クルマの中で良い音を聴きたいと考えたときの、もっとも人気のある作戦はズバリ、「スピーカー交換」だ。音の出口のクオリティが上がれば、聴こえてくるサウンドの質もガラリと変わる。さて…。その次には何をすると良いのだろうか。今回からスタートする当・短期集中連載では、そこのところをじっくりと解説していく。“次の一手”を実行すれば、交換したスピーカーの性能をさらに引き出すことが可能となり、カーオーディオはもっと楽しいものとなる。そのためのヒントのいろいろを、1つ1つ詳細に紹介していく。■“次の一手”を活かすためには、確実な方法で「スピーカー交換」が実施されている必要がある。なお、今回紹介していく“次の一手”はすべて、「スピーカー交換」が上手くいっていることを前提として話を進めていく。というのも、「スピーカー交換」には失敗も有り得る。確実な取り付け作業が行われていないと、性能を十分に引き出せない、という事態を招きかねないのだ。もしもそうであった場合には、“次の一手”の効果も半減する。というわけで、“次の一手”の検討に入る前にまずは、確実な取り付け作業が行われているかをご確認いただきたい。確認しておきたいポイントは以下の2点だ。1つ目として挙げるべきは、「インナーバッフルを使う」である。これは必須だと考えたい。もしも「インナーバッフル」を用いずにスピーカーユニットをドア内部の鉄板に直接取り付けてしまったならば、スピーカーユニットが駆動するときに発生する振動が鉄板に直接伝わってしまう。となると、鉄板が共振し異音が発生…、なんてことになりかねない。しかしながら「インナーバッフル」を用いれば、その可能性がぐっと引き下がる。さらにはスピーカーの足場を固める効果も発揮してくれる。スピーカーが能力を発揮出来る状況が整っていくのである。2つ目として挙げるべきは、「鉄板の不要振動を止めるための制振作業を行うこと」である。クルマのドアは、音響機器として設計されていない。であるので、スピーカーから発せられる音エネルギーによっても簡単に共振してしまう。つまりは“ビビる”わけだ。結果、異音が発生しスピーカーから放たれる音を濁らせる。それを防ぐためのメニューを、部分的な(ライトな)施工で構わないので、施しておく必要があるのだ。以上の2つを実践することで、ドア内部の音響的なコンディションを上げることが可能となる。「スピーカー交換」をした意味が高まる、という次第なのだ。■「低音強化」によって、中高音の質もさらに向上!さて、確実な手順を踏んで「スピーカー交換」が行われていた場合、その上で何をすると良いのかというと…。最初におすすめしたいのは、「低音強化」だ。クルマの中では、えてして低音が不足している。理由は主に2つある。1つはドアに装着できるスピーカーのサイズが小さいから。ドアスピーカーの口径は、基本的には17cm程度である。実はこのくらいの大きさだと、低音の再生に限界があるのだ。2つ目は「ロードノイズが発生するから」。クルマは走るための道具だ。走ればタイヤが路面を叩き、ロードノイズが発生する。このロードノイズがオーディオから放たれる音楽の低音に覆い被さり、マスキング現象が引き起こされる。しかし「低音強化」を施せば、今まで聴こえていなかった低音を再生できるようになり、マスキングされていた低音を補うことも可能となる。ちなみに、「低音強化」によって得られる効果は、場合によっては「スピーカー交換」をしたとき以上に大きくもなる。「スピーカー交換」は“音の質”を上げるための作業であるが、「低音強化」は“聴こえていなかった音を聴こえるようにする”作業だ。なかったものが出現する効果は、絶大なのだ。なお、「低音強化」の効果は、低音だけにとどまらない。中・高音の聴こえ方も変わってくる。このメカニズムは以下のとおりだ。音は、音程を決定する“基音”と、音色を決定する“倍音”とで成り立っている。そして“倍音”は、“基音”に対して整数倍の音である。例えば100Hzの基音があったとしたら、その“倍音”は200Hz、300Hz、400Hz…、という具合に、2倍、3倍の周波数となる。「低音強化」を実行すると、“基音”がしっかりと出現するので、その上に積み上がっていく“倍音”成分もしっかりと響くようになる。そもそも「スピーカー交換」によって中・高音の質が上がっているところに「低音強化」をすると、さらに中・高音の音質も上がっていくのだ。もう1ランク、スピーカーのグレードを上げたかのような結果が得られるのである。■お手軽な“次の一手”は、「パワードサブウーファーの導入」!ここからは「低音強化」の具体策を解説していく。「低音強化」のやり方は、さまざま考えられる。その中でもっとも手軽なのが、「パワードサブウーファーを導入する」、というものだ。今回はまず、この作戦について深掘りしていく。「パワードサブウーファー」とは、サブウーファーユニットとサブウーファーボックスとパワーアンプが一体化したユニットである。配線を行うだけで音を出せ、しかも“小型・薄型”を特長とする製品も多い。そのようなタイプであれば、シート下へのインストールも可能となり、取り付け費用も少なくてすむ。とはいえ、ポンと置いて終わりではないので、ある程度の取り付け費用はかかってくる。使用しているメインユニットに“サブウーファー出力”が備わっていれば、音楽信号を取り入れるための配線作業はそれほど手は掛からない。が、それが備わっていない場合は、既存のスピーカー配線から音楽信号を分岐させる作業が必要となる。さらには、電源配線も少々難易度が高い。パワーアンプがそれなりの電力を必要とするので、できればプラス側の電源はバッテリーから直に引っ張りたいのだが、これがそれほど簡単ではないのだ。「エンジンルーム」からパワーケーブルを引き回さなければならないわけで、ここが作業の難所となるのだ。また、このような方式を取る場合には、安全対策も非常に重要。パワーケーブルのしかるべきポイントにヒューズをかませ、“ショート”への対策も講じておく必要がある。その分の費用の計上は、くれぐれもお忘れなきように。製品選びにおいては、ボディの強度をチェックしておくと失敗を少なくできる。ボディが強固であると異音を発生する可能性が減るので安心感が高まる。失敗する可能性が減る、というわけだ。今回の解説は以上で終了だ。「スピーカー」交換がおすみならば、“次の一手”としてぜひぜひ「低音強化」をご検討いただきたい。カーオーディオがさらに楽しくなることウケアイだ。次回はこれに引き続いて、「低音強化」の上級プランを紹介していく。お楽しみに。