サーキット走行をする人やハードなチューニングカーに使われる、大容量オイルパンやオイルパンバッフルと呼ばれるパーツ。どういった意味や効果があり、どんな使い方をする人に有効なのか。
◆車種によって変わってくるオイルパンの容量
まず大容量オイルパンとはその名の通り、オイルパンに溜まるオイルの量を増やしてある構造のもの。そもそも国産車ではシルビアなどに使われた2LターボエンジンのSR20DETでオイル容量は3.5L程度。AE86で知られる4A-Gエンジンでも同じ3.5L程度のオイルが使われている。対する欧州車ではその倍以上のオイルが使われていることが多い。メルセデス・ベンツやポルシェでは10L近くオイルが入るモデルも多い。
排気量も異なるが全体的に日本車はエンジンオイルの容量が少ない。これは長時間高速移動が多い欧州車はオイル油温の安定化やオイル性能の劣化を防ぐなどの意味で、オイル容量が多くエンジン設計がされていると思われる。
◆オイルパンを大容量化すると何が変わるのか?
国産車でサーキット走行などするとエンジンオイル油温が高くなることがある。そこでオイルクーラーの装着となるのだが、そもそものオイル量を増やすチューニングもある。それが大容量オイルパンの装着だ。エンジン内を循環するオイルの量を増やすことで油温は必然的に上がりにくくなる。たくさんの水をお湯にするほうが時間が掛かるのと同じ理屈である。温度が上がりにくくなればオイルの劣化も防げるので、オイル交換ライフを伸ばしたりもできるのだ。
そこでオイルパンが左右に広がったりした大容量オイルパンに交換となる。とくにデメリットも無いが、気をつけたいのはきちんとしたメーカーのものを使うこと。SR20用など海外製の粗悪品が流通している。見た目には日本製のものにそっくりで遥かに安価に購入できるが、シリンダーとの間の面が出ていなくてオイル漏れが止まらないとか、内部の構造が良くなくてオイルが片寄ってしまってきちんと吸えないなどのトラブルが起きやすいという。
オイルパンチューニングといえばバッフルを入れるチューニングもある。こちらは純正オイルパンに追加するか、専用のバッフル付きオイルパンを取り付けるチューニングだ。
エンジンオイルは常にオイルパンからポンプで組み上げてエンジンの各部に供給されている。これがサーキット走行などで強い前後左右のGが掛かるとオイルがオイルパン内部の片側に片寄ってしまい、中心部にあるストレーナーがオイルを吸い上げられなくなってしまう。そうなるとエンジン内部にオイルが供給されず、油膜切れを起こしてエンジンブローに繋がってしまう。
いきなりエンジンブローはしなくとも、少しずつダメージが蓄積されていき、あるときクランクメタルがカジッてしまって異音が発生してしまうのだ。そういったトラブルを防ぐために開発されたのがオイルパンバッフル。これはオイルが偏らないようにオイルパン内部に取り付けるプレート。ただストレーナーを囲むだけではバッフルの外側に行ったオイルが内側に入れなくなってしまうので、ゴム製のバルブを付けたりしてオイルが中心部から逃げにくく、でも入ってこれるように設計しているものもある。
車種にもよるがサーキット走行を行うならオイルパンバッフルは保険の意味でも付けていても良いパーツ。しかし、気をつけたいのはこちらもきちんとしたメーカーのものを使うことが重要。一歩間違うとむしろオイルストレーナー付近にオイルが来なくなるようなものもネットオークションでは見かける。実際良かれとオイルパンバッフルを取り付けたが、メーカー不明のものをネットショッピングで購入し、その後エンジンブローという例もある。
きちんと走行中にどうオイルが動いているかを検証した上で設計することが必要で、そういった検証がされている大手メーカーの信頼性の高いものを選んでもらいたい。ワンメイクレースのGR86/BRZ Cupでは信頼できるメーカーのものを認定部品としているので、そういったものも参考にしてもらいたい。