スズキが『イグニス』に次いで投入した登録車の『バレーノ』は、日本の自動車メーカーとして初めてインド製のクルマを輸入したことで話題になった。外国製の日本車の輸入はもはや珍しいことではないが、新興国製のクルマとなるとタイ製の『マーチ』や『ミラージュ』に次ぐものだ。マーチやミラージュが見るからに安っぽいクルマだったため、バレーノについても懸念する向きがあったが、取りあえず見た目の品質などには問題がないようだ。ボディパネルの合わせ目や内装の“シボ”など、日本製のクルマと変わらないような印象である。クルマは長く使う商品なので、見た目の品質だけでなく耐久品質も問題なのだが、インドのサプライヤーから供給される部品などの耐久品質については、判断するのに時間を要する。バレーノは全長が4mを切るコンパクトなクルマでありながら、全幅が1745mmもあるので3ナンバー車として登録される。日本の常識とは異なる世界基準(ヨーロッパ基準)で開発されたクルマであるからだ。全幅は広いが最小回転半径は4.9mに抑えられ、使い勝手は悪くない。搭載エンジンは2機種。3気筒1.0リットルターボが6速ATと組み合わされ、自然吸気の4気筒1.2リットルが副変速機付きのCVTと組み合わされている。ブースタージェットと呼ぶ1.0リットルターボは82kW/160Nmの動力性能を発生する。1トンを切る軽量ボディに自然吸気エンジンでいえば1.6リットル並のトルクだから、走りに関しては不満はない。けっこうというか、十分に良く走るクルマである。ただ、3気筒エンジンの振動が残っていて、アイドリングなど中に3気筒であることを感じさせられるシーンがあった。スズキ車にはISGを使ったアイドリングストップ機構の採用例があるのだから、バレーノでも燃費を向上させてエコカー減税に適合させるためや、停車中の不快な振動を消すことも含めてISGを採用すべきだったと思う。またこのエンジンはヨーロッパ向けの仕様をそのままで輸入したと見えて、プレミアムガソリン仕様である。当然ながら日本向けにはレギュラーガソリン仕様にすべきである。こうしたことを考えると、バレーノでは1.2リットルエンジンを搭載した「XG」を選ぶ方が良いように思う。自然吸気なので動力性能は67kW/118Nmとやや控えめな数字になるが、日常シーンの走りをなんなくこなす実力である。XGは上級グレードの「XT」に対し、エンジンと装備の差によって20万円ほど安い140万円台前半の価格が設定されている。この価格でありながら、ヨーロッパ向けのクルマであることが幸いして、ミリ波レーダー方式のアダプティブ・クルーズコントロールが標準装備されるのも良い点だ。同時にヨーロッパ向けのクルマであることが災いして、先進緊急ブレーキにミリ波レーダー方式で人間を見分けないタイプのレーダーブレーキサポートIIが採用されている。クルマが歩行者や自転車に乗った老人を死なせる事例が多い日本の交通事情を考えると、人間を見分けるタイプの先進緊急ブレーキが欲しい。バレーノはインド製のクルマであることに問題はないが、ヨーロッパ向けの仕様をそのままで販売しようとする日本軽視の問題点がいろいろとあった。最近は多くの日系自動車メーカーが、世界を見て日本を見なくなる傾向を強めているが、スズキにはもっと国内市場をしっかりと見据え、国内市場に重きを置いたクルマ作りを徹底してほしいと思う。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
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