世界的なスピーカーブランドであるフランス発「FOCAL」から、満を持してカー用プロセッサーが発売となる。その名は『FSP-8』。発売開始日は5月15日だ。それに先立ち、当機を搭載したデモカーが完成したという知らせが、4月某日、編集部のもとに届けられた。この話題のニューモデルの実力を知るべく、早速の試聴取材を申し込み、実施が叶った。そのテストの模様を、詳細にリポートしていく。■最新プロセッサー『FSP-8』を用いながらも、システムは合理的な仕様。まずは、デモカーのプロフィールをご紹介しよう。製作したのは「FOCAL(フォーカル)」の正規輸入代理店である「BEWITH(ビーウィズ)」だ。ベース車両は「メルセデス-ベンツ・Cクラス ステーションワゴン」。搭載されているカーオーディオシステムは、以下のような構成となっている。メインユニットは純正オーディオだ。そのスピーカー出力を『FOCAL・FSP-8』の“ハイローコンバーター”が内蔵されているアナログ入力で受けている。なおこのアナログ入力は、最大5.1chに対応していて、それをプロセッサー内でデジタルミキシングすることも可能としている。採用されているパワーアンプはイタリアの実力ブランド、「PHD」のハイグレードモデル『ART-4085 J-Model』(税抜価格:15万円)。なお当パワーアンプは4chモデルだ。その2ch分の出力でフロントスピーカーが鳴らされて、残りの2chを使ってサブウーファーが鳴らされている。ちなみに言うと、単体プロセッサーを使う場合、フロント2ウェイスピーカーの1つ1つにパワーアンプの1chずつをあてがう“マルチアンプシステム”が取られることが多い。その場合はフロント2ウェイが4ch制御されるわけだが、このデモカーでは敢えて、フロント2ウェイを2chでコントロールしている。その理由は、システムを大がかりにしないためだ。このクルマは、『FSP-8』をハイエンド的に運用することをデモするのではなく(『DSP-8』もその名のとおり、最大8chを個別にコントロールすることが可能だ)、合理的なシステムでいかに高音質が得られるかを示すことがメイン・コンセプトなのである。さて、スピーカーは何かというと、こちらも「FOCAL」の話題作である、『PS80F for MB』(税抜価格:8万円)。「BEWITH」が日本の「メルセデス-ベンツ Cクラス」オーナーのために特別に用意した、純正スピーカーからの交換を合理的に行えるスペシャルキットだ。スピーカーにプラスして、スピーカーの性能を引き出すための車種専用の音響パーツ類も同梱されている。しかしながらサブウーファーには、純正スピーカーが活用されている。それに送り込まれる音楽信号は、『FSP-8』で制御されたものであるが、ここでも合理的なシステム構築が目指された、というわけだ。■最新機種ならではの気配りが行き届き、操作性はなかなかに快適。ここからはいよいよ、インプレッション・リポートへと入っていく。まずは操作性からお伝えしていく。ところで、当機『FSP-8』の価格は税抜で11万円。本格的な機能を備え、かつ192kh/24bitのハイレゾ音源にも対応する先進的なモデルでありながらこの価格というのは、比較的リーズナブルと言っていい。もっとも別売の専用リモートコントローラー『FSP-8 REMOTE CONTROL』(税抜価格:3万円)が必要なので、実質は14万円であるが、それでもまだ、本格的なプロセッサーの中では手頃な部類に収まっている。そのリモートコントローラーだが、これがなかなかに使いやすかった。ある程度項目は絞り込まれてはいるものの、あったらうれしい機能が集約されている。ボリュームに加え、ソースチェンジ、サブウーファーコントロール、プリセットチェンジ、ミュートまでが1つのボタンで行えるのだ。なお、チューニング操作はPCで行うのだが(WindowsXP以上のPCにて対応。Mac OSには非対応)、それについても、最新モデルならではの気配りが行き届いている。