雨の日の視界を確保するために欠かせない装備、ワイパー。今や当たり前の装備だが、そのメカニズムは意外にも(?)試行錯誤の歴史とともに進化してきた。懐かしのモデルのカタログとともに、特徴的なワイパーを振り返ってみたい。◆ミラーのワイパー他・日産レパード(1980年)・日産シーマ(1988年)・トヨタ・クレスタ(1988年)1980年に登場した初代『レパード』は、個性的なスタイルと豪華さで注目を浴びた。が、カタログでも“世界初”を謳っていた驚きの装備が「ワイパー付電動リモコン式フェンダーミラー」。鏡面左右にブレードが行き過ぎないようにストッパーも備えた。さらにその8年後、今度は国産初の車両価格500万円超えで社会現象も起こした初代『シーマ』では「ドアミラーワイパー」が登場。さらに同じ年に登場した『マークII/チェイサー/クレスタ』では、ウォッシャー連動の「サイドウインドゥワイパー」を設定。ご丁重にもアーム付け根にウォッシャーが吹き出すノズルを装備。◆1本ワイパー・いすゞ・ピアッツァ(1981年)・ホンダ・プレリュード(1982年)・日産シルビア/ガゼール(1983年)・ホンダ・トゥデイ(1985年)・メルセデスベンツ(1986年)・シトロエンCX(1974年)80年代初頭には1本ワイパーのクルマも相次いで登場した。カタログ写真で示したとおり日本車では『ピアッツァ』『プレリュード』『シルビア/ガゼール』などがそうで、この中では『プレリュード』のみ、非作動時のブレードの格納位置は“右”だった。筆者も『ピアッツァ』に乗っていたが、1本ワイパーの場合、180度近く作動することで勢いがあり振り払った雨水を周囲に飛ばすため、歩行者がそばにいる街中で気をつける必要があった覚えがある。一方で軽の『トゥデイ』では、ダブルリンク式を採用し、立ち上がった際に右側ピラー直近まで払拭できるようにし、ドライバーの目の前の視界を広く確保していたのが特徴だ。輸入車ではW124型メルセデスベンツ、ミディアムクラス(現在のEクラス)が、独特の作動機構の採用でブレードの軌跡を“非扇型”にし、払拭面積を広げる工夫がされていた。シトロエンも写真の『CX』始め『BX』『ZX』『AX』などひと頃は1本ワイパーが多くみられた。◆2本ワイパーの変形型・シトロエン・クサラピカソ(1999年)・ルノー・アルピーヌV6ターボ(1984年)古いクルマでよく見られたのが、2本ワイパーが向かい合わせに重なり、左右に向かって開くタイプ。写真は割と近年のモデルの例だがシトロエン『クサラピカソ』のもの。反対にルノー『アルピーヌV6ターボ』では、左右のワイパーの“軸”が中央寄りにあり、左右から中央に向かって立ち上がるように作動する方式だった。◆リヤワイパー・ホンダ・シビック(1972年)リヤワイパーは今ではさまざまなタイプのクルマに採用されるが、日本車で最初に装着したのが初代『シビック』。2、4ドアだけでなくハッチバックタイプの3ドアにも設定された。3ボックスのノッチバックセダンなどと違い、2ボックスの場合、雨天時走行中の巻き上げでリヤウインドゥが汚れやすい。だから『シビック』が採用に踏み切ったのだった。◆ヘッドランプワイパー・サーブ900(1971年)・ボルボ760ターボ(1982年)・三菱ギャランΣ(1980年)ヘッドランプにワイパーを装着したのが“サーブ”とされている。写真は80年代にまだ現役だった頃の『900』だが、その後の世代の『9000』『9-3』にも装着されていた。同じスウェーデンのボルボも採用、写真は『760ターボ』で、ウォッシャーパイプが見える。一方で日本車でも採用例が。写真のカタログはその中の1台、三菱『ギャランΣ』。1980年11月に登場した「2000GSRターボ」にメーカーオプションで設定され、“ベルナス・アドバンタイヤ、リヤワイパー”とのスポーツパックとして用意されていた。