日本ではミニバンというと子供のいるファミリーの定番のイメージ。けれど欧米ではMPV、つまり多人数乗車が可能な乗用車として広く愛用されている。いずれにしても生活に根ざしたクルマだけに、それぞれのお国柄がクルマにもカタログにも反映されているところがおもしろい。◆ルノー・メガーヌセニック実は今回のテーマを考えるキッカケになったのが、この初代『メガーヌ・セニック』の本国版カタログだった。というのも、ご覧いただけばおわかりのとおり、まるで図鑑か何かのように動植物のリアルな写真を織り交ぜた、眺めているだけでも気持ちがほころび、いかにもお子様の情操教育のためになりそうな、あるいは知的好奇心をソソられる仕立てだったから、だ。1996年に登場した同車は、翌’97年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーのタイトルにも輝き、コンパクトなサイズの多用途車として、多くのフォロワーが登場したのはご存知のとおり。日本市場へも’98年から当時のフランススモーターズ(ヤナセ)により正規輸入され、4WDの“RX4”も導入、2000年から『セニック』に車名が改められたフェイスリフトモデルも導入された。ルノー車らしくフカッとしたシートやおっとりとした走りの味は、日本車とは一線を画すもので、カタログの仕立てとともに、いかにもフランス車らしい、ファミリーカーの本質を体現した、そんなクルマだった。◆フィアット・ムルティプラとにかく外観のインパクトは絶大だったフィアット『ムルティプラ』。デビューは2008年のことで、直後に筆者もイタリアで試乗したことがあったが、横断歩道で信号が変わるのを待っていた街のイタリア人が目を点にして(!)驚いていたのだから、本国でもよほどユニークな存在感だったのだろう。写真のカタログは本国版だが、前の『セニック』がファミリーを意識していたのに対し、男女問わず、友人、仲間とともに楽しく乗りましょう的なトーンでまとめられているのが、いかにもイタリアらしい。外観も去ることながら、前後3座×2列のシートレイアウトが特徴で、全席がセパレートで脱着も可能ということで、さまざまな使い方ができた。床が低く荷物の積み下ろしもスムースに行なえた。ウエストラインが低く相対的に見晴らしのいい着座位置、カドの丸い快適な乗り味も特徴だった。後期型はフェイスリフトで至って普通の顔になってしまったのが惜しまれた。◆トヨタ・ノアトヨタの『ノア』(と『ヴォクシー』)は、日本の子育て世代の生活スタイルにミニバンを定着させた立役者だ。『タウンエース・ノア(ライトエース・ノア)』から生まれ変わった初代『ノア(ヴォクシー)』は、プラットフォームをFFに一新した最初のモデルで、低床、両側スライドドアなど、使い勝手をさらに高め、乗車定員も2+3+3名の8名乗りとした。カタログはご覧の通り『セニック』のそれを意識したかのような色彩感覚豊かな絵本調で、登場するファミリーには外人のモデルを起用。コピーの“ノアなら、かなう夢がある。”とともに、一新されたクルマの魅力を新たなイメージで訴求したものとなっている。バックガイドモニター、ブラインドコーナーモニターなどがすでにカタログ中で紹介されており、カーナビもG-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーションや、8型ワイドディスプレイのDVDナビなど、当時の最先端装備も紹介されている。◆日産・セレナ1991年、それまでキャブオーバー(1BOX)型だった『バネット・セレナ』に代わるモデルとして登場。前席下にエンジンが位置するレイアウトは引き継ぎ、短いボンネット(いわゆるメンテナンスリッドで、中にスペアタイヤ、バッテリー等を格納)をもつ、当時としては新しいスタイリングが特徴だった。またリヤにマルチリンク式サスペンションを採用し、多人数乗車のクルマながら安定したハンドリングでも人気を集めた。カタログだが、ヴィヴィッドな色遣いのイラストの表紙、動物の写真をあしらっている点などが前出の『セニック』に通じるものがあり、とくに表紙は当時としてはクルマのカタログらしからぬアート性を感じさせるもの。とはいえ中のページをめくっていけば、カットモデルによるシートアレンジのバリエーション紹介や装備、メカニズムの解説ページがあったりと、日本車らしいオーソドックスな内容だった。
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