プロセッサーとPCをケーブルで繋ぐと、煩わしい設定や呼び出しを行う必要がなく、簡単にプロセッサーにアクセスできる。各調整機能の立ち上げも直感的に行える。ユニークなのは『ソロミュート機能』だ。例えば、左のトゥイーターだけから音を出したいとき、通常ならばその他のスピーカーを1つ1つミュートしていくことになるのだが、当機能ではワンタッチで左のトゥイーター以外をミュートできるのだ。つまり、ソリストを指定するとそれ以外のパートが演奏するのを止める、というわけなのだ。相当に便利だと思うのだが、いかがだろうか。■音質を追求し最新テクノロジーを多々搭載。結果、良好な再現性を十二分に発揮。さて、問題は音だ。続いてはサウンドインプレッションをリポートしていく。テストトラックを流し始めてまず感じたことは、低音の質の良さだった。純正ウーファーを活用していると聞いて、正直多くを期待しなかったのだが、意外や意外、量感はしっかりと確保されていて、しかしだぶついた感じは皆無。程良くタイトで密度感もなかなかだ。その理由を訊ねるとやはり、調整の妙、とのことだった。クロスオーバー、イコライザー、そしてタイムアライメントを適正に操ることで、質感を向上させ、フロントスピーカーとのサウンドの一体感も高められている。中高域のクリアさ、1音1音の粒立ちの良さにも、さすがは「FOCAL」と唸らされた。そして、キレイではあるけれど、それだけではないところにも“らしさ”を感じた。艶やかでありながらも音に芯があり、エネルギー感もある。スピーカーとパワーアンプの力でもあるのだが、それらのポテンシャルを『FSP-8』が十二分に引き出せていることも確かだろう。さらには、ステレオイメージの再現性の高さも光っていたが、この部分に関しては特に、『FSP-8』の実力によるところが大きいだろう。これこそがプロセッサーを足して得られる最大のメリットであるからだ。ちなみに、『FSP-8』には音質追求のための最新テクノロジーがいくつか搭載されている。例えば、マスタークロックには、一般的に用いられる水晶発振子(クリスタル)ではなく、より温度特性に優れ、かつ発振偏差の小さい専用のオシレータを採用しており、また、音質特性に優れたシーラスロジック社(米)のAD/DAコンバーターも採用されている。これらが確実に功を奏し、解像度、情報量がともに高められ、立体感の表現力が増しているのだろう。■魅力的な製品が居並ぶプロセッサー市場で、光を放つ存在になることは、間違いない。ところで実は、このクルマにはもう1つ、スペシャルユニットが搭載されている。それは「BEWITH」製のハイエンドメインユニット、『MM-1DT/6』(税抜価格:31万円)だ。当機をソースユニットとするサウンドも合わせて聴いてきたが、いやはや、こちらではさらに解像度、情報量が引き上げられていた。音と静寂との分離がよりはっきりとして、1音1音の存在感も高められている。そしてダイナミックレンジが上がり、抑揚も増しているので、楽曲の説得力、感動力も高められている。『MM-1DT/6』と『FSP-8』は、光ケーブルで接続されており、信号の純度が上がることで再現性のレベルが引き上げられることを、まざまざと見せつけられた。さて、手軽なスピーカーキットを合理的なアプローチで鳴らしていた、この「メルセデス-ベンツ・Cクラス ステーションワゴン」。その中にあっても、新プロセッサー『FSP-8』の実力の高さを、十二分に感じ取ることができた。そしてその結果が良かっただけに、ハイエンドシステムで当機の実力がどこまで発揮されるのかについても、大いに期待が膨らんだ。それについてはまた改めて、ぜひともテストをしたいと思う。単体プロセッサー市場は今、各社から注目作が続々と登場し、ホットなジャンルとなっている。この『FOCAL・FSP-8』はその中にあって、キラリと光を放つ存在となることは間違いなさそうだ。人とは違う、そして最新機種ならではの使い心地が得られるプロセッサーをお探しならば、当機を要チェック。
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