ダイハツ『ミゼット』、スバル『360』、トヨタ『パブリカ』…。館内に1歩足を踏み入れると、懐かしき昭和の車が所狭しと詰め込まれた異空間にタイムスリップ。
モノづくりで知られる新潟県三条市にある、そんな元気のあった頃の日本に出会える「KYOWAクラシックカー&ライフステーション」がSNSなどで話題となっている。
実はここ、工場だったところ。1960年代に創業した共和工業の跡地である。三条市の経済は、17世紀に始まる鍛冶から後に金物業に発展、今も県下有数の工業都市となっている。同社も長年、自動車関連部品の金型設計や製造に携わってきた。その先代社長が社員にモノづくりへの誇りを感じてほしいと、自社が携わった自動車の収集から始まったのがルーツ。それが近年の移転にともない、空きが生まれた旧工場をクラシックカーなどの展示施設として一般に公開しているのだ。
3階建ての建物は、工場だっただけに大きくて広い。1階に展示されているのは、「国産車の誕生」として、日産の基礎を築いた1933年式オースチン『セブン』や、その流れをくむ1938年式ダットサン『17TC』、日野が仏ルノーとライセンス生産をした1953年式日野『ルノー』、英国ルーツ社とのノックダウンによるいすゞ乗用車の第1号『ヒルマンミンクス』(1955年)、3輪車の初代ダイハツ『ミゼット』(1957年)などがずらり。
型削り盤やフライス盤といった共和工業を支えてきた機械もそのままに残されており、これだけでも見ごたえ十分。これらを見学しつつ進むと、「昭和を駆け抜けた名車、クルマ編」へ。昭和30年代から40年代にかけての国産車がメインで、スバル『360』や三菱『ミニカ』、ホンダ『T360』といった360cc時代の軽自動車から、三菱『コルト600』、トヨタ『パブリカ700』、『カローラ1100』、日産『サニー1000』、スバル『1000』、マツダ『ファミリア800』などの大衆車、そして日産『プレジデント』、『グロリア』、トヨタ『クラウン1500』、『センチュリー』などの高級車がぎっしりと展示される。
もともと事業がらみで取集した車が中心となっているため、ハデなスポーツカーなどはなく、当時どこにでもあったようなオート三輪や軽トラ、ライトバン、ファミリーカーがメインというのが特徴だ。こういった普段使いの車の残存数は少なく、かえって貴重なコレクションとなっている。しかも、触れていいというのもここならではだろう。ドアを開けてドライバーズシートに座る、なんてこともできる。さらに、ナンバーを取得しているマツダ『コスモスポーツ』やトヨタ『スポーツ800』、ホンダ『S800』、『CBX400F』のエンジンをかけることができ、さらに試乗体験できるというのもこの施設ならではだ。
さて、2階から3階へと移動すると「自転車~バイクの歴史」「昭和の名車、バイク編」となり、富士産業『ラビットスクーター』、ホンダ『スーパーカブ』、ヤマハ『YA-1』に、東唱『エコー』、ツバサ工業『ファルコンGC』などといった希少な2輪車も。さらには農機具、電化製品、カメラなどと、昭和に限らず、明治から高度経済成長期にかけてのあらゆる日本の遺産が無数に詰め込まれていて、たっぷり1日かけても見切れないほどの収蔵品の数々である。
「ここにある車やバイクをはじめ展示物は基本的に手を触れることができます。先人の知恵が詰まったモノづくりを、実際に体感して伝承してほしいからです」。そう語るのは責任者の松井義敬さん。単に古いものを展示するだけではなく、”体験”できるというのが肝だ。このところはSNSや動画サイトで取り上げられることも多くなったそうで、オジサンのみならず小学生の常連さんも足しげく通っているという。
また、9月11日には同施設が主催し三条市が共催する、20世紀までの2輪&4輪を対象とした「20世紀ミーティング2022秋季」が開催(ミズベリング三条内の特設会場等)される予定。
KYOWAクラシックカー&ライフステーション
TEL0256-34-4440/090-2182-4387
E-mail kyowaclassiccar@gmail.com 松井義敬