今年で9回目となる「いいクルマアワード」の表彰式が2月26日、東京ビッグサイトで開催中の第22回 国際オートアフターマーケットEXPO2025の会場に隣接するレストランにて行われ、特別賞にはトヨタ『ランドクルーザーシリーズ』が選出された。
◆世界で評価され続けているランドクルーザーの歴史
「いいクルマアワード」は自動車の修理・整備・販売・買取り等に携わる方(アフターマーケット事業者)の視点で、「いいクルマ」を選び、表彰させて頂くアワードで、メーカー(製造側)視点ではなく、アフターマーケット事業者がプロの視点で「いいクルマ」を選ぶことにより、一般ユーザーにとっては非常に興味深くまた参考になる結果として注目されている。

2025の特別賞に輝いたのはトヨタが世界に誇るヘビーデューティモデルの300・250・70とラインアップしているランドクルーザーシリーズ。表彰式ではランドクルーザー250のプロダクトチーフデザイナーを務め、現在は先進技術開発カンパニー 先進デザイン開発室長の渡辺義人氏が登壇した。
表彰式のプレゼンターであるオートアフターマーケット連絡協議会の(リビルド工業会全国連合会 会長)の深澤広司理事より、賞状とトロフィーが手渡された。
ランドクルーザーシリーズは「コストパフォーマンスの高さ」、「リセールバリュー」の高さなどが評価された。海外では日本の3~5倍で取引されていることを考えれば、国内の価格はお得であると考える方も多く、海外価格の高さ、つまりは需要の多さが国内での中古車価格を下支えしている傾向があり、新車の生産が追いついておらず、国内でも程度のいい中古車を高額で購入するため、値下がりしづらいという面もリセールバリューのよさにつながっていることなども総合的に評価されている
その中でランドクルーザー250は角張ったデザインが大きなフォルムに憧れやアウトドア志向、高い耐久性、豊富な社外パーツによるカスタマイズのしやすさ、そうした自由さがありながらもトヨタ車だという安心感があることも理由として取り上げられている。
渡辺氏はデザイナーであるがランドクルーザー250については商品企画から携わってきているというとのことなので、全体の話も含めてお話を伺った。
---:ランドクルーザー250の開発にあたっては原点回帰というキーワードが使われたそうですが、具体的にはどんなことなのでしょうか?
「原点回帰ということをどう解釈したらいいのだろう? ということでずいぶん悩みました。ランドクルーザーシリーズはユーザー層の幅が広いモデルです。250は世界170以上の国と地域で売られていますし、ランドクルーザーという視点でみると300・250・70と3つのシリーズがあります。そのようにかなり幅が広いので、それぞれのシリーズの役割を明確化しようということになったのです」
---:そうすると250はどのような立ち位置になるのでしょうか?
「まずランドクルーザーがなくては困る。なくさないでくれ、という要望が多くの国であります。これはとくに70シリーズについてそういう要望が多いのです。われわれも70の存命にいろいろと力を注いでいますが、基本設計がもう40年も前のクルマですから、環境問題をはじめとしてさまざまな規制に対応していくのがどんどん難しくなってきます。つまり70だけでは生き残れないので、現代のお客様からみた原点ということを実現したのが250なのです。今は70で対応できていても、この先どこまでできるだろうというが大きな課題です」
---:ランドクルーザーシリーズは海外での引き合いが多く、下取り価格、買取価格が下がらないのも大きな魅力ということを評価している方も多いのですが、やはりそうなのでしょうか?
「250はまだそういう状況ではありませんが、これまでのランドクルーザーだと日本で10年使われて、それがアジアに輸出されて10年。そこからアフリカに渡ってさらに20年とかいう話は当たり前のようになっています。そういうロングスパンのなかでも、何とか使い続けていただけるクルマにしたいという思いもありました。もうこうなってくると商売というより義務になってきますね。ランクルやっている人間は、かなり義務というか使命感が強いです。もうランクルがないと困るという話があって何をどうやって生き残らせようかとなるわけです」
---:そうした義務感や使命感を持ってクルマを開発できるというのは、本当に素晴らしいことだと思います。
「ありがとうございます。ご存じのように現代では環境規制などがいろいろあるなかで、フレーム付きの車は非常に厳しいのです。ほかのメーカーもだいぶフレーム付きではなくなってきましたので、われわれが止めることはイコールこれを必要としている地域の人の生活が成り立たないということなのです。ですのでなんとかしぶとくやってこうという想いでやっていますね。」
---:世界では思いもよらないような使い方をしていることもあるのでしょうね。
「先日、100カ国以上の現地を回ってきた方と話をする機会があったのですが、ビックリする使い方をしている例を聞きました。ランクルのバンパーに魚の網を引っ掛けてですね、岸から底引き網みたいに引っ張って漁をして生計を立ててらっしゃる方とかがいるというんですよ。ほぼ毎日海で使っているけど大丈夫だとか、すごい話を聞きます」
---:やはりアフリカなどが一番厳しいのでしょうか?
「一番となるとなんとも言えません。暑いのも厳しいですし、寒いのもそれはそれで厳しい。もちろん仕向け地によって仕様は変わっているのですが、できるだけ同じ仕様でお届けしたいと思って作っています。現地ですと、かなり皆さん改造されるんですね。フレーム付きの車って改造しやすいですよね。たとえば後ろをピックアップに変えてしまったりすることはよくあります。ある意味われわれが完璧に仕上げすぎないで、お客様がいろいろ自分の好みというか、生活に合わせていろいろ変えていただきやすいクルマということもある程度考えて作っています」
---:日本でクルマを見ている私達からすると、改造しやすいトヨタ車って多分すごく少ない気がしますね。
「日本ではあまり大きな改造はされませんが、小さいところで言うと日本のアフターマーケットでもいろいろ皆さんですでに対応いただいてます。担当した250はバンパーを分割バンパーにして、ほっぺたの部分と下の部分とバラバラに交換できるようするなど、いろいろ遊んでいただけるような作りにしていますし、ライトも角形と丸形を選べるなどしています」
---:トヨタがそういうチャレンジングなことをされているのは、昔のトヨタを知っている世代からするとかなりビックリです。これからも楽しいクルマ作りを期待しています。本日はどうもありがとうございました。