今年は梅雨明けが例年より大幅に早かったこともあり、連日の猛暑が続いている。そんな猛暑の中のドライブで欠かせないもの…それが「カーエアコン」だ。
1980年代まではオプションでの後付けが主流だったカーエアコンだが、今やどのメーカーのクルマでもほぼ標準装備となっており、高効率化・多機能化が進み、その構造はより複雑なものになっている。そこで今回は、暑い夏のドライブの頼もしい味方「カーエアコン」について、その構造や知っておくべき使い方のコツ、夏場に多いトラブル対処法などについてまとめてみた。真夏のドライブが少しでも快適になれば幸いだ。
カーエアコンの基本的な構造を知る
エンジンを掛け、エアコンスイッチを押すと、ひんやりとした冷気が出てくるカーエアコンだが、その仕組みはどうなっているのか。まずはカーエアコンの内部構造と使用されている主な構成部品についてご紹介したい。
◆コンプレッサー
エアコンガスを圧縮する圧縮ポンプの役割を果たす装置。エンジンに取り付けられており、ベルト駆動でエンジン回転により回る。
◆コンデンサー
圧縮されたエアコンガスを冷やして液化する装置。車の前面などに取り付けられている。
◆レシーバードライヤー
コンデンサーによって液化されたエアコンガスを一時的に蓄えておくタンクで、この中で冷媒の不純物や水分が取り除かれる。
◆エキスパンションバルブ
エバポレーターの入口に取り付けられており、液化されたエアコンガスが通る際に液状から霧状の気体に変化し、噴射される。
◆エバポレーター
車内のダッシュボード内部などに取り付けられており、気化したエアコンガスが熱を奪いながら通過して行くことで、冷却され冷風が出る。
【カーエアコンから冷風が出るまで】※1~5の繰り返し
1.エアコンガスをコンプレッサーで圧縮し、コンデンサーで液化
2.レシーバー&ドライヤーで不純物や水分などを除去
3.液状になったエアコンガスをエキスパンションバルブで量を調整させ、エバポレーターへ噴射
4.エバポレーターでエアコンガスを蒸発させ、気化熱の冷却によりエバポレーターを冷やす。
5.冷えたエバポレーターにエアコンフィルターを通ったきれいな空気が通ることにより、室内にきれいで冷たい空気が吹き出し口から出てくる
車内の温度を早く下げたい!そんな時は?
連日の猛暑で日中の車内の温度は50度を超えてしまうこともある。特に小さい子どもなどを乗せる場合、早く車内を冷やしたい!というドライバーも多いのではないだろうか。そんな時、どの方法が最も車内の気温を下げられるのかという検証をJAF(日本自動車連盟)が行っている。
JAFの検証では、同じ車を5台用意し、温度計を運転席と助手席の中央、乗員の顔の高さに設置し、車内温度が55度になったタイミングで「ドアの開閉(5回)」「冷却スプレーの噴射(10秒)」「エアコンの外気導入」「エアコンの内気循環」「エアコン(外気導入)+窓開け走行→窓を閉め、エアコンの内気循環」の5種類の方法で温度を下げるテストを行い、温度変化の測定を行っている。
結果は、エアコンを使用しない「ドアの開閉(5回)」では車内温度は47.5度までにしか下がらず、「冷却スプレーの噴射(10秒」でも3分後に50.1度までしか下がらなかった。一方で、エアコンを使用した3パターンのうち、最も温度が下がったのは「エアコンの内気循環」で10分後に27.5度、「エアコンの外気導入」は10分後に29.5度、「エアコンの外気導入+窓開け走行→窓を閉め、エアコンの内気循環」で5分後に28.0度まで低下したという。
検証結果としては、窓を全開にしてエアコンを外気導入にして走り出し、車内の熱気を出したら窓を閉め、内気循環にして冷やすことが最も効率的であることが分かる。真夏の炎天下に車を停めていた際は、ぜひお試しを。
内気循環と外気導入の使い分け
カーエアコンには「外気導入」と「内気循環」という2つのモードがある。前述のJAFの検証にもある通り、それぞれの機能を理解した上で使い分けをすることで、カーエアコンは最大限の力を発揮すると言っても過言ではない。
外気導入は、その名の通り“外気を取り入れて車内を換気したい時”に使うものだ。理化学研究所の検証によれば、外気導入の風量は、窓を閉め切った車内でも通常モード(最大風量の半分)なら1時間に40回程度 (1.5分に1回)の換気が達成されているため、コロナ禍の現在、エアコンで外気を取り入れた上で、マスクを着けることが感染予防では重要だと発表されている。
一方で、内気循環は“車内の空気を循環させ、外気が入ることをある程度抑える”役割がある。例えば、トンネル内など外気が汚れている場面や臭うときに使うと良い。また、前述のJAFの検証にもある通り、車内温度を急速に変えたい時などは、外気を遮断するため冷房効率が上がるというメリットがある。ただ、長い時間、内気循環にしたままだと、呼吸によって二酸化炭素濃度が高くなるというデータもあり、注意が必要だ。
カーエアコンのトラブルと対処法を知る
◆真夏にエアコンが効かない!どうすれば良い??
真夏の猛烈な暑さの車内で、カーエアコンのスイッチを押しても、全く車内が冷えない…。こんな経験をしたことのあるドライバーの皆さんもいらっしゃることだろう。この暑さでエアコンが効かないと、熱中症など命の危険もあるため、早急な対応が必要だ。
エアコンが効かない原因としては「エアコンフィルターの目詰まり」「エアコンガスの不足」「その他部品の故障」などが考えられる。エアコンフィルターの交換については、目詰まりする前が基本であり、1年ごとまたは10,000km~15,000kmが目安とされている。つまり交換を車検のタイミングに合わせてしまうと、2年間無交換ということになる。目に見えない部分であるが故に、汚れなどが分かりにくく「汚れてから交換すれば良いのでは?」と考えるユーザーもいるかもしれないが、下記画像をご覧頂ければ、読者の読者の皆さんが想像する以上にフィルターには汚れやゴミなどが溜まりやすいことがお分かり頂けるのではないだろうか。
エアコンガスについては、走行時の振動などで少しずつ漏れてしまうが、数年経っても問題無いという人もいる。エアコンガスの充填は、整備工場やガソリンスタンド、カー用品店などで行ってくれるので、効きが悪くなったと思ったら、お願いしてみると良い。
◆カーエアコンから嫌なニオイが…どうすれば良い??
カーエアコンが効かないことと合わせて、トラブルが多いのが「エアコンのニオイ」。カーエアコンのニオイの原因となっているのは「カビ」や「雑菌」で、その温床となるのが、前述したエアコンフィルターの汚れに加えてエバポレーターがある。
エアコンフィルターを交換してもニオイが取れない場合、特に走行距離が長くなればなるほどチェックしたいのがエバポレーターだ。先ほどのカーエアコンの基本構造でも述べた通り、車内に送る空気を冷やすパーツで、冷却時に水滴が付着する構造のため長年の使用で汚れやカビの付着が避けられないのだ。
そのためエバポレーターが汚れてしまったクルマは、フィルターを交換してもニオイを完全には除去できないのだ。加えて厄介なのがその「設置場所」でフィルターのように取り外しが簡単ではない。こうしたクルマの症状にきっちり対処してくれるのが信頼できる整備工場やプロショップだ。対処療法ではなく不快の元となる根本原因を取り除き、猛暑でも快適なカーライフをお楽しみ頂きたい。