【VW ザ・ビートル デューン 試乗】デューンバギーの面影はないけれど…中村孝仁 | CAR CARE PLUS

【VW ザ・ビートル デューン 試乗】デューンバギーの面影はないけれど…中村孝仁

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VW ザ・ビートル デューン
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そもそも、“Dune”が何を意味するか。「砂丘」である。しかし、その砂丘に込められたVWの意図を理解する読者は既に少なくなっているかもしれない。

1968年、あのスティーブ・マックィーンが主演した映画、「華麗なる賭け」の中で、マックィーンが砂丘を乗り回したモデルがデューンバギー。何を隠そう、当時の「ビートル」のメカニカルコンポーネンツにグラスファイバーの軽妙なオープンボディをかぶせたモデルで、それ自体VWが販売したわけではない。デューンバギーの生みの親はブルース・メイヤーズ(Bruce Meyers)という人で、今もサザン・カリフォルニア在住の人だそうだが、彼が作り上げたメイヤー・マンクスという乗り物こそ、スティーブ・マックィーンが映画で乗り回したデューンバギーだったのである。

そんなデューンバギーのイメージで作り上げられた限定モデルがこの『ザ・ビートルデューン』なのであって、名前の由来はここにある。VWではザ・ビートル初のクロスオーバーモデルと謳っているが、その訴求に関しては個人的にかなり抵抗がある。そもそも、単に車高を上げてそれらしいドレスアップをすればクロスオーバーと呼べるのか、という点だ。VWはクロス○○が好きだから、それならDuneではなくてクロス・ビートルにすればよかったのに…とケチをつけたくなる。でも、あのデューンバギーとは似ても似つかなくても、Duneの名を得たザ・ビートルは可愛い。

既存ビートルからの変更点といえば、エクステリアはサンドストームイエローメタリックと呼ばれる砂丘をイメージしたカラーリング。これにフェンダーを縁取るブラックモールディングや、フロントのアンダーガード付きバンパー、リアデフューザーなどが特徴で、18インチタイヤを装着したボディは、専用サスペンションで車高が15mm高いからすぐに気が付くほど顕著にノーマルビートルとは異なる。18インチホイールはビートルターボでも使用しているからこれが初めてというわけではないが、やはり見た目にはだいぶ大きい。

さてエンジンスタート…といって一瞬迷った。元々このクルマは『ゴルフV』のプラットフォームを使ったクルマで、アクセサリー類もそれに準じていたはず。キーシリンダーにキ―を挿して回すエンジンスタートだったはずなのに、いつの間にやらスターターボタン式になっていた。乗っていなかった証拠である。気を取り直してエンジンスタートだ。

搭載エンジンは最新の『ゴルフGTE』と同じで、150psの1.4リットルTSIが搭載されている。電気モーターはないが回生機能は装備している。ビートルには105psの1.2リットルと211psの2リットルしか用意されていないかったので、その間を埋める丁度良いエンジンが用意された。

+15mmの専用サスペンションは、車高を上げると同時に快適性を増しているように感じられた。少なくともドイツ車にありがちだった比較的強めのハーシュネスを感じさせないどころか、非常にマイルドな乗り心地を示す。装着タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ3。見た目は結構ごつごつした印象を与える外観だが、見ると乗るとでは大違いだ。古いトーションビームのサスペンションを持つにしては上出来の乗り心地である。

インテリアも外観同様サンドストームイエローメタリックで塗られたインパネを持ち、メーター類も黄色い帯がデザインされたもので、徹底した砂丘イメージ。こちらも専用デザインというシートもなかなか快適だ。一応スポーツシートということだが、横方向のサポート性能はあまり期待しない方が良い。

このクルマに乗っていつも一番困るのが、乗降性の悪さ。大きなドアはちゃんと開けば開口面積は大きいのだが、身長160cmで、シートを前に出すポジションを取っていると、ドアは重いし乗降スペースは狭いしで、結局シートを一番後ろまで下げて乗り降りすることになる。恐らく女性ドライバーで似たような経験をした人は少なくないと思う。もっともこれは小さな要素で、そもそもビートルに興味を持つユーザーは圧倒的にそのデザインに惚れて買うはずだから、外見で特徴を出したDune に関心を示すユーザーは多いと思う。因みに販売は限定500台である。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来38年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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