意)をご覧いただこう
  • 動かす前にメンテナンスから教えてもらう。
  • 基本操作のデモ。見ていると簡単そうに見えるけれど。
  • 2台の重機、それぞれ使い勝手が少し違うので交互に操作。
  • 実技にも試験あり。まずは10級から。
  • 講師による高度なデモ。うっとり。
  • キャタピラが浮いているのがおわかりいただけるだろうか。
  • 実技が進むと、二本の杭のあいだを八の字に回す練習も

重機が好きだ。

私がクルマを好きなのも、大型トラックが好きなのも、ナナハンに憧れて乗り回していたのも(過去形)、消防取材では、はしご車に一番、魅かれたのも、米農家の取材ではトラクターや田植え機に悶絶していたのも、すべては「動かせる鉄の塊愛」からきている。

重機に乗りたい! できることなら、動かしてみたい!

思いは募るばかりだが、腰を重くするのは、「遊びじゃねえんだぞ!」という本気の方々に混ざって資格をとりにいく勇気がないからである。しかし、このままやらない言い訳に押されて行動しなければ、あっという間に人生は終わってしまう。重機。どうすれば乗れるんだろう?

そんなときに巡り合ったのが、一般財団法人日本笑顔プロジェクトである。2019年の台風19号では、千葉県に甚大な被害をもたらしたのと同時に、長野県の千曲川も氾濫させた。栗で有名な小布施のあたりは一瞬にして濁流にのまれ、その後、栗畑には泥が体積したのである。私はちょうどこの一週間前に仕事で小布施を訪問していたこともあり、その惨状に胸が痛んだ。

栗畑に積もった泥を取り除かなければならない。人がスコップで掘り出すよりも、重機を投入した方が圧倒的に早い。しかし、現場では問題が発生していた。重機はあっても重機を扱える人がいないのである。この教訓をもとに、「目指せ、重機オペレータ1000人!」を合言葉に設立されたのが、日本笑顔プロジェクトである。

※2022年6月11日に1000人を達成。次なる目標は2万人である。

重機愛を抱えたまま、悶々と一生を終えるのか?

ちなみに重機は大小さまざまあるが、3t未満の油圧ショベル(いわゆる、ユンボ。ちなみにこれは、レンタルのニッケンさんの登録商標)であれば、普通自動車免許に加え、小型車両系建設機械運転業務特別教育講習を受ければ、動かすことができる。日本笑顔プロジェクトは、3t未満の重機講習ができる資格を持っているのである。

3t未満の油圧ショベルというと見た目は小さいが、被災地では一番、活躍するクラス。泥だらけ&納屋などさまざまなものが流れついている現場では、大型重機は入れないのだ。小さくてもショベルひとすくいで、人のスコップ20回分になる。しかも、体力はあまり使わないので、一日中、作業が可能だ(腰は痛くなるらしい)。

私も被災地でスコップを使うのは体力的に厳しいが、油圧ショベルなら参加できるかも? 

講習は、座学と実技。それぞれ、丸一日をかけて行われる。座学の最後には試験もある。設立当初、講習会はすべて小布施で行われていたが、座学はオンライン座学ができる回も作られた。また、この春から千葉県の成田でも受けられるようになった。成田なら、都内在住の私でも日帰りが可能だ。この機会を逃したら、私は重機愛を抱えたまま、悶々と一生を終えることになるだろう。いざ、申し込みである!

とにかく楽しく、真剣に学べる

朝の八時半過ぎから家のパソコン前で座学を受け、なんとか試験もパスし、いよいよ実技である。そぼふる雨のなか、この日のためにワー〇マンで揃えたヘルメットとレインコート&長靴を身に着け、実技講習の会場へ向かうと、目の前に油圧ショベルさまが! しかも2台も! 萌える。萌えすぎる。油圧ショベルを目の前にしたとたん、興奮と感動でめまいがしそうだ。運転席に座った瞬間は、積年の思いが一気にあふれ出て泣きそうになった。

足元はぬっかぬかの泥だが、講師の先生によると、まさに被災地と同じコンディションなのだという。講師の先生は3人。そして受講者は5人(女性は私を含め二人)。みっちり教えてもらえるありがたい環境である。

実技は、油圧ショベルを動かして動かして動かしまくる。自分が操作していないときも、ほかの受講生が動かしている動作を見ると、ものすごく勉強になる。なにせ、楽しい。なんたって笑顔プロジェクトなのである。明るく楽しく面白く。楽しみながら、でも、真剣に学ぶことで、受講生側もより積極的に技術を得ようという気になるのである。

夕方近くなると少しずつ、自分の意志の通りに動かせるようになり、ああ、私もこれで、重機オペレータ……と感慨に浸ったところで、終了である。もっと動かしたいと思うものの、実際は集中力が切れて動作が雑になってきている。これ以上、調子に乗って動かしていると、きっと事故を起こすだろう。それを見越したプログラムなのである。災害現場でのボランティア活動はもちろん、重機を使った現場では、ひとつの事故が大きくなるだけに、安全第一なのだ。

サブスクでトレーニングも

終了後は、顔写真入りの労働安全衛生法による特別教育修了証がもらえる。これがあれば、レンタルのニッケンさんで、ユンボが借りられる。ただ、一日程度の実技で身に着く技術は、ほんの基本でしかない。ゆえに、日本笑顔プロジェクトでは、サブスクで重機トレーニングができる場と共に、技能に見合った10段階の級が取得できるプログラムも用意している。目指せ、1級!

トレーニングしてうまくなったら、被災地や豪雪地帯にボランティアで行けるかな。いや、近く起こるといわれている首都直下型地震のとき、油圧ショベルで役に立てるに違いない。ついに果たした、重機デビュー。いろんな意味で、自分がレベルアップしたような気分である。

日本笑顔プロジェクトのサイト
https://egaonowa.net/

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

関連ニュース

特集

page top