東海道を西に向かうと、静岡県浜松市から海沿いのバイパスを走って、愛知県豊橋市に入る。このあたりで食欲を満たす場合、国道42号沿いの「港屋食堂」はオススメだ。浜松市の南の海沿いを走る国道1号潮見バイパスは、東海道を行き来する大きな運送会社のトラックも多数往来するが、浜名湖と遠州灘の間を走るその道からの眺望もあって、旅行者など、一般ドライバーの乗用車も多くの台数が走っている。もちろん浜松市内であれば飲食店も多く、潮見バイパスにも、愛知県との県境近く、海沿いに「道の駅潮見坂」があり、海岸線に下りたり足湯を楽しめたりするので立ち寄る価値はあるが、時間が遅くなると食事をとることはできない。何か食事を、と思うと、案外選択肢が少ないエリアなのだ。そんな事を思いながら走っていたときに、潮見バイパスの山側を並行して走る国道42号線沿いに見つけたお店が「港屋食堂」である。道の駅潮見坂からもクルマではすぐで、営業時間も朝の8時から22時と、利用しやすい営業時間だ。一言でいえば、街道沿いの長距離ドライバー御用達の食堂だが、それだけにメニューも豊富だ。筆者がここでついつい頼んでしまうのが「肉なべ」だ。小さな鍋が運ばれて来てふたを開けても肉は見えない。たっぷりのもやし、ニラなどが最初のご挨拶となる。箸でそれらの野菜を少し寄せると、下から豆腐と豚バラ肉が顔を出すのだ。甘辛い醤油味、お肉にも野菜の甘みがしっかり染みて、豆腐にはその双方の旨味が染みている。野菜の多めな肉豆腐といったところだろうか。ごはんは「大」と口をついて出てしまう。この時期は新米だろうか、甘みも水分もたっぷりでご飯だけでおいしく頂けそうだ。さらに、一緒に頼むことが多いのが漬物。メニューには茄子ときゅうりの漬物がある。取材した日は茄子を注文。これが、今どきなかなかないぬか漬け。しっかりと漬かっているが古漬けとは違う。ぬか漬けは家によって味が違うが、ここのはさわやかさがあるのだ。これと白米だけでもごちそうだ。ごはんが余ったので納豆も追加した。レジの横には有名な元サッカー選手のサインと色紙。「浜松が出身で、帰ってこられた時に寄ってくださったんです」とおかみさんが話してくれた。大きな駐車場とシャワー室もあるので、トレーラーなど大型トラックもかわるがわる立ち寄るが、サイズの大きなキャンピングカーでの旅などでも立ち寄りやすい。通過時間、食事の場所。そんなのを考えるのもクルマ旅の楽しみ。ぜひ一度訪ねてほしい港屋食堂である。