◆次々と復活する往年の名タイヤ「東京オートサロン2020」でヨコハマタイヤ(横浜ゴム)が出展していたホビーシリーズタイヤ。懐かしい『GTスペシャル』に始まって、高性能な『アドバンタイプD』など、往年の名タイヤが次々と復活している。ヨコハマタイヤが策定した「グランドデザイン2020」という消費財タイヤ戦略の4つの柱のうちの一つが、このホビータイヤ戦略だ。ホビータイヤとは「クルマを移動手段としてではなく、楽しむために使用するタイヤ」という位置づけに置いたもので、昨今タイヤの世界もコモディティ化が進み、差別化が難しくなったため、市場をニッチなところに求めたと言っても良いかもしれない。とはいえ、この種の古いクルマに対応したタイヤを求めているのは何も日本だけではない。むしろ世界を見渡せば、そうしたクラシックカーの世界は日本よりも確実に広いから全然ニッチではないのだ。◆いかにも“アメ車”なホワイトリボン今回デビューしたのはその名も『ラジアル360スチール』だ。そもそもラジアルというタイヤの構造そのものが名前になっていることからして、時代を感じさせる。それに今回の360スチールは、何とホワイトリボンタイヤ。ホワイトリボンタイヤとは、タイヤの側面、即ちサイドウォールに白いリングが施されているタイヤを言う。特に60年代ごろのアメリカではこれが大流行りしてトレンドを作った。リボンの幅は様々でほとんどサイドウォール全体が白いものも50年代から60年代には存在し、当時のアメ車カタログを見ると、ほぼすべてのクルマにこのホワイトリボンタイヤが装着されている。そのアメ車を確実に意識したであろう今回のタイヤは、サイズ表を見ると何とアメリカのTRAに準拠した4種のタイヤが用意された。いずれも頭にPが付くパッセンジャーカー用であることを示している。ではその作りはどうなっているかというと、基本的には当時の外観をそのまま再現してはいるものの、現代の技術で作られているので制音、制振性に優れ乗り心地は良いそうだが、グリップ力は古いクルマの構造を考慮して引き上げられていないそうだ。だから、クラシックカーにも優しく、かつより快適に乗れるということである。外観は当時をそのままと書いたがひとつだけ違うところがある、それは当時モノと区別する意味でクラシックという刻印が打たれているところ。確かにGTスペシャルの場合はその刻印があったのだが、今回のラジアル360スチールはどこにもその刻印が見当たらなかった。◆名車『コルベットC2』で試走してみたオートサロンではこのタイヤを装着した往年の名車、シボレー『コルベットC2』が展示されていたが、幸運なことにそのC2をテストすることが出来た。じっくりと眺めてみるといくつか、当時のC2との相違点が見つかった。そのひとつはリアの3連コンビランプ。本来リアコンビランプは2連である。次にサイドマフラーを備えているから65年以降のオプション装備だろうと思うのだが、年式を確認しなかったので何とも言えない。それにしても外観は非常に美しくほぼ完ぺきな状態。内装も年式なりのやれはあるが、良いコンディションだと思う。と言ってもこれは基本的にタイヤのインプレッションなのだが、どうもクルマがクルマだけに、そちらに目が行ってしまう。気を取り直してというか、改めてタイヤの印象を確認すべく、ステッキタイプのサイドブレーキをリリースしていざスタート。最初の印象としては転がり感がとてもスムーズで、ちゃんと真円が出ている印象である。昔のタイヤはこの真円を出すのが大変だったそうで、だから時としてごつごつした印象の乗り味を味わうこともあった。コルベット用はP205/75R15というサイズ。扁平率が75ということでおおよそ現代のタイヤと比べた時にサイドウォールの高さが印象的で、それ故に乗った印象は路面コンタクトが柔らかく、やはり快適である。前述した通り、当時の見た目だが現代の技術で作っているうえ、クルマの構造も考慮してグリック性能などはある程度意図的に落としているそうだから、クルマにも優しいし、何よりも限界が掴みやすく安全性も高い。と言ってそこまで攻めたわけではないが。いずれにせよ、クラシックカーファンには願ってもない新たな時代がやってきた。中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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