カーオーディオ機器の交換や追加に興味を持っていろいろと調べてみると、専門用語を度々目にする。当連載ではそれらの意味を1つずつ解説している。現在は「音の良さ」について説明しようとするときに使われるワードに焦点を当てている。
◆同じ音が複数のスピーカーから聴こえてくるとき「位相」が合うか否かが問題となる!?
当回では、「位相」というワードについて深掘りしていく。当ワードは重要度が高いがゆえにこれまでも折に触れて説明してきたが、改めて詳しく解説したい。
オーディオ装置にて音楽を再生しようとするとき、「位相」の管理はホームオーディオとカーオーディオのどちらにおいても非常に重要だ。
では、まずは「位相」とは何なのかを説明しよう。「位相」とは、「音波のタイミング」だとイメージしてほしい。音は目には見えないけれど、空気中を上下動を繰り返しながら前に進んでいく。静かな水面に石を投げ入れると波紋ができるが、それと同じような動きを空気中にて行っている。
で、この「位相」は、同じ音が2つのスピーカーから聴こえてくるときに問題となる。つまり音楽をたった1つのスピーカーだけで再生している場合には、「位相」は問題にならない。なぜならば「位相がズレる」ことがないからだ。しかし、同じ音が2つのスピーカーから聴こえてくるとき、「音波のタイミング」がズレるとサウンドのパワー感が減衰する等の問題が起きてしまうのだ。
◆左右のスピーカーから聴こえてくるボーカルの音の「音波のタイミング」がズレると…。
で、ステレオを再生する場合には、ミニマムなシステムであっても左右に1つずつのスピーカーを立てることとなり、そうすると「位相がズレる」という問題が起こり得てくる。
ステレオでは演奏を左右のchに分けて録音することになるわけだが、左右のスピーカーから聴こえてくる音はまったく別々の音ではない。例えばボーカルのようにセンターに定位する音は、左右のスピーカーからほぼ同じ音量で聴こえてくる。
またステージの左端に位置するような楽器でも、左右の音量差が「10対0」になるケースは少なく、「9対1」というように左側から聴こえてくる音量の方が圧倒的に大きかったとしても、右のスピーカーからも少量ながらその楽器の音が聴こえてくる。
そのとき、左のスピーカーから聴こえてくる音と右のスピーカーから聴こえてくる音の「音波のタイミング」がズレてしまうと、パワー感や説得力が損なわれてしまうのだ。
ちなみに、スピーカーケーブルのプラスとマイナスを逆に接続すると、「位相」が180度ひっくり返る。なので時間があればホームオーディオのスピーカーケーブルの片側だけを、逆に接続してみてほしい。そうすると「位相」が裏返るとどんな聴こえ方になるのかを確認できる。
◆ツイーターとミッドウーファー間でも、「位相合わせ」が至極重要に!
そして「マルチウェイスピーカー」を使用する場合には、一層「位相」が合うか合わないかが問題となる。例えば「2ウェイスピーカー」の場合、ツイーターとミッドウーファー間では「クロスポイント(信号を高音と中低音とに分割する境目)」付近の帯域の音は、ツイーターとミッドウーファーの両方から聴こえてくる。となると、それぞれの「音波のタイミング」が合わないと、サウンドのパワー感が出なくなる。
なおカーオーディオではツイーターとミッドウーファーの取り付け位置が異なるので、「位相」がズレやすい。なのでカーオーディオでは、ホームオーディオ以上に「位相」の管理が重要になるのだ。
ところでスピーカーケーブルのプラスとマイナスを逆に繋ぐと「位相」が反転すると説明したが、「クロスオーバー」を調整する際の「スロープ」という項目の設定を変えることでも「位相」が90度ずつズレていく。なので実際のサウンドチューニングにおいては、「スロープ」を変更して電気的に「位相」をズラして合うように整えていくことになる。または、「プロセッサー」の中には「位相」をほぼバリアブルに変更できる機種があり、そうであればその機能を使うことでも「位相」を整えられる。
今回は以上だ。次回からは新たな章に突入する。乞うご期待。