盗れないクルマは無い!? 多発する車両盗難、危機的な現状を知る(前編) | CAR CARE PLUS

盗れないクルマは無い!? 多発する車両盗難、危機的な現状を知る(前編)

特集記事 コラム
盗れないクルマは無い!? 多発する車両盗難、危機的な現状を知る~セキュリティ企画:前編~
  • 盗れないクルマは無い!? 多発する車両盗難、危機的な現状を知る~セキュリティ企画:前編~
  • ロックナットのアダプターを無くしたときに使用する特殊工具
  • 物理キーを紛失したときに使用して解錠するツール
  • 隠された部分、暗くても鮮明に確認出来るスコープは数千円で手軽に入手できる

近年、車両盗難が話題に上ることが多い。それに合わせて自己防衛のためのセキュリティシステムも注目されている。しかしセキュリティはブラックボックス化されていて分かり難いのは事実。そこで今回から短期連載でセキュリティについて紹介していくこととした。

セキュリティシステムは車両盗難などから愛車を守るための機器なのはご存じの通り、ただし防犯機器という性格上システムや取り付け過程の詳細を開示することは難しい。そのためシステムがどんなものなのかを詳しく知っているユーザーは少ないだろう。これがセキュリティを遠い存在にしてしまっている理由のひとつだと考えた編集部では、セキュリティの基本知識をまずは知って、愛車の防衛をあらためて考えるきっかけになればと、できる限りの情報を紹介することとした。

今回は純正で取り付けられているセキュリティシステムとはどんなものなのか、さらにその効果は、加えてアフターでセキュリティシステムを取り付けることがどのような意味を持つのかまでを解説していくこととした。そこで創業以来25年に渡ってセキュリティシステムを取り付けてきたプロショップであるサウンドステーション クァンタムに伺って、代表の土屋氏にプロの目から見た純正セキュリティについて解説してもらった。

◆増えている車両盗難に“純正セキュリティシステム”は対応出来ているのか?

近年クルマの多くには純正のセキュリティシステムが装着されている。しかし結論から言うと車両盗難や車上荒らしへの対策としては不十分な部分も多いのも事実のようだ。

純正セキュリティとして装備されているもののひとつがイモビライザーだ。これは車両と純正キー(スマートキーなど)の電子的なカギ(ID)が一致することで、初めてエンジンの始動が可能になるというセキュリティ。かつてはキーと言えば物理的な鍵だけだったが、イモビライザーはいわば電子の鍵なのだ。そのためドアのカギがこじ開けられるなどして車内に侵入された場合でも、車両側とIDが一致する純正キーがないとエンジンのクランキングができない仕組みになっている。この機能を持つことで車両盗難を防いでいるのだ。

「ただし、近年の窃盗犯は手口も高度化・巧妙化しています。キーの複製やキーを新たに登録してユーザーになりすます手口も存在します。その結果、偽造したキーを使ってエンジン始動を可能にすることもできるのです。そうすれば自由にクルマを動かすことができるので大変危険です」

もうひとつ装備されていることが多いのがセキュリティアラームだ。無理矢理ドアを開けられるなど、車両の異常を検知するとクラクションやブザー、別体ホーンなどが鳴動する仕組みのセキュリティだ。ピッキングで解錠されるなど正規なリモコンキー以外で解錠された場合には鳴動することになる。

「しかし、純正のセキュリティアラームは純正のキーを使えば止めることができるのです。先にも紹介した通り、純正のスマートキーなどを複製する窃盗犯の手口がすでに存在します。この偽造キーを使えば簡単にアラームを止めることができてしまうんです」

◆盗難手段が高度化していることでユーザー側の自衛が本格的に必要となってくる

ここまでの説明を見ると純正セキュリティの落とし穴が見えてきたのではないだろうか? つまり純正キーが複製されてしまうと純正セキュリティはほぼ無効化されてしまうということ。

すでに窃盗犯の手口として知られているコードグラバーやゲームボーイ、イモビカッターなど、さまざまな手口で純正キーの複製や、新規登録する方法が存在する。スマートキーが複製されてしまうと純正キーと同じと見なされるので、車両側からすれば正規のユーザーが解錠して車両に乗り込みエンジンを始動しているようにしか認識しないのだ。これらの手口に遭遇してしまうと、純正セキュリティが無効化されてしまうことも想定しておく必要がある。

そして厄介なのが盗難に使われている機器は“車両整備用機器”に分類されている事が大半で、誰でもアクセス出来る場所で販売されている物も多々存在する。いま一番危険視されているのがゲームボーイと言われる端末で、1台あたり約500万円という金額を確認出来た。そして恐ろしい事に2024年データへバージョンアップ済みとなっており、最新車種の大半に対応出来ているようだ。本来の用途としてはスマートキーを全て無くしてしまった時に使う機器のはずだが、使い方次第で悪い方向に利用されてしまうのが現状だ。作業自体も数分で完了して走り出せるそうで、離れた場所でスマートキーを複製すれば通常の使い方と同様な状態に出来るようだ。

◆純正で守り切れない部分をカバーするのがアフターセキュリティの役目

「つまり、純正セキュリティの限界は、すべての基準が純正キーにあることです。これが複製されてしまうと純正セキュリティは意味を失うのです。また純正セキュリティの多くは振動などに対しての機能を備えていません。そのためガラスを外したり割ったりした上での車上荒らしには効果を発揮しません。輸入車の一部には傾斜センサーを備えているモデルもありますが、こちらも純正キーで解除できるのでイモビライザーなどと同じくキーの複製に遭ってしまうと効果を発揮できなくなるのです」

では、どうすれば愛車を守ることができるのだろう? ここまで読んできた読者なら察しが付いているだろうが、万が一純正キーを複製されても愛車を守るためには、純正セキュリティとは別に純正キーでは解除できない別のセキュリティシステムを構築する必要がある。つまりアフターのセキュリティシステムの設置だ。

ここまで読んで純正セキュリティだけでは安心できないことがわかった読者にはアフターで取り付けるセキュリティの必要性がより強く感じられたことだろう。しかし、次の疑問はどんなアフターのセキュリティシステムを選べば良いのか? ではないだろうか。セキュリティは詳細が開示されていない場合も多い、そのため比較検討するにも要素が少ないのは事実。そこで次回の後編では、そんなセキュリティ導入予備軍の皆さんにアフターで設置するセキュリティの選び方や有効性などについて紹介して行くこととする。ムダ無く自分に最適なセキュリティを設置する方法や費用などについても紹介する予定だ。

盗れないクルマは無い!? 多発する車両盗難、危機的な現状を知る~セキュリティ企画:前編~

《土田康弘》

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