高齢者へのサポカー普及には「サブスクリプション」が必要だ【岩貞るみこの人道車医】 | CAR CARE PLUS

高齢者へのサポカー普及には「サブスクリプション」が必要だ【岩貞るみこの人道車医】

特集記事 コラム
ダイハツ タント は高齢者にも優しい安全装備や、乗降しやすくするためのオプションなどを豊富に揃える。
  • ダイハツ タント は高齢者にも優しい安全装備や、乗降しやすくするためのオプションなどを豊富に揃える。
  • 後付けでプリウスなどに装着できるトヨタの「踏み間違い加速抑制システム」のデモ
  • トヨタの後付け「踏み間違い加速抑制システム」。目覚まし時計のような表示器が踏み間違いを知らせる。
  • ペダルを踏み込む様子
【サポカーはリースで】このところ、大手メディアによる高齢者事故の報道が沈静化しているけれど、事故がまったくなくなったわけじゃない。もちろん、高齢者だけが事故を起こしているわけでもないけれど。実際の数字はどうかというと、免許証の返納が増えて、高齢者の事故数は減少傾向にあるようだ。

◆後付け式の踏み間違い防止装置だけでは足りない

高齢者は死亡事故が多いと言われるけれど、そこにも理由があって、高齢者は体力がなくて若い人と同じように怪我をしても死亡する率が高いから。高齢者だけが無謀で大きな事故を起こしているわけではないのだ。

とはいえ、死亡事故はハインリッヒの法則。小さな事故がたくさん起きれば、大きな事故が起きる確率も高くなる。少しでも事故の発生を減らそうと、国交省は各自動車メーカーに、後付け式の踏み間違い防止装置の開発を指示した。

トヨタの後付け「踏み間違い加速抑制システム」。目覚まし時計のような表示器が踏み間違いを知らせる。
わあ、よかった、これで安心ね。と喜んでいる場合ではない。

この踏み間違い防止装置が機能するのは、発進時のみだというのは、以前のこのコラムでも書いたとおり。しかも、後付け式ができるのは、電子制御式のアクセルだけ。アクセルの踏み加減を、電線内を通る電気信号で送って制御する仕組みのものだけで、従来の、物理的なケーブルで動かしている機械式ものには使えない。現在、日本中を走っているすべてのクルマに対応できるわけではないのだ。

◆いつまで運転できるのか

この際、クルマごと買い替える?

そう考えるのは当然だけど、ただ、そこに立ちはだかるのは、お金の問題である。買い替えって言われてもあなた、どこにそんなお金があるのよ?

クルマの買い替えは、初期費用がとにかくかかる。年金生活の高齢者に貯金を切り崩させるのか、それともローンを組ませるのか? どっちにしたって、ハードルが高いことに変わりはない。ハードルをさらに高くしている理由が、もうひとつある。それは、

いったい、いつまで乗るの?という問題である。

ペダルを踏み込む様子
あと10年、確実に乗るというのなら、行動も起こしやすい。でも、高齢者となると、あと何年乗れるのか。下手したら、数か月で運転寿命が尽きてしまうかもしれないのに買い替えるなんて? そう思うのは当然のことである。

乗らなくなったクルマは、いくらで売れるの? 価格が暴落したらどうするの? いや、それより、売る手続きが面倒くさい。さらに、車両の所有者本人が亡くなったとしたら、売るのがほんとに大変なのだ。そうしたことが頭のなかに押し寄せたら、ただでさえ重い腰はもっと上がりにくくなるだろう。

◆だったら、リースにしちゃえばいいんじゃないの?

昨今、流行りのリース。クルマ賃貸とか、サブスクリプションとか、いろんな言い方があるので混乱しそうだけれど、つまり、月額いくらという金額を払えば保険も車検もすべてコミコミ。必要なくなったらすぐに、契約解除。これなら、いつ運転寿命がつきても、その際の手続きが大変という懸念がひとつ払拭できる。

しかも、定額だから生活費の計算がしやすいし。

若い人を中心に人気が高まっているというけれど、高齢者にこそ価値があるような気がするんだけれど。

現在の問題は、高齢者が好む軽自動車で、こうした踏み間違い防止機能が搭載された車両のリースやサブスクが圧倒的に少ないということだ。

どうでしょう、各自動車メーカー、各リース系企業、そして、IT技術などで社会に貢献したいと活動する方々。クルマは所有から利用へという風は、若い世代から吹き起っているけれど、この際、高齢者に吹かせてみては。期待しています。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。
《岩貞るみこ》

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