【岩貞るみこの人道車医】スマホ時代に取り残された「運転席」、歩み寄りはスマホ側から | CAR CARE PLUS

【岩貞るみこの人道車医】スマホ時代に取り残された「運転席」、歩み寄りはスマホ側から

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【人】スマホ時代に取り残された運転席

1月22日の大雪で、認知>判断>動作の遅れで大渋滞に陥った首都高速道路。その10日後の2月1日深夜から予想される大雪を前に、このままでは同じ轍をまた踏むとばかりに、twitterを開設するという動きに出た(@shutoko_snow)。

名付けて【首都高(雪による通行止め情報)】。まんまやん! いや、これは、誉め言葉である。この原稿を書いている2月2日時点でのフォロワー数は5661。このうちどれだけ真のユーザーが存在するのかは不明だが、とにかく行動を起こしたという事実は評価したい。つぶやいているツイートの内容は、路線や出入り口で通行止めが発生、もしくは解除したタイミングにあわせて発信し、あわせて、首都高速道路交通状況マップmew-ti(ミューティー)のリンクを貼り付けるというもの。シンプルだけれど結構、わかりやすい。机の上でパソコンに向かって見ている分には、非常に役に立った(気がする)。

しかし、問題は、ドライバーはパソコンの前にはおらず、スマホもいじれないということだ。首都高側としては「情報を見てからルートを判断」と呼びかけているけれど、ドライバーにしてみれば、運転中にもわかるようにしてくれよ、ってなところだろう。だって、誰もが「よし、いまから首都高にのるぞ。えっと、その前にツイッターで確認……」などという悠長なことをしているはずもなく、たいていは、走り出しちゃってから「あれ? どうなんだろ?」と気づくはずだから。

◆セカンダリアクティビティ

しかし、こうして改めて考えると、スマホで簡単に情報を入手できる時代に、クルマのなかにいるドライバーは、なんて隔離された存在なのだろうか。Yahoo!がYahoo!カーナビを無料で提供を始めたとき「こんな立派な機能を、タダで提供しちゃって、ビジネスモデルはどうなっているんですか、どうやって儲けるんですか!」と、ライバルたちが戦々恐々としていたけれど、その際、Yahoo!の人が言ったのは、Yahoo!にとって一番、利用してもらえない人と時間帯は、ドライバーと運転中という事実だった。だからこそ、慣れ親しんでもらうためにも、Yahoo!カーナビを作ったと。

たしかに、電車の中にしろ、飛行機の中にしろ、どんどんWi-Fiでつながりやすくなっているというのに、唯一、一般の人が移動するもののなかでは、自分で運転しなくちゃいけないクルマの「運転席」だけが、スマホいじりから遮断されている。SNSでつながっていないと自分の存在意義すら見失う世代が増えているときに、「運転席」はまさに時代にとりのこされた空間だといえる。

こうなってくると、目指すべきは自動運転でセカンダリアクティビティの解禁である。セカンダリアクティビティは、運転中に、運転以外に行う別のこと、という意味だ。これまで、セカンド(セカンダリ)タスク、という言葉が使われてきたけれど、国連の道路交通作業部会(WP1)では昨年、「タスク、って言っちゃうと、なんか絶対やらなくちゃいけないってニュアンスになっちゃうから、アクティビティのほうがいいんじゃない?(もちろん意訳)」という意見が出て、世界的に統一していきましょうとなったらしい。ゆえに私としてもこの言葉をこれからは使おうと思う。

で、話をもどすと、要は、首都高が出したツイッターの情報を、運転中にスマホで見ることがここでいうセカンダリアクティビティに当たるわけだが、現在の道交法では、この行為は禁止されている。でも、自動運転技術を車両に装備することによって、スマホを見ても安全が担保できるようにすれば、せっかくの首都高提供ツイッター情報が活用してもらえることになるわけだ。

◆声と耳は自由に使える

ただ、このセカンダリアクティビティについては、今現在、技術的にも道交法的にもハードルはものすごく高い。今年とか来年とかに「オッケー!」と、ローラちゃんのようなテンションでOKマークを作るわけにはいかないのである。

だとしたら、ここは逆の発想で、スマホ側がセカンダリアクティビティを受け持つべく歩み寄ったらどうだろうか。つまり、音声プッシュ式で、読み上げてくれるパターン。これなら、ラジオ同様、道交法には違反しない。これ、技術的には楽勝でしょ、たぶん、きっと。首都高のツイッターに新しい情報がつぶやかれるたびに、音声でしゃべってくれたらどんなにいいのにと本気で思う。もしくは、SIRI(AIの音声アシスタントサービス)に対応させて、「ヘイ、SIRI。首都高の通行止め情報教えて。霞が関インターから中央高速に行きたいんだけど、どう?」って聞いたら、教えてくれるとか。

ドライバーには周囲監視義務があり、運転に関係ないものを注視することは許されていないし、ハンドルはいつでもちゃんと操作できる状態でなくてはいけないから、ハンドルから離してもいいけれどスマホを操作したり携帯電話として耳にあてがったりはできない。でも、声と耳は自由に使えるから、狙いどころはそのあたりかと。

ドイツ勢の動きを見ていると、やっぱりそのへんを狙っていて、そろそろ市販する車両に組み込んでくるという話もある。今年の春あたり、楽しみだなあ。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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