【岩貞るみこの人道車医】「車内の音」問題、BOSEの提案に可能性を感じた | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】「車内の音」問題、BOSEの提案に可能性を感じた

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Bose Aware Signal Steering Technology 体験の様子。景色とフロントウィンドーに表示されるマークは、液晶画面で再現
  • Bose Aware Signal Steering Technology 体験の様子。景色とフロントウィンドーに表示されるマークは、液晶画面で再現
  • ヘッドレストの左右に付けられたスピーカー(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • ダッシュボードの左右にあるスピーカー(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • 音がどちら方向から聞こえてくるかを調整できる。こちらは体験会専用のもの。(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • 自転車が左から抜いていく前に、左から警告音が聞こえてくる。わかりやすい(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • Uターンするときは、表示とともに音が出る(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • 車線変更のときも同じく音と表示で教えてくれる(Bose Aware Signal Steering Technology)
  • 目的地に到着したときも、もちろん、教えてくれる(Bose Aware Signal Steering Technology)
【音】車内に響く、さまざまな音。自動運転技術がこれからもどんどこ装着されて、アラームやコーションだらけになったら、いったいどうなるのだろう。考え始めると私は心配で夜も眠れない…わけではないが、でも、こうしたHMI(Human Machine Interface)は、早いうちに調整して基準なりなんなり、人にやさしく役立つ車内音にしていってもらいたいと願っている。

さて、音といえばBOSEである。BOSEの誇るノイズ・キャンセリング機能は、飛行機のなかのゴーッという音が不快で、どうすればもっと移動が快適になるかということで開発されたと聞いている。BOSEはクルマ関連の音作りにも積極的だ。

ずーっと昔、まだバブルの残り香がぷんぷんと漂っていたころに、ノイズ・キャンセリングの理論でクルマのエンジン音を消す技術を開発し、日産車に採用されたこともある。ただ、こういう技術は乗り比べて初めてわかるもの。音が小さくなった状態で商品化されると、ユーザーに気づいてもらえないのがつらいところだ。その技術はもう、ほとんど姿を見かけない。

電気自動車や燃料電池車でエンジン音がしないクルマは、逆にタイヤのロードノイズ(タイヤが地面に当たる音)や、サイドミラーあたりの風切り音が気になるので、この音をノイズ・キャンセリング理論で打ち消してもらいたいものだが、どうやら周波数帯の関係で、これらの音は消せないんだそうだ。うーん、がっかり。

◆車内にいる「人の声だけ」を聴き分ける

私がこうして、車内の音、音、音と口うるさく言っていたところ、BOSE様が研究開発中の技術を体験する機会をくださった(いきなり敬称&敬語。だって、すごく貴重な機会だったもので)。これは今年のCES(Consumer Electronics Show。毎年、ラスベガスで開催される家電ショー)でも、こっそり発表?していたらしい。4つ、体験させてもらったのだが、私のツボにはまったのは、Bose ClearVoiceと、Bose Aware Signal Steering Technologyのふたつだ。

まず、Bose ClearVoice。これから一気に増えるであろう音声認識コマンドや、車内での、携帯電話(BlueToothで接続したハンズフリーホン状態)を使いやすくする機能である。

クルマのなかは、それこそさまざまな音が飛び交っている。カーナビはしゃべるは、音楽は鳴るわ。音声認識コマンドを使うときだって、ラジオのDJがしゃべりまくっていたら、その言葉を拾いかねない。なので、ラジオやカーナビの音と人間の生の声を、聴き分けるというシステムである。車内に響く様々な音を、まずぜんぶマイクで拾う。その中から、周波数で生の人間の声だけを抽出し、コマンドに届けるという仕組みである。

音声認識システムのデモ体験をさせていただいたが、ボリュームを上げた状態でラジオのDJの声が車内にがんがん響き渡っていても、しっかり人間の声だけを見事に拾い上げていた。すばらしい。

ラジオや音楽、カーナビの音と、生声を分けられるようになると、今度は、携帯電話でも使えるようになる。得をするのは、車内ではなく、車外にいる通話先の相手だ。うっかりクルマのなかにいる人に電話をかけると、車内に響く音楽がそのまま聞こえてきて、会話が聞き取りにくい経験をした人は多いのではないだろうか。そんなとき、このBose ClearVoiceをオンにすると、あら不思議。きれいに音楽などのほかの音は小さくなり、人の声だけが聞こえるのである。これ、いますぐにでも商品化してくれないかなあ。

◆広がる音の可能性

続いて、Bose Aware Signal Steering Technology。こちらは、ダッシュボード上の左右はじっこと、ヘッドレストの左右の耳元の合計4か所にスピーカーをつけることで、音が聞こえてくる方向を360度調整できるシステムだ。これを使えば、右後方から障害物が近づいて来たら、警告音を右方向から出すことができる。直観的に危険がせまる方向がわかるのだ。

加えて、今後、完全自動運転になったとき、いきなり右左折したりUターンしたら車内にいる人が驚く&クルマ酔いしかねないため、音の方向をデザインして、クルマの動きを事前に伝えようというのだ。自転車が左側からすり抜けていく直前に、左側から音がするし、左折するときに音で誘導されるような感覚になるので、すごくわかりやすい。音の可能性をひしひしと感じさせられる。

ただ、音がむずかしいのは、必要以上に音を出すと、わずらわしくなるということだ。私のいまのクルマも、車線変更しようウィンカーを出したとき、となりの車線に車両がいると、音とサイドミラーの小さなオレンジライトで教えてくれるブラインドスポットモニターがついているのだが、私の感覚よりも安全マージンを大きくとっているため、「大丈夫だってば!」というタイミングでも、ピピっとおせっかいにうるさく警告してくる。結局、音だけ切ってしまった。今回のシステムも、使ってもらえるレベルにするには、さらに音質、音量、タイミングなど完成度をもっと高める必要がある。

でも、音の可能性はやっぱり面白い。自動運転になって視覚から情報をとることをやめたとき、音がどんな活躍をしてくれるのか、楽しみである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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