チューニングカーでは水温/油温/油圧計を取り付けて確認することが多い。ではなぜその項目で、それらにはどんな意味があるのか。追加メーターや温度、圧力把握の意味を解説する。
◆アナログからデジタル表示へ
とくに大切な3項目は見ておきたい
昔のチューニングカーといえば、ダッシュボードにずらりと並べられた追加メーターが定番だった。現代ではマルチメーターでひとつの画面にさまざまなデータを表示させるのが主流。そのなかでも特に重要なのが水温/油温/油圧の3つの数値だ。なぜなら、この3項目はエンジンを壊さないためにとても重要な要素だから。
◆水温はエンジン冷却にもっとも大切。適温は90~100度
水温とはエンジンの冷却クーラントの温度のこと。2000年以前のエンジンでは80~85度くらいが適温だったが、現代のエンジンはもう少し適温が高い。ターゲット温度を上げることで燃焼効率をアップしていると言われる。それゆえに90度~100度ほどでもまったく問題なし。110度くらいまでは許容範囲だと言える。
水温が高くなりすぎると、エンジンは熱を持ちすぎてしまいオーバーヒートしてしまう。オーバーヒートしてしまうとその熱によってエンジンヘッドが歪んでしまうことがある。そうなると圧縮漏れで大幅にパワーダウンしたり、クーラントが燃焼室に流れ込むなどさまざまな不具合が起きてしまう。直すにはエンジンをバラしての大掛かりな修理が必要で、エンジンごと交換したほうが早いかも。それくらいの重大なダメージを受けてしまう。
逆に低すぎる水温も良くない。良かれと思って水温を下げるチューンを施す人もいるが、現代のクルマで水温が80度代だとクルマ側で水温をあげようとして、ガソリンの噴射量をコントロールしたりして、燃費が悪くなったり、本来の性能が得られなくなってしまう。
◆油温はエンジンオイルの温度。95~105度くらいが適温
エンジンオイルの温度も現代のクルマは設計温度が高くなっている。90年代のクルマでは90度くらいが良いと言われていたが、今はもっと温度が高い。温度が高すぎるとオイルが急速に劣化してしまうので良くないが、逆に100度近くまで温度が上がらないとエンジン内で結露した水分が蒸発せず、どんどんオイルに取り込まれてしまい乳化してしまうことがある。街乗りなどで短距離移動を繰り返した結果、エンジンオイルがカフェオレのようになっていたというのは、オイルと水分が乳化してしまって起きたトラブルなのだ。
これを防ぐためにも乗るたびに100度近くまで温度が上昇した方が良いのがエンジンオイルなのだ。だが、サーキット走行などで120度を超えるようならオイルクーラーの取り付けを検討したい。120~125度くらいならすぐにオイルクーラーは必要ではないが、エンジンオイルは120度を超えると急速に劣化してくる。なので、温度が上がったら早めにオイル交換をするか、温度が上がらないようにオイルクーラーを装着したいところだ。
中には高速道路で油温100度を超えているのでオイルクーラーを装着するという人がいるが、これはまったく不要。むしろ高速道路では油温が80度台では低すぎる。エンジンを労ることにもならないののだ。
◆油圧はエンジンオイルを圧送する圧力
低くなってくると危ない!!
油圧はオイルをエンジンに押し込む圧力のこと。油圧計はまずオイルポンプに不具合が起きていないかを確認する意味がある。そして、もう一つ確認したいのは油圧の変化だ。油圧が高く保たれていないと、クランクシャフトもカムシャフトもオイルの中に浮くことができない。フローティングメタルのオイルの上に浮いているから最小限の金属接触しかしないので、長くエンジンを使用することができるのだ。なので、油圧が常に安定して数値を保っているかが重要。油圧ダウンは即エンジンブローに直結する。
油圧が下がる原因はまず、オイル自体の劣化がある。繰り返し熱が入ることでオイル自体がダメージを受ける。また、混合気が吹き抜けてガソリンがオイルに徐々に混ざることもある。こうなると粘度が下がり、油圧が落ちてくる。
さらにサーキットでは強い前後や左右のGが発生することで、オイルパンの中のオイルが片寄ってしまい、オイルポンプが吸い上げられなくなって油圧が落ちることがあるのだ。
◆レーシングカーはすべてのワーニングが分かるようにしている
レースの世界ではいちいちメーターを細かく見ていられないので、各温度や油圧などはモニターしているが、その数値をドライバーが見るのではなく、ワーニングランプが付くようになっている。なにか異変が起きていることを知らせるシステムで、ドライバーは運転に集中できるようにするのが一般的なのだ。