東京都品川区に、カーコーティング関連商品の販売などを行うディーキュアという会社がある。ここではコーティング剤の新たな活用方法が模索され、日々商品開発が続けられている。同社の鈴木昇代表が見据えているのはコーティングの未来だ。“今後、コーティングが必要とされるモノは?” そんな自問自答を繰り返しながら、新たなニーズの発見・拡大に全力を尽くしている。◆「多くの人が気軽に、施工できるような手助け」コーティングに対する愛情とも言える思いが、次々と言葉として発される。時には歴史をヒモ解きながら。また時には今後の業界の予測を打ち立てながら。小さなビンに詰められた液剤が持つ可能性が、ふんだんに語られた。「コーティングは素晴らしいもの。だから多くの人が気軽に、いろいろなものに施工できるような手助けをしていきたい」胸に秘める、こんな想いを実現することが鈴木代表の目的だ。スマートフォンやカバン、靴など、現在コーティング剤の利用対象は広がりを見せている。鈴木代表のもとにも、ガラスのショーケースやエレベーターのボタン、さらにはマージャンパイなどさまざまな施工の話が舞い込んでくるそうだ。「本来コーティングを必要としているモノが、まだまだ世の中にはあるはず。しかし、それに気づいていないというケースが多い。いまは発想にないものの中にも、今後(コーティング施工の)ニーズが出てくるものがある」。そんな考えが日々の研究の原動力となっている。◆可能性を感じさせるゴルフクラブへの施工ニーズを模索する毎日。情報を集め、研究を重ねるなかで、鈴木代表が目を付けたのが『ゴルフクラブ』だった。大衆スポーツの代表格として愛好家が多いゴルフ。その上達には技術だけでなく道具も重要な要素といわれている。キズが多いクラブの表面に液剤を塗布し平らにすることで、余計なスピンがかからなくなり、飛距離が伸びるというロジックが成り立つ。実際に鈴木代表の耳には「コーティングをしたことで20ヤードほど飛距離が伸びた」という喜びの声も届いている。そういった声の一つひとつがニーズを“作り上げられる”という確信に繋がった。手応えを感じながら、今後のさらなる展開ももくろんでいる。◆ビジネスのきっかけはひょんな一言から20年以上コーティング関連のビジネスに従事している鈴木代表が、クルマ以外のものに目を向けるようになったのは、あるネイリストからのこんな相談がきっかけだった。「ネイルにコーティング剤を塗ったら長持ちする?」人体で、しかも口に近づける機会も多い部分ということもあり、仕事に発展することはない話だったが、この何気ない一言が「これまでまったく考えていなかったところにもビジネスは転がっている」という実感を鈴木代表に与えたのだ。◆コーティング剤がクルマ以外に転用されるのは「当然」「もともとコーティングは、家の外壁などに施されていたもので、それがたまたまクルマに取り入れられるようになっただけ。だからクルマ以外のものに行くのは当然の流れだと思います」そう鈴木代表は語った。クルマという源流から生み出されたのがコーティング剤なのではない。コーティング剤という大きな流れが行き着いた場所の一つがクルマだったのだ。クルマで利用されるという流れは、あくまでも“小川”の一つでしかない。では、鈴木代表が言う“当然の流れ”は、今後どこに流れ込んで行くのだろうか?いつの時代もニーズを探り、そしてそのニーズを拡大することが新たなビジネスにつながってきた。コーティングが持つ可能性をフルに発揮させるため、鈴木代表は今日も思いをめぐらせる。「えっ…? これにコーティングするの?」今はそう言われるもののなかにも、確実にコーティングを必要とするものがあると信じて。
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