◆タイヤを買うきっかけを考えてみたところ・・・安全に、そして快適に車を乗る上で、タイヤがいかに重要なものであるかということは、これまでも多くの自動車関連記事で目にしている読者も多いと思う。しかし実際にはテクニカル面に関する解説記事が多く、どのように良くて、他の商品とどうように違うのか、ピンと来ない人もきっと多くいることだろう。そこでレスポンスは、タイヤができる生産工程を少しでも知っていただくことで、タイヤへ確かな理解を促すことができるのではと考えた。タイヤ作りとは一体何にこだわり、我々コンシューマーに何を知って欲しいのか?今回はタイヤを選ぶ上で少しでもきっかけづくりになればと思い、最新鋭のタイヤ生産現場を取材。早速レポートをお届けしたい。◆驚異のタイヤメーカー、あなたはご存知か?さて、今回ご紹介するのはグローバルタイヤメーカーNEXEN TIRE (ネクセンタイヤ)だ。日本では馴染みがないブランド名だが、韓国で1942年に創業されて今年で75年を超える意外と歴史のあるタイヤメーカーだ。まずこれまでの歴史を紹介すると、あのミシュランタイヤや、オーツタイヤ(現 住友ゴム工業 FALKENブランド)と技術提携を結んでいたこともあり、製品づくりにはかなりのノウハウと生産技術を持ち、品質重視の体制を古くから布いてきたのだ。タイヤは安全で安心なドライブが当たり前のようにできなくてはならない。つまり常にハイレベルの技術力と品質が要求される製品だ。ここ数年ネクセンタイヤが高い評価を得られるようになったのも、言わずもがな最高のタイヤを作るためにハイレベルの生産工程や品質管理を維持してきたことが根底にあるからだ。今ではあのスポーツカーの最高峰でもあるポルシェにも純正供給するなど、自動車業界ではその存在感を日に日に高めている。ここ日本では2016年の豊田通商との提携から本格始動。未だ量販店でもあまり目にする機会がないかもしれないが、案の定、その評価はやはり高い。そこでレスポンスは、いかに品質を重視した商品を生産しているかを、まずはお伝えすることだと考えた。安心安全の商品を徹底管理の上生産を行い、市場に投入されているのかをご紹介したい。◆驚きの生産設備と驚きの生産本数向かったのは韓国の昌寧(チャンニョン)という町。釜山からKTX(韓国の新幹線)で東大邱(トンテグ)駅で下車し、そこから車で約30分。中部の都市大邱南部に位置するこの町は、日本の東北をイメージさせる非常に長閑な田舎町だ。ここに約61万平方メートルというサッカーコートが86面も敷けるほどの広大な敷地を持つのが、ネクセンタイヤの最新鋭工場チャンニョン工場だ。チャンニョン工場は2012年に操業を開始し、混合、製造、検査、物流までを一直線上で行い、一元管理まで賄うスーパーPEB工法を採用しており、一連の作業が効率重視の管理の下行われている。その規模は最大級でネクセンタイヤのマザープラントとしての役割を担っており、高付加価値製品を生産できる最高の生産オペレーションシステムを整えている。実はここチャンニョン工場の他に、同国内に梁山(ヤンサン)工場、中国の青島(チンタオ)工場、また今年から稼働開始したチェコのジャテツ工場を持つネクセンタイヤは、そのどの工場でもグローバル生産を行える量産体制を整えている。チャンニョン工場の生産スペックは年産本数2100万本。さらに今後は3500万本を目標とする生産計画を立てるほど、今最も勢いのあるタイヤメーカーだ。◆高品質なタイヤは人がいない工場で生まれるさて、前置きが長くなったが、この工場の驚くべき点は、作業員が見当たらないことだ。その理由は、チャンニョン工場の生産ラインはずばりフルオートメーション体制で世界に10くらいしかない「スマート工場」という位置付けだ。何がスマートなのかと言えば、製品をバーコードで管理することで、それをセンサーとカメラモニターで読み取り、無人の小型運搬車両の待機時間、運搬材料、運搬量、行き先などの一連の生産工程が全て把握。つまり人手を介さないことでミスを極力減らし、欠陥本数ゼロという目標を常に掲げているが通常ではこうはいかない。さらに、仮に欠陥製品が出てきても、RFIDとバーコードで管理されているため、発生過程を特定できるというシステムをもつことが「スマート工場」の所以だ。きっとポルシェ社もこういった先進的な生産工程を目の当たりにしてネクセンタイヤを新車装着タイヤとして承認されたのだろう。◆チャンニョン工場でのタイヤ作業工程1、精錬:ゴムの用途に応じて化学薬品を添加して混合する過程2、押出:ゴムを一定の幅と厚さに押し出す3、圧延:一定の厚さのゴムシートを均一に被覆してトッピングコードシートを生産4、ビード:スチールワイヤーにゴムを被覆して複数層に巻き付けて一つのビードを生産5、成型:タイヤのすべての構成材料を円筒形のグリーンタイヤに作る工程6、加硫:グリーンタイヤを一定の金型に入れて熱と圧力を加えて独特なデザインやゴムの弾性を与える工程7、検査:生産される全ての製品に外観検査、重量検査、バランス検査の工程8、出荷:生産された製品を自動分類して出荷する上記8つの工程を頭に入れつつ、工場内部へと進むとその大きさが次第にわかって来る。