カーオーディオの音を良くしようと思ったら、「サウンドチューニング」機能を上手く操れるか否かがカギとなる。それを自在に行えたなら、カーオーディオ・ライフは一層充実するはずだ。詳細な調整はプロショップに任せつつ、それとは別に、自分でも積極的に楽しみたい。その心得を、プロに取材し、ご紹介している。第2回目となる今回は、イース・コーポレーションの尾前政光副社長にご協力いただき、主に審査用CDの使い方をお訊きしてきた。尾前さんは「日本カーオーディオ競技協会」の理事も務めていて、世界的なサウンド・コンペティションである『EMMA(エマ)』と『IASCA(アイアスカ)』の公認ジャッジでもある。これらサウンドコンペで使われているCDがどのようなものなのか、そしてそれをどのように活用すると普段の「サウンドチューニング」に役立てられるのかを、じっくりと訊いてきた。■審査用CDには、調整に適した楽曲や、確認に適した音源が収められている。まずは『EMMA』の審査用CDがどのようなものなのかを教えていただいた。尾前「最新のものは『EMMA CD 2016/2017』というタイトルです。これに収められている各トラックを使って審査が行われるのですが、競技とは関係なく、普段のサウンドチューニングにおいても、確認用CDとして、とても役に立つと思います。各楽曲は、サンプラーやシンセサイザーが使用されておらず、生楽器のみで演奏されていますので、音のイメージがつかみやすいと思います。しかも、録音時の楽器の配置や録音場所、そして録音方法の解説も付いているので、各楽器がどこに位置しているか等を理解した上で調整が行えます。特殊なトラックも収められています。まず、トラック3からトラック7までは、音が、レフト、レフトセンター、センター、ライトセンター、ライト、計5か所から順番に聴こえてきます。しかも、トラックが進んでいくごとに、音像が小さくなっていきます。これらのトラックを再生することで、フォーカスがしっかり合っているか、音像の大きさを描き分けられているかがチェックできます。そしてトラック8は、音像が左右へと移動する音源となっていて、音像が途中で途切れることなくスムーズに移動していくか、最初から最後まで高さを保ったまま移動するかを確認できます。調整が上手くいっていないと、音像が移動する際に高さや移動スピードが変化したりします。これはNGです。右一杯まで動いたときでも、一定の高さがキープされていれば正解です。トラック10では、奥行き表現が適切に行えているかをチェックできます。この楽曲は、3つの楽器で演奏されているのですが、この3つの楽器はそれぞれ、マイクからの距離が異なっています。近くにある楽器と、遠くにある楽器、その中間にある楽器、というような位置関係となっています。合奏のときでも、ソロのときでも、奥行き方向のポジションを正確に再現できればOKです。ところで最近は、周波数特性を測定できるスマホアプリがありますが、それを使って測定するには“ピンクノイズ”が必要です。このCDには“ピンクノイズ”も入っていますので、測定アプリを使う際にも役に立ちますね」■自分の好きな音楽を気持ち良く聴けるように、という観点で進めるのもアリ。続いて、『IASCA』の審査CDについても解説していただいた。尾前「こちらのCDではまず、トラック2と3で、左右のch接続が正しく行われているか、プラスとマイナスの接続が正しいか否かをテストできます。そしてそれ以後のトラックでは、音色の正確性や、ステージング、イメージングの正確性をチェックすることが可能です。また『IASCA CD』でも、楽曲については、楽器の配置と録音場所等の解説が付録していますから、ステージング、イメージングの確認を的確に行うことができますね。さらには、音量が小さいとき、音量が大きいとき、それぞれで全体のバランスが崩れることなく再生できるかどうかをチェックするトラックも入っています。また、ノイズが出ていないかを確認するための、“完全無音”のトラックも入っています。『IASCA CD』は、楽曲がバラエティに富んでいることも特長です。オーケストラ、合唱、アコースティックジャズ、さらにはテクノやロック、ポップスまで。それぞれ、カーオーディオシステムをチェックするために厳選されているトラックですので、どれも普段の調整に便利に使えると思います」最後に、サウンドチューニングのコツもお訊きした。尾前「コンペ用の調整ではなく、普段聴きのための調整においては、自分が気持ち良いと思える音かどうかが重要です。好きな音楽が気持ちよく聴けるように、という観点で調整していくこともアリだと思います。ですので、自分のよく聴いている楽曲も、調整用トラックに加えましょう。その上で、調整のためのトラックも自分なりに用意しておくとさらに良いのではないでしょうか。私の場合は、低音の調整がしやすい低音が強調された楽曲や、中高域の確認がしやすい楽曲なども用意してあります。基本的には、アコースティック楽器で演奏されている楽曲のほうが、調整には向いていますね。集中が長く続くのであれば、長時間取り組んでもいいとは思うのですが、時々は耳を休めて、気持ちをリフレッシュさせながら進めていくといいのではないでしょうか。くれぐれも、楽しみながらやっていただきたいですね」いかがだったろうか。「サウンドチューニング」を楽しみながら、そして的確に行えるようになるためには、チューニング用の音源選びにも気を使ってみると良さそうだ。自分の好きな曲の中から、低音が調整しやすいもの、高音が調整しやすいもの、楽器の位置がわかりやすいもの等々を、張り切って厳選してみよう。なお、『EMMA CD 2016/2017』、『IASCA CD』ともに、3500円(税抜)で販売されている。ご興味があれば、お近くのカーオーディオ・プロショップ、もしくはイース・コーポレーションまでお問い合わせを。