【岩貞るみこの人道車医】自動運転時代、無人バスの運賃支払いはどうなる? | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】自動運転時代、無人バスの運賃支払いはどうなる?

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自動運転時代に、無人バスの運賃支払いはどうなるのか。写真はドイツ鉄道(DB)の無人バス
  • 自動運転時代に、無人バスの運賃支払いはどうなるのか。写真はドイツ鉄道(DB)の無人バス
  • オーストラリアのシドニー近郊で活躍した交通系ICカード「オパールカード」。SUICAのようなデポジットはなし。
  • SUICAイメージ
【金】すいません。人道車医療をテーマに書く予定のコラムですが、今回は変化球でお金の話です。自動運転で無人のバスが走るようになったら、お金ってどうやって払うんだろう?と思っちゃいまして。

2018年1月18日付けのこのコラムで、シドニーのオパールカードが、日本のSUICAよりもだんぜん使いやすいと浮かれた原稿を書いたところ、ITライターのS嬢に「イワサダさん、なーに寝ぼけたこと言っちゃってるんですか。ラスベガスではもうそんなカードすら必要ないですよ(私の脳内意訳。S嬢はもっとかわいくて素直)」と指摘された。曰く、バス系アプリをダウンロードしてクレジットカードを登録すれば、アプリ内でチケットが買えて、スマホをかざすだけで乗れるのだそうだ。オパールカードを買うために、実はシドニーの街をちょっと彷徨った私としては、げげっと思ったものである。

しかし、よーく考えてみると、ラスベガスのアプリの場合、クレジットカードの登録が必要になってくる。つまり、クレジットカードを持てる人のみ使えるわけで、持てない人たちは蚊帳の外だ。となると、やはり、オパールカードやSUICAのようにプリペイド機能があるICカードの方が、誰にでも使えるのではないだろうか。

◆リスクとビジネスチャンス

そして、ふと思いつく。いや、待てよ。いま、中国ではQRコードが大人気で、スマホ決済システムが王道だ。こちらはスマホを使うものの、クレジットカードではなく、銀行口座から直接引き落とすデビットカード式である。クレジットカードを持てない人でも銀行口座なら開設できる。つまりハードルがぐっと低くなり、かなり多くの人が使えるはずだ。ふむ、そうなるともしかしたら、こうしたデビットカード系の決済システムが有力候補なのだろうか? いやっ? あれ? それよりも、もしかしてもしかすると、仮想通貨が主流になる未来がくる可能性も!? 

悶々と考えていても仕方ないので、国際金融に詳しいT氏に聞いてみた。彼の口から最初に出た言葉は、「あ、うーん。ユーザーが使いやすいかどうか表面だけで考えてもダメなんですよねえ」。

彼が言うには、お金のやりとりをするのは、かなりリスクが伴うため、運用、セキュリティその他もろもろ、そうとうの覚悟がないと務まらないという。私が「今後、支払いはぜんぶSUICAになればいいのに」と思ったところで、JR東日本が鉄道を離れ、コンビニもないような過疎地域の無人バスの支払い対応まで構築する気があるのかどうか。爆発的に利用者数が増えていったときに、対応できるだけの強靭なシステムを作る気があるのかどうか?

ただ、支払いシステムは、手数料が入る。ついでに、人々の消費行動、移動行動などのデータもとれる。入手したビッグデータを活用すれば、次のビジネスへとつなぐこともできるのだ。実際、中国の深センに本社があるテンセントは、WeChatPayを運営しているけれど、WeChatPayだけの収支は赤字ではないかと言われている。それでもテンセントが続けるのは、お金の動き=人々の消費&移動データをとって、ビジネスチャンスをうかがっているかららしい。

◆日本で絶対につぶれないあの会社が…

日本の自動運転で、支払いシステムはどこが担うのか。いや、担えるのか。やるとしたら大前提として、絶対につぶれない企業じゃないとダメだ。私を含め多くの人がSUICAを使うのは利便性もあるけれど、JR東日本が絶対につぶれない会社だと信じているからだ。新しい企業がひょいと出てきて、「うち、やりまっせ」と言ったところで、多くの人は「つぶれたら困る」と直感的に思って手を出さないことだろう。

つぶれない企業で、すでにファイナンス事業を行っているところ。銀行?(いやー、すぐ統廃合するしなあ) 郵便局?(サービス悪そうだなあ)鉄道系?(これはありかも)。でも、私がもっと適任だとふんでいるのは、日本で絶対につぶれないあの会社だ。そう、愛知県豊田市にあるあの会社。でも、同時に、仙台に野球チームを持っているあの会社も気になっている。実際、やるとなったらそちらのほうが動きが早いんじゃないかとも、思っているけれど。

さあ、どうなるんでしょう?

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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