年末年始の読み物「期待外れの車」シリーズ。ディスるわけではありません。その車が誕生した時、ユーザーや関係者の期待は大きかったものの、名車になれなかった“惜しい”モデルを紹介していきます。筆者はおなじみ岩貞るみこさん。私がここで敢えて書くまでもなく、日産『スカイライン』V35型(2001年)の名前が表示されただけで、多くの読者がうなずき、ため息をもらしていることだろう。なんだよ、このでぶ!用語の説明をしておくと、私は、ふっくらと愛らしい体つきは、敬意と愛情をもって「おでぶ」という。だって、ふくよかな人もクルマもぬいぐるみも可愛いもん。しかし、単に怠惰と自己啓発意識の低さからくる体型は、「でぶ」だ。スカイラインという英語を、改めて考えたい。地平線。空と山や建物などの境界線。冬の季節、青い空を背に白い山々がくっきりと広がるスカイラインの美しいことといったらない。夕景になると、オレンジの空に、黒いシルエットが浮かび上がり、心に染み入る情景へと変化する。じーん。ときには私、涙するくらいきれいな風景だ。だというのに、このV35型の佇まいにその感情の一万分の一でも感じる要素があるだろうか。スカイラインという名前を、すぐにでも変えていただきたい。いや、それよりも、これまでスカイラインというクルマが作り続けてきた思いや伝統を微塵も感じさせないデザイン。日産は、このでぶなクルマに、スカイラインと名づけることに反対意見はなかったのだろうか。いや、きっとあったんだろうな。ないはずがない。でも、ゴーン勢力に押し切られてしまったのだろう。当時の日産は、そういう状況だったはずだ。ほんとうに残念でならない。営業に魂を売ることなく、思いのこもったクルマを作り続けるためには、安定した業績を維持していかなければならないという見本のような感じだ。スカイライン、好きだったのにな。私が免許をとったころは、肉食男子がぶいぶい乗り回していて、シフトレバーの持ちかたひとつとってもそれぞれクセがあって憧れたのに。四灯のテールランプを見かけるたびに、心躍らせ、脈拍数を上げていたのに。形あるものいつかはなくなるし、人気もいずれは終わる。でも、こんなカタチで自ら終わらせなくてもいいじゃん、と、いまも思っている。