工場の端がなんとか確認できる程で実に広い。しかし工場内部には相変わらず管理員数人が適度に配置されている程度で、よく言えば本当に静か、悪く言えば活気がないという感じだろうか、まるでSF映画さながらロボットだらけの無機質な空間にいるかのようだ。◆生産本数に対して驚きの欠陥本数さて、タイヤ製造で一番重要となる成形工程へやってきた。なぜ重要なのかと言えば、無論タイヤはキレイな真円で重量もバランス良くなければならない。それを司るのが形を整えるこの成形工程だ。ここの成型工程は、一般的なタイヤ工場の設備に比べ最大2倍以上の生産能力をもつ。高度な重量計器を採用したことで、微細な重量差を検出。また選別できるだけではなく、RFID&バーコードシステムにスキャナーを通して生産履歴を追跡し、不良品を探し出し、未然に遮断することでバラつきを徹底的に無くしていくスキームだ。その後、熱と圧力を与える加硫工程を通り、タイヤにトレッドパターン(溝)が刻まれる。ここは8本のラインが稼働し、各ラインに19機ずつ、トータル152機の加硫機が配備され、ライン1本につき日産約200本、トータル日産約32,000本のタイヤが生産される。そして検査工程では。肉眼チェックと、ユニフォニティチェック(重さ、寸法、剛性の真円度)を終え、X線で異物混入がないかの細かな検査が行われる。検査を終えた後は、床に貼られた識別シールを機械が読み取とり、製品やサイズごとに仕分けされる。一般的には数十人は必要な作業だが、ここにも人はいない。そして最後は倉庫から出荷となる。と、ここまでどのような工程を経て、高い品質を保持した生産が行われているかをお伝えしてきたが、この工場で生産されるタイヤ100万本のうち、欠陥品として烙印を押されてしまうのは僅かに数十本の確率だという。これは世界の大手タイヤメーカーと比べてもおおよそ半分の成果だというからまさに驚きだ。◆スポーツ界では名スポンサーそんなネクセンタイヤがグローバルで飛躍できた要因としてもう一つあげるとすれば、積極的なスポーツマーケティングへの投資だ。ネクセンタイヤは、2015-16シーズン以来、イギリスプレミアリーグのマンチェスターシティFCと公式パートナーシップを締結している。名門チームのユニフォームの袖に描かれたロゴマークの存在感は実に大きい。このほか、韓国ではプロ野球チーム、ネクセンヒーローズやKPGA 釜山オープンを、また海外では、US FormulaDRIFT、ドイツブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルト、イタリアセリエAのS.S.C.Napoli、TORINO FC、オーストラリアのメルボルン・シティFC、チェコはアイスホッケーのBK MLADA、ニュージーランドはラグビーのチーフス、そしてトルコはバスケットボールのTOFASと、これまで多くのチームとスポンサー契約を締結してきている事実。間違いなく欧米ではその存在会を日に日に高めているのだ。サッカー好きはもちろん、きっと目にされた方も多いと思う。◆ポルシェ担当者は工場視察30分後に契約サインをしたという事実正直言えば、タイヤを生産する上での基本的な工程は、他社と大きく変わりはない。ただし、ここで理解いただきたいのは、このスーパーPEBという最新鋭の工法によって生産されたタイヤは、厳格な管理下で極めて少ない欠陥品に留め出荷されているという事実。つまり信用に値する超重要なことへは、徹底的に設備投資を行うというこのネクセンの姿勢にまずはご評価いただきたい。ポルシェの担当者はこの工場を視察するなり、30分で契約書にサインしたというのも頷ける。契約は通常10年かかると言われるほど、審査がとても厳格で知れているポルシェAG。ネクセンも優秀だが、さすがポルシェにも先見の明があったわけだ。タイヤは安全を司るもの。路面とクルマをコンタクトするのは4つのタイヤのみで、しかもその接地面積は1本につきハガキ1枚分しかない。つまりたったそれだけの面積で全てを支えている驚異的なパーツだ。だからこそ、高い水準でキチンとしっかり作られているということは極めて重要で、且つ買う側もこの点にこだわりを持ってタイヤ選びをぜひしてほしい。良いタイヤとは何か…そしてネクセンタイヤとは何者なのか!?ご理解いただけたら幸いだ。■ネクセンタイヤの製品をご覧になりたい方はこちら【動画】ネクセンタイヤ チャンニョン(昌寧)工場【動画】ネクセンタイヤ 走行性能評価センター【動画】ネクセンタイヤの歴史
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