【池原照雄の単眼複眼】海外比率が最高の3分の2に…15年度の日本車生産 | CAR CARE PLUS

【池原照雄の単眼複眼】海外比率が最高の3分の2に…15年度の日本車生産

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14年1月に稼働したマツダのメキシコ工場
  • 14年1月に稼働したマツダのメキシコ工場
  • トヨタ九州宮田工場(写真はレクサスNX)
◆グローバル生産は4年連続最高の2749万台

日本自動車工業会による日本メーカーの自動車海外生産統計は、これまで当該月から4か月後に公表されていたが2015年度分から2か月スピードアップされた。ということで、明かになった15年度の実績を国内生産と比較してみると、最高を更新中の海外生産比率は66.6%だった。ちょうど3台のうち2台が海外となったわけだ。一部メーカーで国内回帰の動きも見られるが、日本車の成長力のベクトルは今後も外に向かう。

自工会の統計による15年度の日本車の生産は、グローバルで前年度比1.2%増の2749万台となり、12年度から4年連続で過去最高を更新した。世界の新車市場に占めるシェアはおよそ3割で、国別では今世紀初頭からトップを維持している。

◆07年度の「内外逆転」から海外が加速

15年度の内外別の内訳は、国内が4.2%減の919万台と2年連続の減少となったものの、海外は4.2%増の1830万台で、10年度から6年連続の最高を記録した。国内はリーマンショック後の09年度から、1000万台の大台ラインを割り込んだまま。一方の海外も同年度はマイナスになったものの、10年度から増加に転じ、12年度から15年度までは毎年100万台きざみでの大台更新が続くという対照的な動きになっている。

◎日本車の国内外生産推移
年度 国内 / 海外
2010 899万台 / 1366万台
2011 927万台 / 1382万台
2012 955万台 / 1589万台
2013 991万台 / 1687万台
2014 959万台 / 1757万台
2015 919万台 / 1830万台

日本車生産の「内外逆転」が起きたのは07年度なので、そう古くはない。だが、そこからは(1)中国をはじめとする新興国市場の台頭、(2)日本の国内需要の鈍化、(3)リーマンショック後の円高の進行---といった複合要因で、頭打ちの国内を尻目に海外の拡大が進んできた。その結果、総生産における海外比率も12年度(62.4%)からは毎年最高を更新しており、15年度に内外が1対2の比率となる66.6%に達した。2000年度にはほぼ逆の構成比だったので、この間の日本メーカーによる海外進出の加速ぶりがうかがえる。

◆国内生産ラインを死守、海外拡充に持続的成長を

15年度の海外生産を地域別に見ると、最大の生産地はアジアであり、960万台(前年度比5%増)と日本を上回る水準に拡大した。次いで米国とカナダを合わせた北米が493万台(3%増)だった。これらに続く“第3極”として拡大を続けているのが、メキシコを抱える中南米で、15年度は9%増の184万台と、日本車の海外生産では最も高い伸びを確保した。

メキシコでトップシェアをもち、能力増を着々と進める日産自動車に続き、14年からはマツダとホンダが相次いで新工場の操業に踏み切った。更にトヨタ自動車も19年に年産20万台の能力をもつ新工場を稼働させる計画だ。

トヨタは13年以降に世界での工場新設を凍結、「意思ある踊り場」(豊田章男社長)として、モデルチェンジに伴う投資や新設工場投資での画期的な削減策などを研究してきた。 15年春には凍結を解き、研究成果を反映した海外新鋭工場の投資計画を順次、発表している。メキシコのほか、中国での新ライン(年10万台・17年稼働)や老朽ラインの更新(同・18年稼働)、さらにマレーシアでの新工場(5万台・19年稼働)などだ。同社の工場投資再開が、日本車の海外生産拡大をけん引していく構図となっている。

一方で自動車各社にとって国内の生産拠点は、競争力の源泉である生産方式や生産技術を生み出す「マザー工場」でもある。技術開発には一定量の生産確保が欠かせず、トヨタは年300万台、日産は同100万台という国内生産の“防衛ライン”を設定している。業界全体では足元の生産実績である900万台規模がそのラインだ。日本メーカーは現状の国内ボリュームを死守しながら、海外での生産拡充に成長の持続力を求めていくことになる。
《池原照雄》

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