スピーカー交換について、チョイスのしかたから使い方までを、毎回テーマを定めながらご紹介してきた。その7回目となる今回は、スピーカーレイアウトについて考えてみる。つまりは「2ウェイか、3ウェイか」がテーマだ。じっくりとお読みいただきたい。今回の講師役は、香川県の実力ショップ、サウンドステージの藤川さんにお願いした。では早速、本題に入っていこう。■“3ウェイ”は、音を良くしたいと考えたときの、最後の手段。まず最初に、“3ウェイ”とは、カーオーディオにおいてどのような存在であるのかからお訊きした。藤川「“3ウェイ”は、“最後の伸びシロ”だと考えています。カーオーディオを始めたら、まずはインナーでスピーカーを取り付けて、もっと音を良くしたいとなったら次はアウターバッフルにトライして、その後さらに音を変えたいと思ったときに、最後の手段として“3ウェイ”があると思うんです。最初からここを目指さなくてもいいと思うんです。カーオーディオをいろいろと楽しんだ後に、それでももっと良い音がほしいとなったときに初めて、取り組めばいいのではないでしょうか。そう考える最大の理由は、コストですね。プロセッサーでコントロールしなければ、“3ウェイ”の利点は活きてきません。基本的には、“マルチアンプシステム”を組むことが前提となります。となると、パワーアンプのch数も、ケーブルの本数もより多くを必要としますから、コストが膨らんでしまいます。音的には“3ウェイ”のほうが高音質を狙えるのは確かです。しかし、システムは大がかりになりますから。その意味でも、最後の手段だと考えるのが良いと思うんです」■使っている「2ウェイ」スピーカーに、タイプの合いそうなミッドレンジをアドオン。続いては、“3ウェイ”の構築方法についてお訊きした。藤川「やはり、同一メーカーの同一シリーズのスピーカーで3ウェイを構成するのが理想です。振動板の素材もそろっているほうが、サウンドがまとまりやすいのは事実です。とはいえ、必ずしも同一メーカー、同一シリーズでなければいけない、というものでもないと、私は思っています。お使いの“2ウェイ”スピーカーにミッドレンジ(スコーカー)の設定がない、というケースも、往々にして有り得ます。そんなときに、スピーカーを買い替えるのは大変です。使っているスピーカーのままで、まずは“3ウェイ”化に取り組んでみてはいかがでしょうか。ショップと相談して、タイプが合いそうなミッドレンジを探して、とりあえず“3ウェイ”を試してみる、というアプローチをされても面白いと思うんです。実際のところは、振動板の素材や構造等々よりも、サウンドチューニングの善し悪しのほうが音への影響は大きいんですよ。ですから、チューニング次第で、ある程度まとめ上げることは可能です。スピーカーの買い替えを前提とする必要はないと思います」■“2ウェイ”スピーカーの状況を把握して、弱点をミッドレンジで補う。そのチューニングについてもお訊きした。“3ウェイ”のサウンドを、藤川さんはどのように造り上げているのだろうか。藤川「当店では、最初にトゥイーターの担当範囲の見極めから行います。トゥイーターは低い帯域まで出そうとすると、反射の影響も大きくなっていきます。なので、あまり下までは引っ張らないほうがいいと思うんです。まずは反射の影響がどのあたりから出てくるかを見極めて、トゥイーターの担当範囲を定めるようにしています。“3ウェイ”では特に、トゥイーターの担当範囲は広くはしていないですね。その次には、ミッドウーファーがどこまで使えるかを見定めます。測定機を使って、特性が乱れない範囲を確認します。このようにして、トゥイーターとミッドウーファーを負担なく鳴らせる範囲を把握した上で、その間のところをミッドレンジに受け持たせるようにしています。ミッドレンジに広い範囲を担当させるのか、狭い範囲にとどめるのかは、最初から決めつけないようにしています。“2ウェイ”スピーカーをしっかり鳴らすことを考えて、そして、“2ウェイ”スピーカーのどこに弱点があるのかを探った上で、そこをミッドレンジに補ってもらう、というアプローチです。使っている“2ウェイ”スピーカーの性能と、どのような取り付け方をしているか、それらによって、ミッドレンジにさせたい担当範囲が変わってきます。その都度、ベストが変わってくるんですよ。それをしっかりと見極めることが、“3ウェイ”の良さを引き出すコツだと考えています」いかがだったろうか。やはり、究極を目指すならば、“3ウェイ”にアドバンテージがあることは間違いなさそうだ。しかし、ハードルが高いことも事実なので、コツコツとシステムを成長させていって、最後の最後に挑戦する、ということでも良さそうだ。ご参考にしていただきたい。さて次回は、フロントスピーカーの攻略法の最後として、スピーカーケーブルについてじっくりと考えていく。お楽しみに。