2024年3月には東京の臨海都心でEVのフォーミュラーカーによるレースが開催される。ジャパンモビリティショー2023の特設会場で10月28日、フォーミュラEのデモランが行われた。
フォーミュラEは電気自動車のレーシングカーによるレース。2030年には新車販売をすべてEVにする計画を立てている東京都が、音が静かで排気ガスも出ないゼロエミッションカーによるフォーミュラEシリーズを誘致した。国産勢では唯一日産が古くからエントリーしている。
◆市街地で開催しやすいレース
爆音もせずオイルの焼けるにおいもしないレースは味気ないという意見もあるが、キュルキュルとモーター(+インバーター)の音だけで異次元の加速をするレースは、エンジン車とちがった駆け引きもあり見ごたえがある。騒音や排ガスの問題が少ないため、市街地や公道で開催しやすいのも特徴だ。遠方のサーキットにいかなくても地元の道路がコースになり気軽に観戦できる。
デモランには東京都の潮田勉副知事と日産自動車の星野朝子副社長が参加した。潮田副知事は、「サスティナブルな都市である東京都として、排ガスがでない車でレースが開催できることをうれしく思う。このエリアでフォーミュラーカーがレースを行うことを想像するとわくわくする」と来年3月の本レースに期待を寄せる。
星野副社長は「日産が長く取り組んでいる電気自動車、その最高峰のレースが東京で見られることはとてもうれしい。10年以上前から世界で『リーフ』を地道に販売してきた。フォーミュラE参加は当然として社内でも自然に決まった。レース参加は、日産の電気自動車技術をさらに磨きをかけた意義のあるもの」とフォーミュラEの目的と意義を強調した。
なおMCを務めたサッシャさんもEVオーナーで、仕事がら早朝出発、深夜帰宅が珍しくないがEVだと近所に気にせず車が使えてよいとコメントしていた。
◆最大出力は250kW、最高速度は280km/h
デモランは「NISSAN LEAF NISMO RC」の走行から始まった。ドライバーはGT500でNiterra MOTUL Z(3号車)を駆る千代勝正選手。この車はリーフのモーターを前後に搭載した車両。フォーミュラEの日産チームの赤いカラーリングが施されたモデルだ。コースは東京ビッグサイト東ホールの外にある駐車場の一部に設けられたエリア。あまり広いエリアではないが、ラジコンカーのように加速するリーフは敷地を縦横に走る。前後の2モーターの4WDであるためか、ほとんどテールスライドせず鋭角ターンをしていく。短い直線で瞬時に加速し、コーナーでしっかり減速できるのもEVならではだろう。
そして日産チームのフォーミュラEの出番だ。ドライバーは同じくGT500の3号車の高星明誠選手。デモランの車両は「Gen2」と呼ばれるもの。車両重量はレギュレーションで900kg(ドライバー含む)以上。リア駆動モーターの最大出力は250kW(335HP)。トルクは400Nm以上と言われている。最高速度は280km/h。同じコースでデモランを行うが、あきらかに直線の加速が違う。LEAF NISMO RCも0~100km/hが3.4秒と相当早いのだが、フォーミュラEはさらに速い。トルクも大きくリアをスライドさせる走りも見せてくれた。
◆東京レースのコース発表
来2024年のフォーミュラEで走る車両は「Gen3」と呼ばれ、スペックは大幅に進化したモデルだ。全長などサイズはGen2より小さくなり最低重量は840kg(ドライバー含む)だ。モーターの最大出力は350kW(470HP)まで引き上げられる。トルクも600Nmに達すると予想される。回生電力を600kWとしエネルギー回生を40%以上とするため、フロントに250kWのモーターをもう1台搭載する。
デモ走行に先立つ10月25日、フォーミュラE 2024 Tokyo E-Prixのコースが発表された。デモランの特設会場となった駐車場エリアにピットが設けられ、ビッグサイト東棟周辺の公道も利用するおよそ2.6kmのコースだ。ターン(コーナー)は全部で18か所。Gen3のモンスターマシンがここを駆け抜けるのは2024年3月30日の予定だ。