“RV”と呼ばれる括りでブームになったことがあった。その頃の立役者たちのカタログに今回はスポットを当ててみた。◆日産 サニー・カリフォルニア(1979年)1980年代初頭といえば、日本ではアメリカ西海岸の文化や生活スタイルがちょっとしたブームの頃。音楽では甘々な歌詞よメロディラインのA.O.R(アダルト・オリエンテッド・ロック)などは流行っていた。そんな頃に登場したのが、この『サニー・カリフォルニア』だ。迂闊にも当時はカタログのこのコピーをスルーしていたが、「カリフォルニアの新風、5ドアスポーツセダン」と謳われていて、ワゴンではなく、使いこなし甲斐のあるセダンという位置づけだった。スタイル上の特徴だったのは“ウッディサイドパネル”と呼ばれた木目調ののボディサイドの加飾ステッカーだったが、今、冷静にカタログの装備表を見直すと“△注文装備”の扱いになっている。もちろんイメージはアメリカのステーションワゴンで、北米市場では『セントラ』として発売されていたサニーのいわばイメージを逆輸入したようなクルマ。後席背もたれ背面までカーペットが貼り込まれ、フルフラット時の快適な使い心地にも配慮している。カタログ写真の初代から3世代続いた。◆ホンダ シビック・カントリー(1980年)2代目の“スーパー・シビック”をベースに誕生したモデル。手元のカタログを眺めてみると、「デッキシューズのように使う。オイルドセーターのように着る。フィッシングバッグのように運ぶ。君のステーションワゴンなのだから」と、当時の“メンクラ(男性ファッション誌のひとつ、メンズクラブのこと)”のページに出てきそうなコピーが記されている。『サニー・カリフォルニア』が西海岸指向だったのに対し、さしずめ山派はコチラといったところか。特徴(のはず)の“サイド木目パネル”はやはりオプション扱いだった。スーパーシビックがベースということで、インテリアは斬新さが特徴で、初代『プレリュード』と同様の“集中ターゲットメーター”や、メータークラスター横のダイヤルで操作する仕組みのロータリー・チャンネル式ラジオなどを装備。使い勝手を高めるため、後席の背もたれは4段階の角度調節ができ、カタログでは“スーパーバリアブル・リヤシート”と呼ばれている。◆トヨタ スプリンター・カリブ(1982年)“RVブーム”が始まろうとしていた1982年の発売。前年の東京モーターショーに“RV-5”の名で登場したショーカーがほぼそのままの形で市販化されたモデルだった。車名は“スプリンター”だったが、ベースとなったのはひとつ下のクラスのターセル/コルサ/カローラII。2枚目の写真のカタログは、北米仕様車『ターセル4WD』のものだ。今でこそSUVモデルであっても2WD車が用意されるのは珍しくないが、『スプリンター・カリブ』は全車が4WD。これに乗用車ライクな乗り味、快適性を組み合わせて、新タイプのアクティブビークルとしていた。スタイリングはハイルーフと大きなリヤクォーターウインドゥが特徴。“2-4セレクター”と呼ぶ、FWDと4WDがレバー操作で切り替え可能な機構やクライノメーターなど、かつての4WDらしいディテールも備え、オールシーズンタイヤが標準装着された。搭載エンジンは1.5リットルのレーザー3A-II。車名は“アメリカトナカイ”に由来。◆ホンダ シビック・シャトル(1983年)『シビック・カントリー』の後継モデルとして1983年に登場したのが、この『シビック・シャトル』。“ワンダー・シビック”と名付けられた3代目シビックの5ドア番の位置付けで、カタログを見ると“FFニューコンセプトセダン”と記されている。1625~1645mmの余裕のある全高をもち、後席は座面クッションを裏返して前方に倒し、さらにシートバックを前倒しすることで、ラゲッジスペースがフルフラットになる設計も採用されていた。“ワンダー・シビック”といえばサッチモ(ルイ・アームストロング)のあのCMでいかすたハッチバックがお馴染みだったが、『シビック・シャトル』もその一員らしく、当時としては溌剌とした創意に溢れたホンダ車らしいホンダ車だった。カタログを見ていると、この世代の『シビック』のようなホンダ車がまた現れてくれないだろうか……と思ったりして。
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