【岩貞るみこの人道車医】「一人負け」状態のタクシー業界が激変する可能性 | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】「一人負け」状態のタクシー業界が激変する可能性

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トヨタが東京モーターショー会場に展示した JPN TAXI(ジャパンタクシー)。業界変革のきっかけとなるか。
  • トヨタが東京モーターショー会場に展示した JPN TAXI(ジャパンタクシー)。業界変革のきっかけとなるか。
  • トヨタ JPN TAXI(ジャパンタクシー)(東京モーターショー2017)
  • スマート・ビジョンEQフォーツー(東京モーターショー2017)
  • アウディの自動運転車コンセプト、エレーヌ(東京モーターショー2017)
  • 日産の自動運転車コンセプト、IMxコンセプト(東京モーターショー2017)
  • トヨタとの提携が発表されたウーバー(Uber)
  • トヨタ ジャパンタクシー T-コネクト ナビ装着状態イメージ
  • タクシー(イメージ)
【車】東京モーターショーで聞かれた「コネクテッド」

第45回東京モーターショーが開会した。一般公開日に先立って行われたプレスデーの10月25日は、各メーカーのトップクラスがスピーチを行ったのだが、繰り返し聞こえてきたのは「コネクテッド」という言葉である。

トヨタは「コネクテッドとビッグデータ」と言い、メルセデスは以前から「CASE」をキーワードとして挙げており、今回も強調していた。CASEとは、コネクト(Connect)、自動運転(Autonomous driving)、シェア&サービス(Shared& Services)、電気自動車(Electric)の略。自動運転はあくまでも未来のクルマ社会を作る一部でしかなく、この4つの要素がバランスしながら組み合わさることで変わっていくという。

また、興味深かったのは、各社とも、電気自動車(Electric)ではなく電動化(Electrify、Electrified)という言葉を積極的に使っていたことだ。英国が2040年からガソリンやディーゼルエンジン販売を禁止するというけれど、世の中が一気に電気自動車に代わることはあり得ない。英国と同じようにフランスも2040年から電気自動車オンリーか! と、騒がれたけれど、ドイツと同じように自動車産業を持つフランスは冷静に「電動化」を望んでおり、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池への代替を求めている。今後は、電動化技術が秘める可能性、そして開発の激化が予想される。

◆なぜタクシー業界は「一人負け」なのか

これからのクルマの使い方を語る上で、出てくるシステムのひとつにカーシェアがある。自分で保有することなく、使いたいときにだけ使う。もしもそれが、自動運転になれば、自ら運転しなくても目的地に行けるようになる。自分の家まで迎えにきてくれ、目的地まで運んでくれる。いいよね、それ。便利だよね。さらに目的地についたら、クルマはそのまま走り去ってくれるから、駐車することも、駐車場を探したり駐車料金を払う必要もない。そして、また乗りたいときは呼び出せば、やってきてくれる…すごーい、便利。早くそうなればいいのにって盛り上がるけれど、でも、それってつまり、今あるタクシーと同じなのでは?

たしかに今のタクシーは「自然人(法律用語ではそういうらしい。システムに対して、人間ってことで)」が運転しているものの、でも、ほぼ理想形の形であるにもかかわらず、タクシーの利用者数は減り続けている。国交省「国内旅客輸送量の推移」によると、2005年を基準の100とすると、2014年時点での全体は104、鉄道旅客は108、2008年のリーマンショック以降、大きく落ち込んだ航空も101までV字回復を遂げている。たしかに乗り合いバスはじり貧気味ではあるものの、それでも97当たりを死守している。ところがタクシーは72まで落ち込んでいるのだ。一人負けと言ってもいいような状態なのである(数字はだいたいの目安)。

目的の前まで運んでくれる、行きたいときに運んでくれる。未来の理想図に一番近い乗り物なのに、なぜここまで嫌われるのか?

◆ITとの組み合わせで激変できる

正直なところ、私もタクシーが苦手な一人だ。横柄な運転手さんに当たるのではないか。目的地までいくらかかるかわからない。運転手さんの運転が下手。地方都市にいくと、シートベルトのバックルが隠されているのは言語道断。そう思うと結局、ちょっと不便だけれど、公共交通機関があるときは、そちらを使ってしまう。だって、気分的に楽なんだもの。それに安いし。

だけど、もし、そうしたネガティブがなくなったら? 自動運転になれば、横柄な運転手さんはいなくなる。運転も優劣はなくなる。シートベルトのバックルを隠す人もいなくなるだろうし。おそらく金額も、事前にわかるようになり(ロンドンタクシーのように)、乗ってからメータが上がるたびに、冷や冷やすることもなくなるだろう。あら、それなら乗ってもいいかも。そう考えると、タクシーと自動運転のカーシェアは、似ていて非なるものなのかもしれない。

もちろん、タクシー業界も手をこまねいて見ているわけではない。タクシー配車アプリの登場で、IT化が進み始めたのだ。日本交通が作ったアプリ「全国タクシー」を活用している知人によると、客が運転手さんを評価できる機能があるため、対応がものすごくよくなったそうだ。データを収集して、どの時間帯にどのあたりに客が多いのかわかるため、その地域に集めることもできるし、ビッグデータを使っていけば利便性はさらに上がる。今後は、目的地までの料金を事前に知らせるサービスも行うとこのことで(国交省と調整中)、かなり私のなかのネガは解消されると思われる。

東京モーターショーの直前に、トヨタが「JPN TAXI」を発売した。広く乗りやすい車両。さらに、コネクテッドとビッグデータ。ITとの組み合わせで、タクシーサービスは、ここから激変できる可能性がある。個人ユースの自動運転車両。まだまだ先の未来だけれど、カーシェア&サービスのベースとなるシステムは、タクシー業界にあると思う。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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