40代の20人に1人が緑内障、「視覚障害」を早期発見するには【岩貞るみこの人道車医】 | CAR CARE PLUS

40代の20人に1人が緑内障、「視覚障害」を早期発見するには【岩貞るみこの人道車医】

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視野障害ウェビナ―、総括は国際モータージャーナリストの清水和夫氏
  • 視野障害ウェビナ―、総括は国際モータージャーナリストの清水和夫氏
  • 上段右端から時計回りに、たじみ岩瀬眼科の岩瀬愛子医師。神戸アイセンター病院研究センター長の高橋政代医師。清水和夫氏。西葛西・井上眼科病院副院長の國松志保医師。モデレータは、私、岩貞。
  • 第二回視野障害ウェビナ―の様子。
  • ウェビナ―は画面を見つめ続けるため、目に負担が……そして私の目は!
  • 検査したときに撮影した私の左目の眼底写真。緑内障だとこの写真で神経の異常がわかる。
  • 視野の右下に欠損があるドライバーの場合、前を見つめて走っていると、右下にいる二輪車の存在が、下段のイラストのように消えてしまう。(イラスト/手塚かつのり)
視野が狭くなったり欠けたりすると、認知~判断~動作の最初の認知が不十分になる。信号機を見落としたり、歩行者が見えなかったり。職業ドライバー(物流だけでなく営業車、さらに自動車メーカーのテストドライバーも含まれると思う)にとっては、切実な問題……であるにもかかわらず、運転前の飲酒チェックはしても視野障害についてはスルーな企業がほとんどなのである。

2021年9月2日、内閣府SIP-adus 第二回視野障害ウェビナ―「運転免許と視野障害~有病者の運転と就労を考える」が開催された。

現在の運転免許更新は、普通車は両眼で0.7以上(以下省略)、大型車などは両眼で0.8以上(以下省略)と、視力検査は行うけれど視野に関しての検査はない。

左右まだらに視野が欠けていく緑内障の場合、有病者は40代で5%。つまり20人に一人だ。もちろん、緑内障、即、免許返納ではなく、軽度であれば十分に運転は可能だが、発見が遅れれば症状は進み、重大な事故を起こしかねない。治療法がない病気だけに、早期発見、早期治療開始して、運転できる状態を保ちたいところ。クルマ好きならなおさらだろう。

視野が欠ける緑内障も、視野が狭くなる網膜色素変性も、長い時間をかけて少しずつ進行するため、自分で気づく人は一割にも満たない。だったら、運転免許更新時に視野検査を入れ、早期発見につなげるべきなのではないか。もちろん、視野障害が大きい人は、視力同様、基準を設けて免許返納につなげるべきなのでは? しかし、そうはいかない理由があった。

◆免許更新時に検査を取り入れることはできるか

上段右端から時計回りに、たじみ岩瀬眼科の岩瀬愛子医師。神戸アイセンター病院研究センター長の高橋政代医師。清水和夫氏。西葛西・井上眼科病院副院長の國松志保医師。モデレータは、私、岩貞。
今回のウェビナーに登壇した、たじみ岩瀬眼科の岩瀬愛子医師によると、警察庁も視野障害を認識しており、2012年度から岩瀬医師らとともに調査研究を始めている。簡易で安価なやり方で、免許更新に取り入れられないかと、実際に更新会場でテストも行ってきた。

そして9年たった今、わかったことは、更新時に検査を取り入れるのは、まだ、むずかしいということだ。視野検査は、簡易なテストでもきちんと検査ができれば、正しい結果を出すことができる。しかし、その「きちんと」のハードルが高いのである。

「中央の一点を見つめてください。周囲の視界のどこかに〇〇が見えたら教えて」と検査のやり方を伝えても、慣れていない人は、目を動かして〇〇を探してしまう。高齢(視野障害である確率が高い世代)になればなるほど、検査はうまくできないという。また、この検査は医療現場であれば、専門の視能検査師(機械を扱うプロ。レントゲン技師のようなイメージ?)が行うのだが、こうした視能検査師役の教育も進まない。

検査する以上は、全都道府県のどこでやっても同じ精度で結果を出さなければいけない。正確(大事)で、安価で(ここも大事)、短時間(ここもすごく大事)な検査ができるようになるには、まだ時間がかかるのだ。

視野の右下に欠損があるドライバーの場合、前を見つめて走っていると、右下にいる二輪車の存在が、下段のイラストのように消えてしまう。(イラスト/手塚かつのり)
さらに、「このくらい視野が欠けていたら、免許更新ができない」といった基準作りも進んでいない。どこまで欠けていたら運転をやめさせるかは、目の問題だけではなく、運転の慎重さや、どういう道を走るか、反射神経はどうかなど、総合的に判断しなければならないからだ。

そもそも免許更新は視野障害のスクリーニングをする場所ではない。また、5年に一度の免許更新のタイミングでは、視野障害は進行してしまう。やはり、自分で能動的に検査していくしかないのである。

一般的な企業が導入している健康診断は、視力しか検査しないため、やはり眼科に行くのが一番だ。眼圧検査は欧米人には有効だが、日本人の目は眼圧が正常でも緑内障になる確率が高いためあてにならない。眼底検査で視神経を診察してもらう必要があり、最終的には視野検査で見えない位置を特定することがなによりも大事なのである。

◆視野障害、まさか私が?

検査したときに撮影した私の左目の眼底写真。緑内障だとこの写真で神経の異常がわかる。
では、どういう人が眼科に行くべきなのだろうか。一般的に、近視の人は緑内障になりやすいという。また、今回のウェビナーでは、ひとつの交通事故から、視野障害を見つけたケースを紹介させていただいたので、参考にしてほしい。

この企業では、事故が起きたときはドラレコの映像をドライバー全員で見て事故抑止に活かしているのだが、ある事故で、「二輪車がいるのがはっきりわかるのに、これで事故を起こすのはおかしい」となり、運転していたドライバーの視野障害を疑い、所長や総務担当者がきちんとドライバーにつきそって眼科に行き、視野障害を見つけ出した。

軽い事故や、ヒヤリハットをないがしろにせず、もしかしたら? と、疑って検査につなげたのである。こうした行動によって、大きな事故を起こす前に対策ができ、ドライバーもすぐに治療を開始でき、生涯、光を失わずに生活できるようになったことは大きい。

そして私、こんなに視野障害について書いているくせに、自分では検査を受けたことがない。これはいかんと、先月、検査を受けてみた。すると……がーん! まさか私が? この件については、次回、改めてお伝えしたいと思う。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。
《岩貞るみこ》

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